ダウンサイズ


(原題:Downsizing)
2017年/アメリカ
上映時間:135分
監督:アレクサンダー・ペイン
キャスト:マット・デイモン/クリストフ・ヴァルツ/ホン・チャウ/クリステン・ウィグ/ロルフ・ラスゴート/他

 




 

人口増加に伴う社会問題を背景に、身長を13cmに縮めることで解決していくSFコメディ・ドラマ。

監督は「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」で、パルムドールにもノミネートされたアレクサンダー・ペイン氏。

社会問題に対する風刺やブラックジョークを好み、映画に盛り込む傾向があります。

 

地球の資源を守るために消費を抑えることは大事なことです。

人間を小さくすれば良いという子供のような思考を、そのまま形にしたようなユニークな作品ですな。

 

 

 

さっくりあらすじ

ノルウェーの研究所で身体尺度の研究員が有機物細胞の縮小化に成功し、身長180cmの人間を12.9cmにまで縮めることが可能になる。

被験者として参加した36人の人々は、縮小化を経て5年間生活し、中には出産までしたものもいた。

 

奨学金で医学の道へ進むも、母の介護で学業を断念した青年・ポールは母の死後、妻のオードリーと暮らしていた。

ポールは理学療法士の資格を得て働くも、奨学金の返済もあり妻の望む新しい家は買えそうもない。

人間の縮小化は世間にも広まり、少ない財産でも裕福な生活が維持できるというメリットに惹かれ、今や全人口の3%がミニチュア人間になっている。

同窓会に参加したポールは同級生が縮小化したことを知り、全米で一番のミニチュア・コミュニティーへと視察に向かうのだが、、、

 

 

 

 

身体が小さくなって消費も激減
約13cmのミニチュア人間に

 

いざ施設に相談する夫婦
一般人でも資産家になれる

 

意を決し、
縮小化の手術を受けるが、、

 

 

 

小さくなって、夢を見る

東京に住んでいると本当に良く分かりますが、狭くてボロっちい部屋でも家賃が高いんだよね。

窮屈な暮らしを支える多大な支出、働けど働けど生活は楽にはならないもので。

身体の縮小化を施すことで、手持ちの財産で裕福な生活が手に入ると言う話は魅力的な気もします。

 

しかし、現実的に考えて自分が13cmの人生を送るとなると、これはもう相当に悩みますよね。

筆者は177cmですが、これが手のひらサイズに収まるような大きさになると、別の生物に生まれ変わるかのような錯覚を覚えます。

資源の消費を抑えると共に、個人が贅沢な暮らしを堪能できるとなれば、恐らくは良い事なんだとは思いますが。

現実的に考えてみて、どうにも腑に落ちない不安感が拭えませんな。

 

いざ縮小化の人生を選んだ、ポールの視点を通した縮小化の演出はなかなかに興味深いところ。

身体を小さくする=質量が小さくなることだったり、単純に消費が減るので手持ちの財産が富裕層並みの価値になったり。

何より無駄に緻密に考えられた縮小化手術の流れはユニークで面白く、ドラえもんのアイテムを科学的に実践しようとすると様々な注意点があるのだと妙に納得してしまいます。

 

しかし、作品としてはあくまでドラマが主体のものであり「小人の大冒険!!」的なものではないのでご注意を。

ペイン監督が得意とする風刺があちこちに散りばめられ、単なる娯楽作品に強めなスパイスが効いています。

 

地球の未来の為に開発した縮小化技術が、貧困層の人生を一変させるほどの贅沢に繋がったり。

世界中の消費が軽減された結果として、経済が低迷し不景気を招いたり。

ミニチュア・コミュニティーの中でもハッキリとした格差が存在していたり。

一見して派手で優雅な生活には憧れは感じるものの、いざ中身を見ていると空虚にも感じられ、長い目でみたら結局のところ生活の質は変わらないようにも感じます。

 

 

主演のマット・デイモンはもちろんのこと、現実的な快楽主義者を演じるクリストフ・ヴァルツも良い味を出してります。

しかし、特筆すべきはベトナム人亡命者ノク・ランを演じたホン・チャウの存在感。

タイの難民キャンプ出身のベトナム系アメリカ人ということらしいですが、本作でゴールデン・グローブ賞助演女優賞にノミネートされるだけあって、素晴らしい演技で魅せてくれます。

ちなみに映画出演が本作で2作目ですからね、これは凄いことですよ。

 

良く働くけれどせっかち、親切だけど口が悪い清掃業者という役を演じるわけですが、本当に堂々とした演技は圧巻の一言。

特別美人というわけでもないですし、純粋にキャラクター性と演技で勝負できる本格派アジア系女優として、今後の活躍が楽しみですな。

いや、本当に素晴らしい。

 

ゲスい下ネタではありますが、劇中で彼女が語る「8種類のファック」はもはや名言ですよ。

これだけでも一見の価値ありだと言っても良いくらい。

 




 

まとめ

人類の縮小化というSFに始まり、苦楽を踏まえた人間ドラマに続き、良く分からんロマンスに終わる。

「何か思ってたんと違う」感は否めませんが、ペイン監督の前作「ネブラスカ」に比べれば娯楽的で、丁寧な作りだと思います。

それを支える俳優陣も素晴らしいものがありますし、それなりに考えさせられるものもありますし、退屈な作品ではないでしょう。

 

でも若干人は選ぶかな。

良ければ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



ブログランキング参加してみました。
良ければポチっと押しちゃってください。