(原題:Frances Ha)
2012年/アメリカ
上映時間:86分
監督/脚本:ノア・バームバック
キャスト:グレタ・カーウィグ/ミッキー・サムナー/アダム・ドライバー/マイケル・ゼゲン/パトリック・ヒューシンガー/他
いやぁ年末って忙しいですよねー。。
本当は一年の終わりにふさわしい映画をご紹介するつもりだったのですが、仕事で忙殺されてしまいました。
ので、今年最後は最近観た映画のご紹介で締めくくりたいと思っております!
別にフォールアウト4が面白くてサボってたわけじゃないですよ。。
いきなりですが、人間てゆっくり成長するもんです。
例えば仕事や親子の関係。
社会的な仕組み。
彼女や嫁さんとの関係。
家庭の作り方。
子供の教育など。
あらゆる分野で失敗をして経験を積み重ね、いずれ成熟した大人となるわけです。
それを踏まえると、実際のところ大人になれる歳って30歳くらいなんじゃないかと思っています。
20代も後半になってくると人生っていろいろと複雑になってきますよね?
一般的に考えれば社会人となって5~10年ほどでしょうか。
今の仕事を一生続けるのか?
今の恋人と一生を共にするのか?
一生住む場所はどこになるのか?
人生に関わる大きな決断を考え始める時期であり、自分の周りの人たちが先に進んでしまう時期でもあります。
学生から社会人へと歩を進め、足並みを揃えて生きてきた同級生とバラけてくる時が必ずやってくるわけですな。
さっくりあらすじ
プロのダンサーを目指すフランシスは、親友のソフィーとニューヨークのアパートに同居している。
彼氏との同棲よりもソフィーとの同居を選んだせいで破局してしまったが、劇団の練習生として日々練習に励み、ソフィーと無邪気に遊ぶ毎日に充実していた。
しかし、ある日ソフィーはフランシスを置いて引っ越してしまい、高額な家賃を払えずフランシスは部屋を出て行くことになる。
男友達の家でルームシェアを始めるも、ダンサーとして仕事を得られず、家賃を払えなくなり今度は実家のサクラメントへ帰ることに。
再びニューヨークへ戻り、友人の家に居候するも自分の居場所が見つからず、思い立ったようにパリへと赴くがやはり居場所も目的も見つからず。
そうこうしてる内に所属事務所の上司にはダンサーとしての将来を閉ざされ、親友のソフィーは婚約し彼の仕事で日本へ行くことになる。
焦るフランシスとは対照的に自分の周りにいる人の人生が安定し、落ち着いていくのだが、、、
友達と過ごす、かけがえの無い時間
しかし時間と共に、友情の形も変わっていく
先に進む人、立ち止まる人
夢を追う自分と、将来の自分
タイトルの「フランシス ハ」の「ハ」って何?みたいな謎めいたキャッチコピーが目につきますが、そこに大した意味はありません。
「あぁ、そーゆーことね」程度のもので、映画のピリオドを作っただけです。
女性の社会進出が注目を浴びる昨今、ダンサーという少し特殊な世界ではあるものの、フランシスのような女性はこれからの日本で増えるかもしれないですね。
日本よりも女性の社会進出が進んでいるアメリカでは、実際にフランシスのような女性がたくさんいます。
日本の女性が共感を得るかどうかは分かりませんが、作中の登場人物の描写が良いツボを抑えている印象です。
「こーゆー人いるいる!」という絶妙な人物設計が素晴らしかったですね。
なにせチャンスと実力と運があれば、誰でも成り上がれる”自由の国”アメリカです。
実力はあっても、チャンスと運に恵まれずにくすぶっている人はたくさんいます。
ついでに実力もなく、くすぶっている人はもっとたくさんいます。
頭が良く、将来を見据えて日々を過ごす人たちは先のステージへと進み、自分と同じ目線でいる人たちは裕福で将来の心配をしていない。
表面上は仲良く、悩みを打ち明ける友達ですら人生における立ち位置が違えば、結局そこにいるのは自分ひとりだけ。
得体の知れない疎外感が付きまとい、胸の奥のほうで常に不安が渦巻いている。
そんな経験がある方も多いのではないでしょうか?
当たり前ですが時間て常に流れているもんで、誰もが少しずつ先に進んでしまいます。
作中でのフランシスは27歳。
夢を追いかけて暮らす友達はもう少しだけ若くて、元気も余裕もあります。
逆に現実というものを理解して、安定した生活やパートナーを見つけた人たちの輪にも入れません。
彼女の子供っぽさや、夢を追いかけるひたむきな姿勢は人に愛されます。
ちょっとアホだけど良いキャラしてる、そんな感じ。
でも彼女の口から語られるのは、将来の夢や理想の恋愛に終始するような、若さゆえの夢物語。
次のステージに進んだ人から見れば地に足のついていない、絵空事ばかりを語る変わった子のような評価になってしまうんですな。
決して悪いことじゃないんですけどね。
でも「それじゃこの先食っていけないよねー」と生暖かい目で見られるフランシスの描写が妙に生々しく、個人的に見ててつらかったです。
まとめ
自分の人生は自分のものです。
やや自分を見失いがちであれ、純粋なフランシスのように夢にかじりつく人生も、評価されるべきではあると考えます。
でもそれだけで生きていけるほど世の中は甘くないのも事実なわけで。
最終的に人の助力があったとはいえ、ダンサーの夢は保留して、振り付け師として生きることを決意したフランシス。
若さにまかせて飛び回っていた彼女も、良い着地点を見つけました。
言い換えれば現実を受け入れて、自分らしさを少しだけ押し殺し、かつ好きなダンスに携わって生きていくということ。
他人から見れば妥協に見えなくもないでしょう。
しかし上ばかりでなく、斜め上にも答えはあるもんですし、その決断の価値はフランシスにしか分かりません。
大事なのは元の生活に戻すことではなくて、新しい生活をつくること。
そんなフランシスの悩みや疎外感、そして親友や仲間の意味や価値を描いた喜劇のような映画です。
全編モノクロで流れる映像は美しく、ニューヨークという大都会の雑踏とその陰に隠れた冷たさが良く分かる、興味深い演出が多かったように思います。
やや人を選ぶ映画なので、面白いかどうかは何とも言えません。
「いいから黙って働けよ」と、言ってしまえばそれまでの作品だとは思います(笑)
それでも観る価値のある、良い映画ですよ。
20代から30代の方、夢を追いかける女性は面白いかもしれません。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。