
(原題:Orphan)
2009年/アメリカ
上映時間:123分
監督:ジャウム・コレット=セラ
キャスト:ヴェラ・ファーミガ/イザベル・ファーマン/ピーター・サースガード/ジミー・ベネット/アリアナ・エンジニア/CCH・パウンダー/他
鈍感で凝り固まった概念に縛られる大人を戒めるためのサスペンスホラー作品。
とりあえずパッケージからして怖いっすよね。
邦題は「エスター」、物語の中心となる少女の名前で、原題は「オーファン」で”孤児”という意味になります。
なかなかに良くできたサスペンスですが、特筆すべきは”大人のマヌケさ”と”子供の鋭さ”いったところでしょうか。
寛大な大人を演じようとする、大人の心理の隙を突いた脚本は非常に素晴らしいと思います。
さっくりあらすじ
長男ダニエル、長女マックスに次いで妊娠した三人目の子供を死産してしまったケイトとジョンのコールマン夫妻は養子を迎えようと孤児院を訪れる。
孤児院で過ごす子供達の仲で特に目をひく9歳の少女エスターを気に入った二人。
孤児院の責任者であるアビゲイルによるとエスターはロシア出身、聡明で少し大人びた少女だとのこと。
彼女を迎え入れることを決心し、一緒に暮らすことになったエスターは聴覚に障害を持つマックスにも優しく接し、一家はすぐに打ち解けた。
しかし古風な格好を好み、以上に歯医者を嫌がり、首と両腕のリボンを決して外さず、お風呂に入る際は鍵をかけるなど、変わった一面を訝しげに感じるケイト。
ジョンに相談するも取り合ってもらえず、やがてエスターは反抗的な態度を見せ始め、徐々に家庭に綻びが見え始めるのだが、、、
コールマン夫妻
微妙に愛情のズレを感じる
聡明で元気な女の子エスター
曇りなき笑顔
心優しい妹のマックス
可愛いんだ、この子
ズレた感覚
えー基本的にケイトとジョン夫妻は色々な意味でズレてます。
夫婦の愛情も何と言うか、、元アル中でメンタル的な支えを欲している妻に対して夫ジョンの愛情は色欲そのもの、「チ○コ以外の感情は無いのかお前は!?」と問い詰めたくなります。
三番目の子供が亡くなったのは確かに悲しいことですが、可愛い二人の子供に囲まれているにも関わらず亡くなった子供の代わりに養子をもらうという発想も理解できません。
台所でやや強引にケイトと交尾しようとするジョンとか、、エスターが通りかかって慌てて中断するものの、何と言うか、、、配慮の無い夫婦です。
そもそも親としての資格もけっこうギリギリな気がします、まっすぐ育った子供達がむしろ偉い。
特に妹マックスの可愛さは悶絶します、こんな娘がいたら親バカ通り越してモンペになるかもしれません。
余談ですが、マックスを演じたアリアナ・エンジニアは本当に聴覚障害があり、手話と読唇術を習得しています。
そんな究極の自己満足に浸る大人の中に忍び寄るエスターの恐怖。
平和な日常を理不尽な暴力でザックリ引き裂いていくのがホラー映画の定石ですが、エスターの悪事に間接的に気づいていながらも寛大な大人を演じることで蓋をしてしまう大人達。
もっとハッキリ言えばもっと早い段階で防げただろ!ということです。
実際にエスターの正体は「発育異常で成長が止まった33歳」で精神を煩い、非常に攻撃的で危険な女性。
どんなに時間を経ても子ども扱いされ「女性」として見られない彼女の苦悩は押して知るべし、悲しいサイコパスであります。
終盤にバッチリおっかないメイクでジョンに迫るもあっさり拒絶。
チ○コでしかモノを考えられないジョンも夫婦の危機に参っていたせいか、「外から持ってきた可愛い人形」のような扱いをされるエスターに一抹の同情も覚えます。
んで、涙でメイクがグチャグチャになったエスターはマジでホラー。
何故か入れ歯だし、、夜光塗料で壁一面に描かれた絵にも女性としての欲求が狂気的に表現されています。
演じたイザベル・ファーマンは現在19歳、素朴で可愛らしい女性へと成長しています。
まとめ
何度も言っているようにマヌケな大人と猟奇的な子供を描いた映画です。
早めの段階でエスターの異常性が出始めるのでオチはけっこう読めてしまいますが、それを遥かに凌駕する迫力があります。
エスターを取り巻く大人にイライラすること受けあいですが、さっくり観てもじっくり観てもやっぱり怖い、良作な作品だと思います。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。