(原題:Eagle Eye)
2008年/アメリカ
上映時間:118分
監督:D・J・カルーソー
キャスト:シャイア・ラブーフ/ミシェル・モナハン/ビリー・ボブ・ソーントン/ロザリオ・ドーソン/マイケル・チクリス/アンソニー・マッキー/他
人工知能と監視社会をテーマに描いたSFサスペンス。
メガホンを取ったカルーソー監督と主演のシャイア・ラブーフは2007年にも「ディスタービア」でタッグを組んでおります。
まぁ人工知能×サスペンスという時点で大体は察することができそうな作品であるもので、本作も例に漏れず大体はお察しの通りでございます(笑)
しかしピンチまでの時間を正確に計る演出や、無人でも大掛かりな装置で邪魔者を殺しに来る演出など、映像的な面白さに溢れています。
お休みの昼下がりにダラーっと観たくなるような、ちょうど良い塩梅の映画ですな。
さっくりあらすじ
政府関係の仕事に就いていた双子の兄・イーサンを亡くしたジェリーの携帯電話に、女性の声で「今すぐ逃げろ」と警告が入る。
意味が分からず無視したジェリーだが、その直後にテロ工作の容疑で逮捕されてしまった。
しかし取調べの最中に大型クレーンがビルを破壊し、ジェリーは不本意ながらも逃走を余儀なくされる。
電話を通し正確に逃走経路を伝える声に従い、ジェリーは女性が運転する車に乗り込むのだが、、、
意味も分からず逮捕され
謎の声に導かれ
2人で逃げることに
スピード感重視
現代では溢れかえるほどに使い古された”人工知能”というテーマですが、とにかく印象的なのがスピード感。
緊張に次ぐ緊張という流れのテンポが非常に良く、事件に巻き込まれてから解決するまでのタイトな仕上がりはなかなかのものです。
余計な中弛みもラブロマンスも無く、必要なものだけを詰め込んで研磨する姿勢には好感が持てますな。
というか、この手の映画は黒幕のSEがいるか、もしくはAI自体の暴走or反乱と相場が決まり切っているもので、ズルズル尺を引き延ばすほどに退屈になるものでしょう。
人間の思想や判断に対して、極めて機械的に理論的に、良くも悪くも融通の利かないコンピューターの決断が人間の脅威になると。
これ以外の発想で描く作品は稀有なものですし、道筋が決まっているのであれば映像や演出でいかにアイデアを絞るかが決め手になります。
本作に於いては息もつかせぬスピーディーな展開と、携帯電話を通じてピンチを回避するという点が独特の味付けだと言えるでしょう。
物語としては、フリーターの兄ちゃんが突然逮捕され、電話を通して出される指示に従って逃げ回るというもの。
シャイア・ラブーフの弱そうな雰囲気がマッチしていて良いですね(褒め言葉)
優秀な兄に対してのコンプレックスを抱え、でも何かに打ち込むような情熱は持ち合わせておらず、何となしに怠惰な生活を送る。
良い意味で個性が消えていて、本当にどこにでもいる兄ちゃんに見える好演です。
というか「トランスフォーマー」を代表するように、事件に巻き込まれ型&ピンチ脱出系を演じさせたら文句無しで一流ですな。
荒唐無稽な物語ではあれど、もう数年~数十年経ったら実現してしまいそうな人工知能の描写もポイント。
判断を誤り、取り返しのつかない事態を招いた人間を排除するというAIの発想は正しいのか、間違っているのか。
さすがに殺すことはないんじゃないかとは思いますが、ここまで政治家を追い詰めるシステムが実現したら世の中はどうなるんでしょうね?
社会批判というよりは、将来の懸念として疑問が残ります。
日本に導入したら恐らく国会議員の半分はいなくなるでしょう(笑)
融通が利かなくとも人間よりも優秀な頭脳が、人間の幸福や平和をどう導くのかは非常に興味深いものだと思います。
それと同時に粛清の対象になるかと思うと怖いものでもありますが。
まとめ
ありがちな内容を、ユニークなアイデアで彩った良作だと思います。
不自然な部分や作品として粗い部分も散見しますが、やはりスピーディーなノリで帳消しにできる魅力があります。
ただし予想を上回るような作品というわけでもなく、良くも悪くも無難な映画かなと。
よくあるけど面白い、面白いけどよくある、それ以上の言葉が出てきませんな。
ポップコーン・ムービーには最適な映画です。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。