IT/イット ”それ”が見えたら終わり


(原題:IT:Chapter One)
2017年/アメリカ
上映時間:135分
監督:アンディ・ムスキエティ
キャスト:ジェイデン・リーバハー/ジャクソン・ロバート・スコット/ビル・スカルスガルド/ジェレミー・レイ・テイラー/フィン・ウルフハード/ソフィア・リリス/他

 




 

スティーヴン・キング原作、1990年に公開されたホラー映画の劇場版リメイク作品。

不気味なピエロ・ペニーワイズと、彼に付け狙われる少年達の戦いが描かれます。

 

ジョン・ゲイシー(アメリカの連続殺人鬼)をモチーフにしたとしか思えない不気味で残酷なピエロの姿はかなりキャッチーなもの。

個人的に注目してるビル・スカルスガルドがピエロを演じるということで、にわかに期待をしておりました。

ホラー映画としては正直微妙なところではありますが、少年少女の青春や成長を絡めた映画としては非常に良くできていると思います。

 

 

 

 

さっくりあらすじ

メイン州・デリーに住むビルは病気がちだったが、弟のジョージーは外が雨でも遊びたがり、ビルが仕上げた撥水加工をした折り紙の船を持って出かけて行った。

車道脇の水たまりに船を浮かべると、船はどんどん流れていき、雨水口へと落ちてしまう。

困ったジョージーが屈んで雨水口を覗くと、船を拾った不気味なピエロが顔を出し、友達の名前を教えろと迫ってくる。

怖くなったジョージーが船に手を伸ばすと、ピエロはジョージーの腕を噛みちぎり、そのまま雨水口の中へと引っ張り込んでしまった。

ジョージーが行方不明になってから8か月が経ち、未だにビルはジョージーの行方を諦めきれずにいた。

折しもデリーでは少年少女の失踪事件が多発しており、警察も警戒するよう呼び掛けている。

奇妙な出来事が連続する日々の中で、学校では夏休みが近づいてくるのだが、、、

 

 

 

 

弟が失踪したビル
おっさんに喧嘩を教わったりもした

 

ピエロはどこにでも現れる
違う世界では自閉症だったり

 

意を決し、謎を解きに行く少年団

 

 

 

 

 

甘酸っぱいホラー映画

人の恐怖を糧に、一定の周期で現れる殺人ピエロのペニーワイズ。

それに対し、弟を失くしたビルを中心とした少年少女たちの奮起が物語の中心となります。

 

弟が失踪(死亡扱い)し、それでも一縷の望みで弟を探すビル。

「アバズレ」と噂され、女子グループから陰険なイジメを受けるベバリー。

学校に馴染めず、不良達に目をつけられているベン。

度を越えた過保護な母親に嫌気が差しているエディ。

 

などなど、それぞれが何かしらの形で重荷を背負い、「負け犬」と呼ばれる彼らが一致団結していく若々しくも、熱い展開に。

 

 

神出鬼没で不気味なピエロ・ペニーワイズがもたらすスリリングな展開はあれど、どちらかと言えば子供たちの冒険譚の方にフォーカスしており、ある意味でジュブナイル的な映画と言っても差し支えなさそうです。

それ故に、ホラー映画としての怖さは明らかにパンチが足りず、純粋な怖さを感じづらいのが特徴的とも言えますが。

 

むしろ生々しくタチの悪いイジメや、イジメの枠を明かに超えた傷害事件や、娘に対する性的虐待や、過干渉で息子を束縛する母親の描写の方が遥かにインパクトが強めな印象。

それぞれの子供たちが背負う”背景”の方が現実的な陰鬱さを醸し出しており、対照的に殺人ピエロの存在感が薄くなっているような気もします。

 

恐ろしピエロも脅かすのは得意ではあるにしろ、いざ少年達と戦うとなると微妙に弱いしね。

圧倒的な力を持っている風には見えるんだけど、ツメが甘いというか何というか、、この辺の子供たちの”生かし方”にご都合主義を強く感じるわけです。

 

 

結果的に「スタンド・バイ・ミー」のような青春物語の劣化版にちょっとしたホラーエッセンスで味付けしたような、何とも微妙な味わいになっていると思います。

トータルで見れば完成度は高いですし、ライトなホラーを好む人には十分な出来でしょう。

ベテランのホラーマニアには全く以て物足りないでしょうが。

 




 

まとめ

多感な年頃を迎え、自身の境遇や現実的な人生の壁を感じ始める少年少女。

心のどこかにある空白や未曽有の”恐れ”を糧に、ペニーワイズは姿を現し獲物を狙います。

 

そんな最大の敵を相手に成長していく子供達、負け犬が負けじと恐怖に立ち向かうメタファーを描いたと思えば、観る価値のある作品と言えるかもしれません。

力を合わせて脅威を乗り越え、それぞれが新たに絆を結ぶシーンなんかは感動というよりはほっこりとした気分になります。

ホラー映画なはずなのに、何とも後味が爽やかな珍しい作品ですな。

 

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



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