(原題:10 Cloverfield Lane)
2016年/アメリカ
上映時間:103分
監督:ダン・トラクテンバーグ
キャスト:ジョン・グッドマン/メアリー・エリザベス・ウィンステッド/ジョン・ギャラガー・Jr/他
疑似ドキュメンタリーのパニック・ホラー「クローバーフィールド/HAKAISHA」の間接的な続編となるサスペンス・スリラー。
共通する世界観で異なる物語を描く「クローバーフィールド・ユニバース」の一部ということになっているそうです。
ちなみに制作を手掛けたのは「スターウォーズ/フォースの覚醒」で監督を務めたJ・J・エイブラムス。
実際には狭い密室での出来事が作品の大半を占めており、ソリッド・シチュエーション・スリラーの方が近いと思われます。
ふと観てみようと思いついただけなので、前作は観ておりませんが、それでも十二分に楽しめる内容でした。
さっくりあらすじ
デザイナー志望の女性・ミシェルは婚約者のベンと同棲していたが、電話での口論をきっかけに家を出ることにした。
そして夜中、ベンからの電話にも聞く耳を持たず、車を走らせるミシェル。
ベンの訴えに携帯電話に手を伸ばそうとすると。背後から車の接触を受け事故を起こし、気絶してしまう。
やがて目を覚ますと、殺風景な部屋で監禁されており、治療を受けたと共に鎖で繋がれていることに気づくのだが、、、
監禁されたミシェル
隙あらば脱出を狙う
監禁したハワード
喜怒哀楽が激しく威圧的
同居人のエメット
ちょいと頭がゆるい
行くも地獄、戻るも地獄
突如として起きた自動車事故から一転、いかにも監禁部屋といった感じの地下室から物語は本格的に始まります。
怪我をしている上、見知らぬ地下室に監禁されパニックを起こすミシェル。
そんなミシェルに治療を施し、「ここは安全だ」と言う不気味な大男・ハワード。
ハワードの言うことが本当なのかどうかを確認する術を持たず、また親切ながらも気難しく、情緒が安定しない彼の言動にも不気味さが付きまといます。
「クローバーフィールド」という怪物系パニック映画のタイトルを冠しているだけに、ファンからすれば肩透かしになりかねない内容だとは思います。
しかし外は危険、でもシェルター内もキ〇ガイのせいで安全かどうか疑わしい、という切り口は個人的には斬新に感じましたね。
ハワードの主張も本当っぽいんだけれども、彼自身が信用するに足らない人物であり、その微妙なバランス感覚でのミステリー具合はなかなかのものです。
基本的には狭いシェルター内だけの展開であり、視覚的な変化は少な目。
行き詰まる緊張感は漂うものの、絶望的な恐怖感には欠けている印象です。
何か重大な事が起きているらしいけれども、結局はシェルター内で生活を続けなきゃいけないという倦怠感のようなものが作品の土台とも言えますかね。
そのため、恐怖の刺激と言うか、全体的にハワードおじさんの機嫌の良し悪しがホラー要素に直結していることにもなり、人によってはハラハラよりイライラの方が上回るかもしれません。
とはいえ、演じるジョン・グッドマンの狂気的な演技は素晴らしいものですし、何を考えているのか分からない相手と同居せざるを得ないストレスは十分に伝わってきます。
ハワードは一見して冷静で頼りになりそうな中年男性ですが、どこか言動の端々に猜疑心を伺わせる何かを感じさせます。
海軍に所属していたり、衛星に関わる仕事をしていたり、信用に値する人間のはずなのにどこかがおかしい。
そんな絶妙な不気味さを醸し出す演技力が秀逸であり、彼の存在あっての本作だと言っても過言ではないくらい。
実際に意味不明な相手に監禁されたら、、という感覚が体感できる良くできた演出だなと思います。
まとめ
思ってたんと違うけど、コレはコレで面白い、そんな感想ですね。
徐々に異常性を露わにしていくおじさんと、”外”で起きている異常事態と、確信的になれないもどかしさや緊張感に溢れた良作だと思います。
それだけに終盤の超展開が引っかかる気もしますし、強引に収束させた感のあるエンディングも賛否はありそうですが、ぶん投げた感はありません。
サスペンスとスリラーとホラー。
総じて3つの映画を1つにまとめたような作品であり、逆に3本分の映画を1回で観れたと思えば悪くはないんじゃないかな。
良ければ一度ご鑑賞くださいませ。