バーニング・オーシャン


(原題:Deepwater Horizon)
2016年/アメリカ
上映時間:107分
監督:ピーター・バーグ
キャスト:マーク・ウォールバーグ/カート・ラッセル/ジョン・マルコヴィッチ/ジーナ・ロドリゲス/ディラン・オブライエン/ケイト・ハドソン/他

 




 

2010年に起きた「メキシコ湾原油流出事故」をモチーフにした、災害系パニック映画。

原題は「ディープウォーター・ホライズン」であり、これは実際に事故が起きた石油掘削施設の名前になります。

公表された原油の流出量は490万バレル(78万キロリットル)だそうで、数百憶ドル規模での被害になったそうです。

 

本作で描かれるのは海上施設での爆破事故と、その被害を食い止めようと奮闘する職員の姿。

原油の掘削とその危険性、及び海上で仕事をする男たちのタフさが見所です。

 

 

さっくりあらすじ

水深3.5マイルに位置する圧力抑制安全装置のパイプにはわずかながら腐食があり、少しずつ気泡が漏れ始めていた。。

 

石油発掘職員のマイク・ウィリアムズは妻と娘との朝食を終え、3週間に渡る発掘作業に従事することになっている。

作業員の輸送拠点で主任のジミーと、施設の運転技術者であるアンドレアと合流し、メキシコ湾沖80kmの海上に浮かぶ原油掘削施設”ディープウォーター・ホライゾン”へと向かう。

世界有数の巨大企業であるBP社、そこから発掘委託業務を請け負うトランス・オーシャン社の作業員である彼らの仕事は、海底油田の掘削業務を安全に執り行う作業をすること。

実際の現場ではトラブルが頻発していて、そのため工期も43日遅れており、依頼主であるBP社からは工事を進めるよう圧力がかかっている。

一行が施設に到着すると、施設のあちこちに不具合が確認されており一様に職員は不満を漏らしていた。

さらに安全確認に必要な圧力テストが行われておらず、工期の短縮や経費削減を狙うBP社の幹部・ヴィドリンの仕業だと判明する。

ジミーとヴィドリンが主張をぶつけ合い、最終的にヴィドリンの指示で次の作業を始めることになるのだが、、、

 

 

 

 

マイク・ウィリアムズ
海上油田施設のベテラン作業員

 

主任のジミー・ハレル
頼れる現場の責任者

 

実際の事故の写真
燃え盛る火炎の恐怖

 

 

 

 

安全第一

しっとりと、ゆっくりと描かれる作業員たちの平凡な仕事風景から一転、怒涛の勢いで描かれる大火災の恐怖は本当に恐ろしいものです。

相当に予算をつぎ込んだであろう爆発のシーンは驚異的な迫力であり、本当に起きた出来事としての火の海の光景は筆舌に尽くし難いものがあります。

 

むしろ相対的に脚本はやや弱めな印象。

利益を求める親会社vs安全を求める下請け、という図がハッキリしているため、ドラマ部分の軋轢は至ってシンプルであり、多少の物足りなさを感じます。

デスク組と現場組、それぞれの立場での思惑もサラっと撫でて終わる程度であり、物語としての奥深さが足りていません。

工期が遅れて困る親会社にはどんな悩みがあるのか?

安全をないがしろにされた作業員たちには、どんな苦労があるのか?

そういった面をもう少し掘り下げても良かったかなと。

 

まぁノンフィクションが前提だけに、エンタメ性に寄せ過ぎるのもどうかとは思いますが、様々な人間の思惑が交錯するような群像劇としては微妙な仕上がりに。

大迫力な炎の描写が秀逸なだけに、その土台となる物語の描写の淡泊さが際立ってしまうのが残念なところですな。

 

 

凄惨な事故だったのは言うに及ばず。

こういったテーマを取り上げる映画には”アレンジ”や”脚色”が不可欠な要素になるわけですが、その匙加減は極めて繊細で難しいものです。

 

突発的な爆発に狼狽えることなく、冷静に救助や避難にまわるのは凄いことですが、いかんせん基地内部の説明不足な施設構造がテンポを悪くしています。

今現在どこにいて、どこが危険で、どういったルートで安全が予想される場所へと向かうのか?

そういった視覚的な緊張と弛緩のメリハリが無く、未曽有の事故から逃げるというプロットに対して、サバイバル・スリラーとしての演出方法に捻りが足りません。

 

とはいえ、個人的には非常に熱中できた映画であり、作品としては十分に楽しめました。

先が分かっているだけに感じる不穏な空気感は伝わってきますし、何かヤバいことが起きそうだなと言う妙なテンションにさせるだけの雰囲気があります。

先述したように事故の描写はとにかく恐ろしいし、そこを生き延びようともがく作業員たちの姿には悲しいながらも感動を覚えました。

 

ついでに炎の恐ろしさ、爆発の恐ろしさに準じて起きる”痛そうな”描写も良くできていますし、思わず目を背けたくなるようなシーンもチラホラと。

逃げ切るまでは希望を持てないような、このままじゃ”死ぬ”ことを予感させるような、無慈悲な恐怖は存分に感じ取れますね。

このリアルな描写は本当に良く出来ています。

 




 

まとめ

多少の不満も無くはないですが、トータルで見れば結構面白い映画です。

 

なかなか見かけない油田施設というロケーション、大袈裟でなく命がけで働く職員たちの姿。

ちょっと過剰じゃないかなと思うほどに繰り返す安全管理の下で、はじめて作業は進行していくものであり、1度のミスが招く危険と損益はシャレにならない大災害へと繋がります。

 

演出や構成に対し思うところはありますが、何よりこれが実話で、今日もどこかで同じような作業が進んでいるのだと思うと素直に頭が下がりますな。

エンディングでは実際に行方不明になった方や、亡くなってしまった方の写真が流されますが、命がけで戦う漢の姿には感嘆するばかりです。

 

家族のために働く男性にオススメしたいところです。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 

 



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