
(原題:Captain America/Civil War)
2016年/アメリカ
監督:アンソニー・ルッソ/ジョー・ルッソ
キャスト:クリス・エヴァンス/ロバート・ダウニー・Jr/セバスチャン・スタン/スカーレット・ヨハンソン/アンソニー・マッキー/ドン・チードル/チャドウィック・ボーズマン/ポール・ベタニー/トム・ホランド/ジェレミー・レナー/エリザベス・オルセン/ポール・ラッド
ゴールデンウィーク明けの昼間、バルト9は静寂に包まれております。
ポップコーンの売店に誰もいないのはアレですが、ノビノビと映画が観れるのはサービス業従事者の特権ですな。
というわけで観てきましたよ「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」
マーベル・シネマティック・ユニバース・フェーズ3の1作目(ややこしい)となる本作、前作エイジ・オブ・ウルトロンから1年後を舞台に物語りは始まります。
前作は個人的になかなかの凡作に感じたのでヒヤヒヤしながらの鑑賞でしたが、そんな杞憂を軽く吹き飛ばすアクション、ドラマ、メッセージ性、どれを取っても非常に素晴らしい完成度でした。
キャプテン・アメリカとして観るか、アベンジャーズとして観るかで評価が割れそうな節は感じましたが、まぁそれも贅沢な悩みです。
この密度の濃さ、このテンポの良さで見所とキャラクターを散りばめ、映画としてまとめたルッソ兄弟の手腕に脱帽です。
さっくりあらすじ
アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロンの事件から1年。
ヒドラ残党によるテロ計画を阻止するためキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースを筆頭にアベンジャーズはナイジェリアで作戦を開始するも、テロ組織の中心人物ブロック・ラムロウの自爆を防げず市民に犠牲者が出てしまう。
この事件を機に国際社会から批判を浴びるアベンジャーズ。
超人的な力を持つヒーロー達を国連の下に置く「ソコヴィア協定」を締結するため、米国務長官ロスはアベンジャーズに署名を求め、アイアンマンことトニー・スタークはこれに賛成、しかしスティーブは頑なに反対の姿勢を示す。
オーストリアのウィーンにて「ソコヴィア協定」の署名式が行われるが、スピーチ中のワカンダ国王ティ・チャカが爆破テロにより死亡、実行犯としてウィンター・ソルジャーことバッキーが国際指名手配されることになる。
事件の真相を知るため、仲間であり旧友であるバッキーを救うため、スティーブはブカレストに潜伏中のバッキーの元を訪れるのだが、、、
ソコヴィア協定を巡り対立する2人
意見は合わず、戦うことに
キャップを止められず、実力行使に出る
「正義」と「大義」
マーベルの過去作とは異なり、争いのきっかけを作るための黒幕はいても、明確な「敵」が存在しないことが最大の特徴とも言える本作。
力を持つ者同士が己の信念を懸けて争いあうためシビルウォー(内戦)になるわけですが、どちらかと言えば派手な内輪揉め、もっとざっくり言えば仲間内の喧嘩です。
1作目、2作目のアベンジャーズのように衝突しながらも互いを認め、スポ魂な少年漫画のノリで悪をやっつけるような子供向けな作品から離れ、責任ある者として譲れないものを守るために闘うアダルトな作品になっております。
性格的に相容れなくとも同じ方向を向いていたはずなのに、もう共に歩むことはできないと「仲間」に向かって攻撃する姿には一抹の寂しさを感じます。
そもそもは、キャップ率いるアベンジャーズがテロを防ぐ作戦中に一般人の犠牲者を出したこと、過去の犠牲者の遺族に責められたトニー・スタークが一念発起し国連の下につくことを決意したことから一連の話が始まります。
S.H.I.E.L.Dに裏切られた経験を持つキャップはソコヴィア協定、ひいては国連を信用することができず思い悩み、答えが出る前に親友バッキーに容疑がかかったため真相を追うことになります。
「国家には裏切られたが、個人には裏切られたことはない」と仲間に対し絶対の信頼を置くキャップ。
