ボブという名の猫 幸せのハイタッチ


(原題:A Street Cat Named Bob)
2016年/イギリス
上映時間:103分
監督:ロジャー・スポティスウッド
キャスト:ボブ/ルーク・トレッダウェイ/ルタ・ゲミンドス/ジョアンヌ・フロガット/アンソニー・ヘッド/キャロライン・グッドール/他

 




 

ノンフィクション映画は数々の感動や奇跡を目の当たりにできるわけですが、毎度よくもこんなに奇想天外な出来事が起きるものだと感心しますよね。

久しぶりに心からオススメしたい作品のご紹介ですね。

原作はイギリスをはじめ世界中で1000万部の超ヒットを記録した体験記で、薬物中毒のホームレスと野良猫の実話が描かれます。

映画にはボブ本人(?)が出演し、その愛くるしい姿で最高の癒しを与えてくれますし、奇妙だけれども素晴らしい運命を背負った男性と猫の物語は一見の価値ありです。

 

 

 

さっくりあらすじ

ミュージシャンを自称するもホームレス状態の青年・ジェームズは薬物依存から抜け出すことができず人生のドン底にいた。

「彼にはもう後が無い」と見かねたソーシャルワーカーのヴァルによりジェームズは仮の住居を与えられ、そこで窓の隙間から入ってきた人懐っこい猫と出会う。

ある日は猫が怪我をしてうずくまっており、放っておけないジェームズは隣人・ベティの助力もあり動物病院へと連れていき、なけなしのお金で治療と薬をもらった。

ベティが”ボブ”と名付けた猫を見捨てるわけにもいかず、ジェームズがお金を稼ぐために路上ライブへと向かうと、ボブも強い意志でついて行こうとするのだが、、、

 

 

 

ひょんなことから猫の面倒を見ることに

 

そしてかけがえの無い存在に

 

こちらは本物(原作者)の写真
本当に肩に乗ってる

 

 

 

 

神様から送られた”猫の手”

あまり神様という概念を信じていないもので何と言えば良いのか分かりませんが、元ホームレス&薬物中毒者だったジェームズさんの元へ送られた天使の話だと思います。

人型で背中に羽が生えてラッパ持ってるんだと思っていましたが、実際は猫だったんですね。

 

本作は実際にイギリスであったお話であり、映画を通してボブという猫が起こした奇跡と、現実社会の冷たさを極めて冷静に描いてあります。

つまりは動物萌えな映画ではなく、一人の人間の再起を描いたドラマ性が強いということです。

 

主人公のジェームズは薬物依存症に悩むホームレスであり、街頭ライブで小銭を稼いではいるものの、現実はその日に食べるものすら買うことのできない貧困層の底辺にいます。

真冬の雨の寒さや行き交う人々の冷たさ、そういったものに身を震わせながら生活しているわけで、すり寄ってくるのは似たような薬物中毒者だけというハードな毎日です。

たまたま見かけた父親にはお金だけ握らされ、義母には露骨に嫌われ、誰とも関係を持てない絶対的な孤独に身を置いているようにも見え、人生をやり直すタイミングすら掴めない不遇な日々ですな。

 

そんな折に出会ったボブという猫をきっかけに一躍人気者になるわけですが、彼の心を支え、生活の糧となるお金を支え、常に寄り添ったボブを天使と呼ばずして何と呼ぶのでしょう?

何の未来も見出せず、空っぽだったジェームズの人生に”猫にごはんを食べさせる”という目標が生まれ、その目標が彼の心と体を正常に戻していくわけで。

 

ソーシャルワーカーが諦めずに支援してくれたのも良かったのでしょうし、たまたま隣人が親切な女性だったのも良かったのでしょう。

しかしドン底でもがき苦しんでいる状態でなお、無力な人なりに他者を助けようとするその優しさがボブという猫を呼んだのだと本気で思ってしまいそうです。

 

 

また、単なるサクセス・ストーリーに留まらず、本作では”赤の他人”がもたらす残酷さもキッチリと描かれています。

 

ボブと出会う前は汚物でも見るかのように軽蔑の眼差しをぶつける人々。

一応は兄に当たるにも関わらずジェームズを毛嫌いし、娘には「ジェームズはジャンキー」だと言わせる義母。

同じ底辺層にいながらも、ボブのおかげで人気者になったジェームズを快く思わない同類の弱者たち。

そしてイギリスの階級社会を表すかのように、「ボブはうちで飼った方が幸せだ」と主張し強引にお金でボブを引き取ろうとした富裕層。

 

このあたりの人間模様が何とも生々しいというかリアルというか、ノンフィクションだから当たり前なんですが、人間の醜い面も包み隠さずに演出されたのは良い選択だったかなと。

そんな苦難の数々と薬物依存症を乗り越え、赤裸々に自身の過去を吐露し、またボブのおかげだと隠さずに告白できるジェームズ氏の人となりは認められるべくして認められ、今回のベストセラーへと繋がったのだと思います。

 

あと余談ですがジェームズ・ボーエン本人の歌声は知りませんが、ジェームズを演じるルーク・ゲッタウェイ氏の歌声はなかなか素敵で印象的です。

歌詞にも響くものがあり、けっこう深みのある歌も聞いて損は無いですよ。

 




 

まとめ

いうてもボブは別に何もしてないんだけどね(笑)

でもこれこそが猫が持つ無限の可能性であり、もの言わぬ動物が人間にもたらしてくれる心の可能性だとも思います。

 

誰かに支えてもらえるから人は生きていけるし、誰かを支えようとするから強くもなるし、人や動物に優しくなれる素晴らしい作品だと思います。

純粋にボブ超可愛いし、マジ欲しい。。

 

オススメです。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

オマケ

ジェームズ・ボーエン氏は出版した本の収入でホームレス生活に終止符を打ち自宅を購入、その後の印税は動物救済基金への寄付やホームレスの支援に使っているんだとか。

こういうことが出来る人だからこそ、神様がボブを送ったのかもしれませんね。

 

 

 



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