ハクソー・リッジ


(原題:Hacksaw Ridge)
2016年/アメリカ
上映時間:139分
監督:メル・ギブソン
キャスト:アンドリュー・ガーフィールド/ヴィンス・ヴォーン/サム・ワーシントン/ルーク・ブレイシー/ヒューゴ・ウィーヴィング/他

 




 

太平洋戦争の沖縄戦に従軍した実在の衛生兵、デズモンド・T・ドスの姿を描いた伝記的戦争ドラマ。

良心的兵役拒否者でありながら、その目覚ましい活躍が評価され名誉勲章を受章した伝説的な人物だそうです。

 

要は武器を持って戦うのは嫌だけど、戦場で救える者を救いまくった偉人ということですな。

もちろん多少の脚色はあるのでしょうが、劇中で描かれる彼の信念や、それに基づく異次元の活躍には度肝を抜かれるばかり。

「衛生兵」という、戦場では主役にならない人々こそが中心になる珍しい作品でもあります。

 

 

 

 

さっくりあらすじ

ヴァージニア州で育ったデズモンドはある日、兄との喧嘩で危うく殺しかけてしまい、それ以降は「汝、殺すおとなかれ」の教えを胸に深く刻み込んだ。

月日は流れ第二次世界大戦が激しさを増し、兄も友人もこぞって出征する姿を見て、デズモンドは衛生兵として陸軍に志願する。

厳しさを苦にすることもなく順調に訓練をこなすも、小銃の訓練に入るとデズモンドは一貫して銃に触れることを拒否した。

「人を殺せない」と主張するデズモンドに対し、上官は「戦争とは人を殺すこと」と聞く耳を持たず、遂には除隊を宣告されるのだが、、、

 

 

 

 

デズモンド・ドス
衛生兵を志願するが、、

 

上官の理解は得られず
仲間からも無視される

 

しかし信念は曲げず
数々の奇跡を巻き起こす

 

 

 

 

 

汝、殺すことなかれ

まずは簡単に説明します。

沖縄戦とはアメリカ&イギリス軍(連合国)vs日本軍の戦いであり、本土侵攻へ向けた補給&航空基地が欲しい連合国と、連合国にダメージを与え有利な講和を狙う日本軍の戦いを指します。

約2か月半にも及んだ戦闘では両サイド共に大規模な兵力を投入し、硫黄島の戦いにも匹敵する激戦地であったそうな。

 

地形が変わる程の銃弾・砲弾が使用され、日本側の死者・行方不明者は約18万人(アメリカ軍は約2万人)にも上り、今なお残る当時の不発弾は20トン以上にもなるそうです。

そんな互いの意地と戦果を懸けた激しい戦いにて、75人(諸説あり)もの命を救った兵士こそが、本作の主人公であるデズモンド・ドス氏なんですな。

 

 

物語としては不殺主義を貫くデズモンドが、軍国主義な陸軍の中でどう居場所を見つけ、どう活躍したかを描くもの。

軍隊の中では様々な考え方を持つ者がいるにしても、基本的には日本(沖縄)を制圧するための訓練が課せられます。

そんな訓練の数々を乗り越え、ようやく武器を使う訓練に入るや否や、デズモンドのワガママが炸裂するんですな。

 

あえてワガママと表現しますが、武器を以て敵を無力化し、基地を制圧するのが戦闘の基本だと思います。

そんな基本中の基本である重火器の扱い(敵の殺し方)を学ぶに際し、急に「無理」と突っぱねるデズモンドの思想は極めて異質に見えるわけですよ。

”良心的兵役拒否者”と言えば聞こえは良いですが、傍から見ればチームワークを乱す人にしか見えないんですな。

そもそも何故に軍に入ったんだと。

 

「軍に入って国の為に尽くしたい」けど「戦闘で人を殺すのは嫌だ」という主張は、理解はできても認め難い、何とも複雑な気持ちになります。

彼の態度を良く思わない同僚に暴行を受けても、(チームの士気に関わるから)除隊しろと上官に勧められても、頑として意志を貫く姿は立派というか、バカというか。

もし自分が軍人だったとしたら、彼と同じチームになるのだけは嫌だと、誰もがそう感じることでしょう。

 

 

しかし、いざ戦闘が始まればそんなネガティブな印象が一転し、彼の主張にも一理あることが良く分かります。

「敵を倒す者」と「味方を救う者」と、どっちが偉大かは分かりませんが、敵を殺すだけが戦いではないという真実が見えてくるわけで。

身体が粉微塵に吹っ飛ぶような激しい戦闘の中で、戦場を走り回り要救護者を助けることに、どれだけの勇気がいることか。

生々しい四肢損壊を目の当たりにして、武器を持たずにいることがどれほどに怖い事か。

 

やたらディテールに拘るメル・ギブソンが監督を務めただけあって、凄惨な戦場の描写が良く出来ているだけに、尚更デズモンドの偉業が際立ちます。

最終的に多数の負傷兵の命を救った男として、同僚に認められていくあたりなんかは素直に感動してしまいました。

 

 

マイナス面としては、兵士としてのデズモンドの葛藤は描かれているものの、衛生兵としての訓練描写が皆無なこと。

あと敬虔なクリスチャンであるメル監督の色として、宗教的な賛美がかなり強めなことでしょうか。

実話に基づく伝記映画としては、やや脚色が強めにも見えてしまい、娯楽映画やプロパガンダ映画の枠にも入ってしまいそうなのが残念なところ。

ついでに描かれる日本兵がどうにも狂信的で凶暴な面が強く、やはり我々から見るとあまり気分の良いものではないですかね。

 

 




 

 

まとめ

善悪の概念が薄まってしまう戦場という舞台で、その極限の環境で”善”であろうとした男の物語です。

 

とはいえ、彼の思想に人々が感化されれば軍隊は成立しなくなってしまいます。

近代の戦略の基本は”戦争の抑止力は武力”が王道ですし、デズモンド氏の思想が正しいとまでは言えないところがキモでしょうか。

それでも戦争に参加することを決め、信仰に従い戦うことを止め、ひたすらに人を助けた彼の偉業は讃えられてしかるべきものだとも思います。

 

なかなかの良作です。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



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