(英題:Black Gold)
2006年/イギリス・アメリカ
上映時間:78分
監督:マーク・フランシス/ニック・フランシス
キャスト:タデッセ・メスケラ
寒くなってきますとホットコーヒーが身に沁みますな。
現代ではコンビニで挽きたてコーヒーを100円~200円程度で飲める時代であり、実にありがたい話ではありますが、そういった価格破壊が貧困を生み出す原因になっている現実があります。
本作はコーヒー豆の産出国であるエチオピアの農家にフォーカスしたドキュメンタリーですが、我々の身近にあり、安く手に入る嗜好品が作り手にとってどんな状況を作っているのか?
また先進国がとる政策が後進国にどんな影響を及ぼすのか?
そういった現実を伝えるための映画です。
これはコーヒーを嗜む人ならば必ず観なければいけない作品であり、個人的には学校で勉強のテーマにしても良いと思うくらいの衝撃がありました。
基本的にはエンタメ映画を好む筆者ですが、やはり責任ある大人として、責任を知るきっかけとして、こういった映画に触れる機会を持たなくてはなりませんね。
さっくりあらすじ
コーヒー豆の価格は30年以上も下落し続けており、原産国のエチオピアでは交渉すら行われずに価格を決められていることに皆不満を感じている。
コーヒー豆はニューヨークとロンドンの国際取引場にて値段が決められ、世界で1日に20億杯以上が消費され、豆の価格の低下に反して小売価格は上昇し続けている。
コーヒー農家であり、エチオピア農協の代表者であるタデッセ・メスケラは流通業者を通さず、焙煎業者に直接売ることで中間マージンを省こうと考えるのだが、、、
豆の選別
8時間の労働で対価は0.5ドル
330円のコーヒー利益の内訳
農家に入るのは1~3%
そういった現実が貧困を生む
コーヒーが生む貧困
無知で恥ずかしい話ですが、コーヒーって石油に次いで世界で2番目に取引されてるんだそうで、そんなに流通していたことに驚きですな。
年間売上高にして実に800億ドルという莫大な金額になるわけでして、こりゃ投資家が躍起になって先物取引するわけだ、納得。
ニューヨークとロンドンで取引されるのも知らなかったし、そこで買い取り価格が決まるというのも初耳でした。
ちなみに日本は1位アメリカ、2位ドイツ、に次ぐ世界第3位の輸入国になるんだそうですよ。
で、世界的に高品質なコーヒー豆の産出国として知られるエチオピアに焦点が当たっているわけですが、国の輸出額全体の7割近くをコーヒーが占めているそうです。
これはもう国の殆どを依存するレベルの産業であり、日本を代表する自動車産業(電子部品・各パーツ含む)ですら25%前後ですからね、エチオピアでいかに大事な産業なのか良く分かるでしょう。
しかし、そのコーヒー産業がエチオピアの貧困を生んでいるという皮肉な現実があります。
正確にはコーヒー産業と言うよりは資本主義社会が、と言った方が正しそうですが、消費者に提供する企業がサービス&利益を追求すればするほどに原産国に支払われる対価が下がっていくという不思議な方程式。
流通という流れの中で中間業者が入れば入るほどに買い叩かれていく悪循環。
結局コーヒー農家では生活が維持できず、大麻の栽培などに精を出す農家が増加し続け、色々と問題になっています。
そんな悪い流れに一石を投じたのが”フェアトレード”という概念。
小規模農家で組合を作り、効率的な生産方法を考え交渉手段を身につけ、社会を発展させようという取り組みを指します。
このフェアトレードという概念を中心に、タデッセさんは先進国の支援を当てにせず、エチオピアが自立するためコーヒーを通じて貿易上の公平な取引をするよう奮闘しているわけです。
日本では外資企業も含めカフェのコーヒーで6~7割、コンビニのコーヒーで5割くらいが利益率だと言われているそうですが、ぶっちゃけ5割増しで売っても良いような気がしますけどね。
100円のコーヒーが150円になっても皆買うでしょ?
で差額の50円が生産者の元へ行くのであればそんなに悪くはないんじゃない?
実際はそんなに単純な話ではないでしょうが、生産者・企業・消費者が喜んで初めて健全な社会だと思いますけどね。
どんな計算かは知りませんが、アフリカの国際商取引が1%伸びれば年間700億円もの経済効果があり、アフリカ全体で受け取っている支援額の5倍に相当するとも言われているみたいですし。
援助も大事かもしれませんが、数字上では簡単に自立の支援ができるようにも思いますけどねぇ。。
まとめ
いやぁ、こういう現実を知ってしまうとコーヒー飲みづらくなるよね、、、いや飲むんだけどさ(汗)
単にテーマがコーヒーなだけで、実際に世間で取引される商品は大なり小なりこういったことはあるものでしょう。
そういう意味で世の中の、資本主義のからくりを知ることはきっとタメになりますよ。
本作ではあくまで生産者の目線で描かれた映画なので、正直なところ多少偏った意見も少なくはないと思われます。
どういった立場で観るのが公平なのかは分かりませんが、我々が考えもしない生産者の気持ちを知る良い機会ではないでしょうか?
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。