(原題:A Dog’s Purpose)
2017年/アメリカ
上映時間:98分
監督:ラッセ・ハルストレム
キャスト:ジョシュ・ギャッド/デニス・クエイド/K・J・アパ/ブライス・ガイザー/ペギー・リプトン/ブリット・ロバートソン/他
全米のベストセラー小説「A Dog’s Puepose」の映画化作品。
何だかポスターからして少年と子犬の感動ドラマ臭がプンプンと漂う映画であり、典型的なお涙頂戴が苦手な筆者はいまいち食指が動かず、劇場鑑賞はスルーしておりました。
だって動物系作品はどう転んでも泣けるからね。
嫁はんの希望により観てみましたが、これが予想以上にドラマ性の高い物語。
大まかなイメージ通りの作品ではありましたが、思ってた以上に深く素晴らしい映画でした。
さっくりあらすじ
野良犬の赤ちゃんとして生まれた”僕”はある日、人間に捕まり短い命を終えた。
次にゴールデン・レトリバーとして生まれた”僕”は、ブリーダーの元を逃げ出すもまた人間に捕まり、車の中に置き去りにされる。
脱水症状を起こし、ぐったりとしていると通りかかった親子が助けてくれて、そのまま少年・イーサンに飼われることになった。
「ベイリー」と名付けられた”僕”は、すぐにイーサンと仲良しになるのだが、、、
2度目の犬生
レトリバーとして生まれた”僕”
少年・イーサンに助けられ
そのまま親友になる
やがてイーサンにも彼女が出来て
2人と1頭で幸せな時間を過ごすが、、、
幸せな転生
まず第一に、全編を通して主人公となる犬の視点で物語が展開されるわけですが、素直に羨ましい気がします。
犬の寿命は人間の5~6分の1程度であり、何をするのも全力で微笑ましいものです。
この”僕”もまた然り、劇中で何度も描かれる犬の一生をトータルで見れば超幸せとは言えませんが、それを踏まえても前世の記憶を維持して次の一生に臨むというのは面白いものですね。
物語としては”僕”の命が次々と転生し、その度に触れる人間達との交流を描いた変則的な群像劇といったところ。
どの飼い主ともそれなりのエピソードがあり、犬好きはもちろん、そうでない方々も萌えまくる可愛らしさに溢れています。
転生する度に犬種も変わり、大型犬も小型犬も、どちらの魅力にも触れられるのも気が利いてますな。
一応のテーマとしてはベイリーと名付けられた犬の視点を通して「犬の人生(犬生)とは?」という、やや哲学めいた問いの答えを求めていくというもの。
訳も分からずに野犬を捕獲する人間に捕まり、一生を終える。
再び訳も分からずに人間に捕まり、死にかけていたら優しい人間に保護され、幸せな一生を終える。
初めてペットとして買われ、別の犬との共同生活を経て、一生を終える。
警察犬としての役割を果たし、一生を終える。
などなど。。
特に警察犬のエピソードは涙無くして観られない、心の底から切ない物語で、これだけでも1本映画が作れそうなくらい。
実際に危険な仕事に従事する警察犬に直に感謝を伝えたくなりますね。
犬が考える犬の一生はきっと人間には理解できませんが、人の幸せを願い、自分の幸せを求めるベイリーの生き方には感動させられるものがあります。
あくまで犬なので、犬なりにおバカな部分も多々あるものの、それでも他者を思いやる気持ちは素晴らしいものです。
そういった各々のエピソードに内容があり、どれもほっこりと見応え十分。
それをわずか98分に収めたラッセ・ハルストレム監督の手腕が光ります。
そもそも犬が何度も生まれ変わるという土台があるため、各エピソードに合わせて時代が進んでいくのも面白いところ。
レトロな雰囲気を醸し出す時代に始まり、徐々に近代化していく街並み、それでも変わらない景色。
これがね、なんとなくセンチな気持ちになるというか。
時間が進むにつれ得るもの、失うもの、そんな自分の記憶を辿りたくなるような気分になりますな。
あとは犬と人間の関係性って本当に良いよねぇー(オネェ風)
ニューヨーク在住中に亡くなり、死に目には会えませんでしたが、かつて実家で飼っていたチコ(雑種・メス)が恋しくなりますよ。
いつか生まれ変わって戻って来てくれるのならば、次はずっと一緒にいたいものです。
最後にちょっとだけ減点ですが、人間サイドの主人公となるイーサンの人生がやや端折り過ぎかなと。
厳格で神経質だった父との確執はもう少しだけ掘り下げても良かったはずですね、あまりにもあっさりし過ぎていて面くらいます。
まとめ
犬を飼っている人は楽しくも悲しく、横にいる犬を抱きしめたくなることでしょう。
飼っていない人は、とにかくペットショップやブリーダーに連絡したくなります。
かつて飼っていた人は、亡き犬を懐かしんでほろ苦い気持ちになるでしょう。
犬嫌いじゃなければ、絶対にこれは観て損はありません。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。