
(原題:Romeo Must Die)
2000年/アメリカ
上映時間:115分
監督:アンジェイ・バートコウィヤック
キャスト:ジェット・リー/アリーヤ/イサイヤ・ワシントン/ラッセル・ウォン/デルロイ・リンドー/D・B・ウッドサイド/ヘンリー・オー/アンソニー・アンダーソン/DMX/他
仮想現実で戦う「マトリックス」から、ワイヤーアクションとVFXの演出をより現実的にシフトしたアクション映画。
ブラックミュージックのノリにカンフーアクションを組み合わせた、試験的な作品です。
「リーサルウェポン4」でハリウッドデビューを果たしたジェット・リーが今回は主役となり、一説にはジャッキー・チェンを上回るとされるアクションスタントを、存分に披露してくれます。
タイトルの通り、ロミオとジュリエットのような障害を乗り越える恋愛をねじ込んで不評を買ったり、「X-レイシステム」と呼ばれるアクションが不評だったりと。
総じて演出面での評価は低く、不満を持つ人たちの気持ちも十分に理解できます。
が、それを補って余りあるジェット・リーのアクションは必見です。
さっくりあらすじ
黒人ギャングと中国人マフィアの縄張り争いが続くアメリカ・カリフォルニアで、中国人マフィアの首領の息子・ポーが死体で発見される。
香港刑務所に服役中だったポーの兄・ハンは弟の訃報を聞き、怒りに震え脱獄し、そのままアメリカへと渡る。
カリフォルニアで黒人ギャング首領の娘であるトリッシュと出会ったハン、彼女の助力を得て弟を殺した犯人を捜していくのだが、、、
黒人文化に馴染もうと頑張るジェット・リー
トリッシュ役のアリーヤは2001年に
飛行機事故で帰らぬ人に。。
中国マフィアNo.2のカイ
演じるはラッセル・ウォン
ちょくちょく色々な映画に出演してます
ラストバトルはなかなかの見応え
最後は空中戦
武術とアクションスタント
ハリウッドに進出し初の主演を迎えたものの、アクションスターというよりは武術家としての雰囲気が抜けきらないジェット・リー、もといリー・リンチェイ。
本場中国のカンフー映画では、派手なワイヤーアクションをふんだんに使っても馴染んでしまうものですが、ハリウッド映画となるとやはり違和感になりますね。
舞台が仮想空間ではなく現実のアメリカなので、滞空時間の長い飛び蹴りや異常な跳躍力を見せられてしまった時点で???と軽くパニックを起こします。
現実に存在する超人の技を期待するだけに、こっちもどういうスタンスで映画を観るべきなのか分からなくなっちゃうんですね。
なにせジャッキー・チェンに匹敵するカンフーの使い手です。
実際のアクションシーンではジェット・リーの動きが早すぎて映像に映らない&他の役者がついていけない、などのトラブルもあったそうな。
結果として、彼を生かすための演出が十分に練りこまれていなかったのではと感じます。
決して男前とは言えず、小柄で色白、人の良さそうな雰囲気と。
どれを取っても一昔前の「か弱いアジア人」のイメージをそのままに、いざ戦うと美しさすら覚えるような華麗なマーシャルアーツの数々。
そんな”意外性”がこの手の映画のキモになるだけに、余計な味付けで素材を殺してしまっている演出はとても褒められたものではありません。
A・バートコウィヤック監督は元々カメラマンで、本作が監督としてのデビュー作になっております。
間近で製作現場を経験していたとはいえ、やはり自分で監督を務めると勝手は違うものでしょうか。
初監督と初主演の2人ではどうしても作品に荒さが残ってしまいます。
でも個人的には好きなんですよね、この映画。
作品のテーマ通りに全体的に黒人が多く登場する本作、必然的にBGMもヒップホップやR&Bが中心になります。
ノリノリでリズムを刻む黒人たちに対し、どうしてもダサく見えるジェット・リー。
アメフトのルールが分からず痛い目に合わされ、カンフーでアメフトに対抗するジェット・リー。
ロミオとジュリエットを意識しているはずなのに、どう見てもヒロイン宅でホームステイしてる学生にしか見えないジェット・リー。
このダサさが自然と可愛く見えてきて、最終的に(アクションで)カッコよく見えてくる魅力こそが本作の主演にジェット・リーを据えた最大の理由なんじゃないでしょうか。
ひたすらやられ役でコメディ担当のアンソニー・アンダーソンはこの頃から好きな俳優さんです。
分かってても面白い独特の個性があります。
まとめ
ヒップホップとカンフーを混ぜ合わせた先進的な映画なので、細かいアラが見えてしまうの仕方ないのかもしれません。
変な言い方になりますが、表面的にさらっと観る分には楽しめる作品だと思います。
ゴリゴリの武術からカジュアルなマーシャルアーツへと。
リー・リンチェイからジェット・リーへと。
中国のアクションスターが世界へとシフトしていく途中なので、アクションの演出も試行錯誤な印象が拭えません。
しかしそれを差し引いてもアクションは十分に面白いものかなと思います。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。