その思想が「個」を守ろうとする姿勢につながるのでしょう、悪く言えば大局的にモノが見えていないとも言えますが。。
しかし一通りの争いを終えた後も、トニーに対する信頼は揺るぐことはないようです。
対するアイアンマンことトニー・スターク。
アベンジャーズが戦う度に犠牲者が出る現実、それにより批判が出る世論、なによりも自身の開発した武器で多数の被害を出した過去により考えを改め、ソコヴィア協定を推す立場になってしまいます。
本人的にも100%賛成しているようには見えませんでしたが、協定締結後は国連とアベンジャーズの間で中間管理職的なポジションになり、つらそうにも見えます。
しかし素直になれない性格と傲慢な態度が災いしキャップとの溝は深まるばかり、最終的にブラック・ウィドウとも仲違いしてしまい、なんとなく孤立した雰囲気に。
キャップ達と和解するも、ある事実をきっかけに再び対峙し結局アイアンマンvsキャップ&バッキーでガチバトルに発展、そして初めて明確に”負けた”瞬間でもあります。
戦力的に劣ったのか、信念の差による敗北なのか、はたまたトニー自身に迷いがあったのか。
なんとも判定が難しいところですが、お茶を濁さずハッキリと決着がついた描写にはいささかビックリです。
エンディングにてキャップからの手紙を受け取り、心なしかホッとしたような表情を見せるトニーの姿にこっちもホッとしました。
アクションは文句無しで見応え十分、これだけでもオススメできるくらい。
冒頭の対テロ組織の戦いからバッキー追撃戦、そして目玉のオールスターバトルにキャップとアイアンマンの最終決戦、全てがメインディッシュになり得る豪華さでアクションを楽しめます。
それぞれキャラクターごとにちゃんと見せ場を用意し、強キャラに偏りすぎないようキャラ特性を生かして存分に暴れまわります。
新キャラとして登場したブラックパンサーはヴィブラニウム製のスーツに身を包みバッキーを追撃、初めてキャップの盾に傷をつけたインパクトもあり見せ場が多いです。
さらに王子として、後に国王として、終盤に器の大きさを感じさせる陛下マジ人格者。
同じく新キャラのスパイダーマンは予想以上に素晴らしく、キャラクター性もより原作に近い感じ。
公開前から話題沸騰していましたが、スパイディことピーター・パーカーを演じたトム・ホランドが見事にイメージにマッチしていて好感が持てます。
よりコミック版に忠実に、よく喋り無邪気に飛び回る姿は殺伐とした物語の癒し系となりますね。
ちなみに2017年から新たなスパイダーマンシリーズが始まるようなので、個人的にはかなり期待してます。
余談ですが美人でセクシーなピーターの叔母・メイおばさんを演じたマリサ・トベイはまさかの50代。
超絶若い!ある意味この人が一番化け物かもしれません。
大してチーム・キャップ側の癒し系アントマンも存在感を発揮。
ホーク・アイとの連携プレーにお馴染みのミクロアクション、そして予想外の必殺技はマジでビックリ。
演出的には一番面白かったのではと思います。
クールなバッキーと冷静なファルコンの漫才みたいな掛け合いも笑えたし、スカーレット・ウィッチもチート気味な超能力で大活躍。
ブラック・ウィドウとホーク・アイの対戦にいたっては往年のプロレスを観戦しているような感慨深い気持ちになります。
ヴィジョンとウォーマシンは若干見せ場が少なかったかな、まぁ、、扱いづらいポジションなんでしょう。
まとめ
ヒーローの数に対してヴィランの数が少なく、カリスマ的な悪役が減少傾向にあったのを逆手に取り生まれた秀作です。
テーマの深さ、伝え方は非常に素晴らしく、ドラマとしてもアクションとしても骨太な仕上がりになっています。
キャップとバッキーの友情とトニーの葛藤。
傍から見れば両方の心情が理解できるため、いくらかの心苦しさを感じますが、壮大なエンターテイメントとしての完成度は非常に高いレベルで完成していると言えるでしょう。
脚本も演出も見応えは十分です、マーベルシネマティック関連の作品で予習してから本作に望みましょう。
それくらいの価値はあると思います。
オススメです。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。