(原題:A Perfect Day)
2015年/スペイン
上映時間:106分
監督:フェルナンド・レオン・デ・アラノア
キャスト:ベニチオ・デル・トロ/ティム・ロビンス/オルガ・キュリレンコ/メラニー・ティエリー/フェジャ・ストゥカン/他
紛争地帯で活動する、国際援助団体の活躍を描いたヒューマン・ドラマ。
ユーゴスラビア紛争を背景に、国際NGO団体の活動を切り取った作品です。
国境なき医師団に所属する医者が原作を書き、監督・脚本を務めたフェルナンド氏も実際に紛争地帯で援助活動をした経験があるそうな。
経験則に基づく映像や表現には絶対的な説得力があり、また素晴らしい俳優陣が作品を彩ります。
とはいえ本作はドキュメンタリーではなく、あくまでドラマ作品であり、淡々とした内容ながらも極めて深い味わいがあります。
「対岸の火事」だとしても、あまりにも日本から遠い紛争地帯。
世界各地で争う人々、助ける人々、その間に挟まる人々。
紛争がもたらす弊害や経済事情、果ては処世術まで、非常に勉強になる映画です。
さっくりあらすじ
1995年、停戦直後のバルカン半島。
紛争地域のとある村で井戸に死体が投げ込まれ、生活用水が汚染されてしまう。
国際援助団体「国境なき水と衛生管理団」はロープを使い死体を引き上げようとするが、途中でロープが切れてしまった。
代わりのロープを探すため、メンバーは地雷だらけの危険地帯へと向かうのだが、、、
井戸に死体が投げ込まれ
使用不能に
危険な地雷原を避けながら
ロープの調達へ向かう
タフで危険な仕事です
世知辛い紛争地帯
紛争地帯での活動経験を元に作られた映画として、全てが事実に基づくものではないにしても、描かれる内容がリアルで興味深い作品です。
停戦後の紛争地帯を右往左往する人々を描くドラマなので、基本的に軍事的な演出や派手な銃撃戦はありません。
言ってみればやや地味めな映画だとも思いますが、それを補って余りある魅力は満載。
非常にタメになる作品ですな。
物語としては井戸に投げ込まれた死体を除去するためにロープが必要で、新たなロープを探すと同時に、紛争がもたらす様々な側面が見えてくるという流れ。
水質汚染が生活の基盤の脅威になるのは十分に理解できますが、そもそも井戸に死体を投げ込む発想の時点でドン引きですよね。
ましてバリバリの戦時中ではなく停戦中に。
せっかく援助活動をしにきてくれたNGO団体に対しても、現地の人々はどこ吹く風。
死体を引き上げるロープが必要だと訴えても「ロープなんか無いよ」の一点張りで、協力しようとする姿勢が見えないんですな。
危険な紛争地帯でさぞ苦労しているんだろうと思う反面、あまりにも”よそ者”に対して冷静で無関心な態度はなかなか考えさせられるものがあります。
「こっちが協力すれば、きっと協力してもらえる」という発想自体がこっち側のエゴなんですよね。
現地には現地のルールがあり、それを踏まえずに腹を立てても仕方がないことなんでしょう。
そんな世知辛い紛争地帯のルールと、彼らの生活を助けようとする団体の悲哀が非常に印象的です。
また、当たり前ですが極めて危険なエリアなんですな。
道を塞ぐように障害物(牛の死体)を用意し、右か左か、どちらかには地雷が埋められていると。
いじめられっ子の少年を保護しようとすれば、別の少年に銃を向けられると。
そもそもエリアの入出を管理している軍隊が、敵か味方かハッキリしないと。
とにかくリアルで世知辛い現地の風土は緊張感があり、正直観ているだけで疲れます。
さらに現地の悪い人たちからすると、水は生活必需品であり、金儲けのチャンスでもあるわけで。
恐らくは井戸に死体を投げ入れたであろう水業者たちが、何食わぬ顔で高値で水を販売してたりもします。
正義やモラルなど何の役にも立たない世界に落胆しつつも、内に秘めた情熱で再び援助活動に励む姿には頭が下がるばかりですよ。
ちなみにロープは見つかるんですけどね、その入手経路もかなりダウナーなテンションになりますのでご注意を。
まとめ
紆余曲折し、結果的に井戸から死体が回収されても、何事も無かったかのようにまた新たなトラブルが発生し、彼らは現場へと走ります。
冒頭で述べたように、彼らの活動の一部を切り取っただけの映画なので、恐らくは劇中で描かれたものは日常茶飯事なんだとも思います。
何を以てして、彼らがこういった援助活動に励むのかは知る由もありませんが、本当に勇敢で親切で称賛に値するものなのは間違いありません。
どこかの国で起きている現実の物語です。
誰もが一度は観る必要がある、大事なものだと思います。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。