(原題:Paddington)
2014年/イギリス・フランス
上映時間:95分
監督:ポール・キング
キャスト:ベン・ウィショー/ヒュー・ボネヴィル/サリー・ホーキンス/マデリン・ハリス/サミュエル・ジョスリン/ジュリー・ウォルターズ/ニコール・キッドマン/他
イギリスの児童文学「くまのパディントン」を映画化したファミリー・ドラマ。
当初は「愛らしいキャラクターが冒険する子供向け映画」という印象でスルーしておりましたが、これがなかなかに魅せる良作でした。
観もしないのに舐めてかかった愚行を心より反省しております。
予想を上回るパディントンの愛らしさ、ベタベタながらもほっこりさせる家族愛の描き方、どこぞのクマと違って非常に素晴らしい作品だと思います。
さっくりあらすじ
南米・ペルーにやって来たイギリス人探検家は山中でクマの夫婦と出会い、知的で学習力に長けるクマ達と意気投合し”ルーシー”と”パストゥーゾ”と名づけ、冒険家は「いつかロンドンへ着たら歓迎する」と告げ帰っていった。
長い年月が過ぎ、ルーシーとパストゥーゾも老齢となりロンドンを訪ねる夢は叶わなかったが、彼らの甥である若クマは親切な人がいるというロンドンへの憧れを抱いていた。
そんなある日、彼らの住む山を大地震が襲い家は全壊、逃げ遅れたパストゥーゾは死んでしまいルーシーは”老クマホーム”への入居を決意する。
ルーシーにロンドンへ行くことを勧められた若クマは貨物船に乗ってロンドンに到着、パディントン駅で人に声をかけるも想像と異なり人々は冷たく誰も相手にしてくれない。
そこに旅行帰りのブラウン一家が通りかかり、途方に暮れている若クマを見かねた母・メアリーが声をかけるのだが、、、
駅で出会ったクマと人間家族
駅にちなんでパディントンと名付ける
居候するパディントン
数々のトラブルを起こしてしまう
そんなパディントンを狙う謎の女性
彼女の過去にも秘密が、、
固定観念は捨てましょう
元の文学作品を知らないので何とも言えませんが、クマが英語を話し、また人々も喋るクマに対して何の違和感も無い世界観は少々人を選ぶかもしれません。
懐っこいクマが人とコミュニケーションを取るのではなく、すでに人間同士の水準でコミュニケーションが取れるクマの物語と言った方が正しいです。
つまり100%ファミリー向けなコメディ・ドラマだと言えますし、捻くれた目線で観ればすごくつまらない作品になり得ますし、逆に言えば本作が退屈な人は少々純粋さが足りないとも言えるでしょう。
で、本作最大の魅力であるクマのパディントンですが、これが予想を上回る可愛らしさなんですな。
最初こそオレンジが熟してはしゃぐ姿にウザさを感じていましたが、彼が持つ誠実さ、真摯さ、賢さに対して徐々に好感に代わっていきます。
何より丁寧な言葉遣いが素晴らしく、時に図々しくみえる彼の態度にすら愛らしさを感じるのは感謝の念を忘れない姿勢から来るものかもしれません。
ビジュアル的な愛らしさはそれほど感じませんが、それでも「可愛い!」と思わせる挙動の数々には演出の妙を感じさせます。
序盤で首にメッセージが書かれたメモをぶら下げ、駅で途方に暮れる姿なんかはもうたまりませんよ、マジで。
まともな神経の持ち主ならば誰でも速攻で拾って帰ることでしょう、筆者なら迷わず連れて行きます。
むしろ困ってるパディントンに対して不親切な父親に腹が立つようなシーンも多く、動物に対する躾の大事さも垣間見えます。
パディントンが起こすトラブルの殆どは教えてあげれば未然に防げるものばかりであり、ただ家に置いてチヤホヤしてるだけの人間サイドに対する不満の方が大きかったような気もしますね。
あとは何気にニコール・キッドマンが出演しているのに少々ビックリ。
妄信的に己の行動を貫き、数々の剥製に囲まれた彼女の部屋には作風に不釣り合いなほどの狂気を感じます。
筆者は人並みの動物愛護の精神しかありませんが、こうやって見ると不愉快なものですね。
学術的なものは置いといて、壁に剥製を飾るのやめようよ。。
映画としては主に親代わりのクマとの別れ
↓
ブラウン一家との出会い
↓
人間の常識が分からずドタバタ
↓
家族愛に包まれ大団円
という流れですが95分という短い時間にタイトかつスムーズに構成されております。
蛇足なエピソードを盛り込むでもなく、削りすぎて意味不明なわけでもなく、サクッと観れて十分に楽しめる、非常に良くできた完成度だと思います。
まとめ
見方を変えれば”超田舎から来た人が都会の人と打ち解ける”ような物語にも見えますし、ユーモアと優しさに溢れる良い作品です。
子供向けな映画ではあるものの、大人も十分に楽しめる内容だと思いますし、親子で鑑賞してパディントンのぬいぐるみを買ってあげるような幸せな風景も目に浮かびますね。
何でも斜に構える人には退屈な作品でしょうが、映画を満喫する姿勢、つまり映画に対しての誠実さがあれば素晴らしい作品に思えるポテンシャルを秘めた作品です。
素直にパディントンの愛らしさに触れられるのであれば、オススメしたいところですね。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。