ドント・ブリーズ


(原題:Don’t Breathe)
2016年/アメリカ
上映時間:88分
監督フェデ・アルバレス
キャスト:ジェーン・レヴィ/ディラン・ミネット/ダニエル・ソヴァット/スティーヴン・ラング/他

 




 

不良グループが強盗に入り、その結果とんでもない目に遭う姿を描いたサスペンス・スリラー。

監督を務めるは無名の新人ながらもリメイク版「死霊のはらわた」に抜擢され、また高い評価を得たフェデ・アルバレス。

タイトル通り満足に息もできないほどの緊張感は半端じゃなく、ホラーのカテゴリだと微妙な気もしますが、スリラーとしては間違いなく一級品でしょう。

 

「何の変哲も無いおじさんだけど、実は超絶戦闘力の持ち主でした」系の作品はアクションを中心に、近年よく見かける設定ですよね。

それを逆手に取り、スリラーに落とし込むアイデアと、見事に調律の取れた映画へと昇華させたアルバレス監督の手腕に脱帽です。

こら傑作ですわ。

 

 

 

さっくりあらすじ

不良少女・ロッキーとならず者の彼氏・マネー、そしてセキュリティ会社経営者の息子・アレックスは空き巣の常習犯だった。

捕まった時の罪が重くならないよう小物を盗んでばかりの3人だったが、盗品であるせいで高く売ることができず、鬱憤が溜まっていた。

一番過激なマネーは次のターゲットとして、セキュリティ会社の顧客でもある退役軍人の老人宅を狙おうと提案する。

過疎地域であることに加え、老人の娘が死亡した事故の示談金として30万ドルは固いだろうとマネーは予想し、重窃盗罪を危惧するアレックスの意見を押しのけ、老人の家を狙うことになった。

決行前の下見で老人が盲目であることに気が付いた3人は、深夜に老人の家に忍び込むのだが、、、

 

 

 

 

 

いざ老人宅へと忍び込んだ3人

 

しかしおじさんは超強く、、

 

狩られる側になってしまう

 

 

 

 

 

迫りくるおじさん

若者3人の窃盗グループ、しかも1人は結構なアウトローで銃まで所持しています。

面白半分で微罪を積み重ねた若者たちが、一念発起し大きな仕事に夢を懸けるわけですな。

しかし罪の大きさはともかくとして、楽勝で終わるはずだった計画が初っ端から頓挫し、むしろ生きて帰ることすら難しい状況に追い込まれていきます。

 

この盲目おじさんを演じるスティーヴン・ラングの怪演が本当に素晴らしく、ここまで不気味で恐ろしいキャラクターを目にしたのは久しぶりです。

個人的にはミザリーおばさんに匹敵するくらい。

ちょこちょこと大作にも出演している、ベテランの名脇役といった感じですが、素の状態だとなかなかのナイスミドル。

本作を傑作たらしめている要因の8割は彼のおかげと言っても過言ではないでしょう。

 

 

物語としては、どこか不気味さ漂う盲目おじさんの家に忍び込むサスペンス風な前半と、一転しておじさんから決死の脱出を図る後半といった構成。

何せ”盲目”という事実があり、息さえ殺せば存在がバレることはないのですが、一転して息を殺さなければいけない状況に追い込まれる温度差はかなり緊張感を高めます。

強盗に入った立場とはいえコチラの言い分は全く耳に入らず、マイペースに殺しに来るおじさんは本当に怖いっす。

 

特に演出的な”静”と”動”の使い分けは秀逸で、物音しない環境でヌッと現れるおじさんの恐怖。

ある程度の位置に当たりをつけ、全力で追って来るおじさんの恐怖。

床や壁の軋み音や、人を殴打する生々しい音、そして暗がりに映える計算された照明など、視覚的にも聴覚的にも計算された演出の数々。

とにかく疲れる映画です。

 

 

そして二転三転した末に、明らかになるおじさんの異常性もまた素晴らしい。

いや素晴らしくはないんだけど、とある人物を拉致し、目的のために監禁する発想は完全にイカれています。

 

特に終盤に不良少女・ロッキーを捕まえ、彼女にしようとしたことは鳥肌ものでして、女性はリアルに怖いシーンじゃないですかね。

娘を失ったおじさんが復讐に走るのではなく、その代わりを貰うという冷静にイカれた発想はマジでドン引きものですよ。

また、過去に失ったものを取り返すために異常性を発揮するおじさんと、自分の未来を手に入れるために執念を発揮するロッキーと、互いの夢を賭けたガチンコ対決もそれなりに見応えがありますよ。

 

 

あとはちょっとマイナス面として、おじさんが醸し出す脅威に微妙に綻びが見える印象。

隠れてコソコソ喋ってる分にはあまりバレなかったり、暗闇以外では絶望的な脅威を感じづらかったりと、もう一声の緊張感が欲しかった気もします。

ついでに言えば10対0で主人公サイド(強盗)が悪いので、いかに追い詰められようがあまり感情移入できないのも少々もどかしいかな。

 




 

まとめ

極めて計算された、完成度の高い秀作だと思います。

貧しい生活からの脱出を夢見て、倫理観を失くした若者たち。

対して亡くした娘を夢見て、倫理観を失くしたおじさん。

物語の背景もしっかりしてますし、それを大きく揺り動かすスリラーな演出の数々は良く出来ていますし、余韻の残るエンディングも含め、しっかりと楽しめることでしょう。

 

生理的に生々しい不快感はありますが、スプラッタ的な恐怖は控えめなので、そっち系が苦手な方でも十分に観れる内容だと思います。

オススメです。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



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