(原題:Dog Eat Dog)
2016年/アメリカ
上映時間:93分
監督:ポール・シュレイダー
キャスト:ニコラス・ケイジ/ウィレム・デフォー/クリストファー・マシュー・クック/オマー・ドージー/ポール・シュレイダー/他
元受刑者で作家で俳優のエドワード・バンカーの小説を映画化したクライム・スリラー。
善人から異常者まで、あらゆる役を器用に演じ分けるニコラス・ケイジ。
その独特の顔立ちに加え、異常な個性で存在感を発揮するウィレム・デフォー。
このアクの強い2大俳優がR18指定の映画で暴力を振りまくという作品ですが、予想を上回るインパクトが特徴的です。
さっくりあらすじ
コカイン所持で逮捕され、10年以上の実刑を受けたトロイはようやく出所の日を迎え、先に出所した仲間たちが彼を出迎える。
異常にキレやすいコカイン中毒のマッド・ドッグと、温和ながらも巨漢でキレると手がつけられないディーゼルと合流したトロイだが、3人の未来は真っ暗だった。
トロイは金を稼ぐため、ムショ仲間から情報を得て麻薬密売人の元に襲撃に向かい、大金とコカインを得ることに成功。
しかしカジノで全てを使い果たし、再びムショ仲間の元へと向かうのだが、、、
小物臭漂う犯罪者・トロイ
計画性無し
完全なる麻薬中毒者マッド・ドッグ
マジでイカれとる
行き当たりばったり
異常な暴力性はなかなかの見応え
泥くさい二流犯罪者
もうね、何と言えば良いのか。。
脚本家として、監督として数々の軌跡を残したポール・シュレイダー監督ですが、とにかくクセが強い。
面白いかどうかで言えば、7割強の方は面白くはないと感じるでしょう。
大物の悪党による権謀術数を描くではなく、機転を利かせて敵を討つ強者を描くでもなく、小物臭漂うチンピラの末路を描いた刹那的な物語です。
これだけ聞くと何だかドラマ性がありそうな雰囲気ですが、主要なキャラクター達がとにかく空っぽ。
激しい暴力性と残虐性で中身は非常に濃ゆいものの、何も考えていない犯罪者の姿を真っ直ぐに描いた作品だとも言えます。
物語としては、とにかく金が欲しい犯罪者3人が金策に奔走し、最終的に自滅していくという流れ。
オーソドックスな内容だとは思います。
その3人の犯罪者が基本的に馬鹿で短気で、何の計画性も持たずに犯罪に走るのがキモなんでしょうね。
悪人として成功したい者。
悪人なりにモラルを持つ者。
悪人というか、全てを壊してしまう狂人。
そんな3人のコントラストが見所なんでしょう、多分。
出所後に仲間と合流し、やたらカラフルなスーツに身を包むトロイという人物ですが、まぁ小物でして。
薄くなった前髪を中途半端に伸ばした姿は趣味の悪い中年親父という感じで、悪党にしても女性が寄って来るでもなく、人望があるんだか無いんだか。
腕っぷしが立つでもなく頭が切れるでもなく、どうにもカリスマ性が見えてこないキャラクター性が何とも生々く、犯罪者としての魅力に大いに欠けています。
エンタメ路線ではなく、リアルにチンピラを描けばこんな感じでしょうし、ここはニコラス兄貴の演技力が光ります。
対するマッド・ドッグのインパクトはそれを上回り、もう完全にイカれてます。
かの名作「GTA5」に登場したトレヴァーを実写化すればこんな感じだと思いますが、その異常な人間性が極めて印象的。
その一挙手一投足が全て異常で、これは笑うところなのか引くところなのか、全てにおいて理解不能なキャラクターですな。
何故か友情は大事にする義理固さはあるものの、殺せるものは殺し、壊せるものは壊すクレイジーっぷりはあまり他に例が無いかもしれません。
演じるウィレム・デフォーは文句無しで一流の俳優ですが、ここまでイカれた演技はなかなかお目にかかれませんよ。
そんな悪党どものグダグダを描く本作ですが、個人的には終盤にちょいと難ありかなと。
平凡な内容の映画にあれこれ盛り込んでみた結果、どう着地して良いか分からなくなったような印象でした。
起承転結が上手く繋がっているとも言えず、何だか無理やり終わらせた感が否めません。
とりあえず「何も考えずに悪に染まると、自滅する」という感じでしょうかね。
まとめ
ジワリと面白いけど、よく分からない作品です。
面白いかどうかで言えば、あんまり面白くはないと思います。
映画の内容どうこうよりも、俳優たちの怪演の方がよっぽど印象的ですし、それは映画としては微妙だということの裏返しにもなります。
微妙にスタイリッシュ、でも意味不明。
そんなピカレスクロマンを好む人以外は、無理して観なくても良いかもね。
良ければ一度ご鑑賞くださいませ。