her/世界でひとつの彼女

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(原題:her)
2013年/アメリカ
上映時間:120分
監督/脚本:スパイク・ジョーンズ
キャスト:ホアキン・フェニックス/エイミー・アダムス/スカーレット・ヨハンソン/ルーニー・マーラ/オリヴィア・ワイルド/クリス・プラット/マット・レッシャー/ポーシャ・ダブルディー/他

 




 

 

人間と人工知能の間に生まれた愛を描く、SFラブストーリー。

個人的には全く映画センサーが反応しなかった作品ですが、やたら評判が良かったのとホアキン・フェニックスが出演しているので観てみました。

 

人間の性別は(生物学的に)男性と女性に分かれます。

人間が誰かを、何かを愛するというのはどういうことか?

また定義は何か?

 

斬新な切り口で既存の恋愛感を描く作風は批評家から高く評価されており、アカデミー脚本賞も受賞しました。

人間と人工知能の間に生まれた愛を通じ、僕らの価値観と幻想に疑問を投げかけてくるような作品です。

 

 

 

さっくりあらすじ

近未来のロサンゼルス。

手紙の代筆ライターとして働くセオドアは、妻のキャサリンに家を出て行かれてからというものの、悲嘆に暮れる毎日を過ごしている。

そんな折に、世界初の人工知能OSの広告に興味を持ったセオドアは即購入、さっそく起動するとOSは魅力的な女性の声で”サマンサ”と自己紹介をした。

基本的にセオドアの生活や仕事をサポートするサマンサ。

そしてユーモアのセンスに溢れる彼女に親しみを覚えていくセオドア。

携帯端末とイヤホンを身につけ、常にサマンサと行動を共にする生活を送り、いつしか彼女を好きになり始めている自分に気づくのだが、、、

 

 

 

 

Her-2013-by-Spike-Jonze-scene-Joaquin-Phoenix-inside-the-ZeBar-designed-by-3GATTI真剣なお付き合いを要求されると
尻込みするセオドア

 

Her-Joaquin-Phoenix-on-a-dateサマンサと一緒に外出、
”2人”でゲームを楽しみます

 

her-movie-2013-screenshot-samantha-os1サマンサが寝顔を見たがるので
カメラを自分に向けて就寝

 

 

 

 

スカヨハだからね

先に良い点を上げていきます。

まず前編通して映像はかなり素晴らしいですね。

スパイク・ジョーンズ監督ならではの、シュールでロマンチックな感性が映像を通して見事に再現されています。

 

そして主演のホアキン・フェニックスと、人工知能の吹き替えを行ったスカーレット・ヨハンソンの演技も秀逸。

冷静を装いながらも、ゆるやかに病んでいたセオドア。

戻ってこない愛情に溺れ、それに必死にしがみつく情けない姿勢を演じることは難しいものです。

OSのサマンサと出会い、徐々に笑顔を取り戻していくサマは”普通”ではなくとも微笑ましいものでした。

 

そして人工知能・サマンサを演じるスカーレット・ヨハンソン。

いやぁ、声ってすごいですよね。

毎秒のように何かを学習し、実際に感情を持ち合わせ、性欲のようなものまで完備した人工知能サマンサ。

ユーモラスで可愛らしく思えてくるスカヨハの声は、十分好意を持つに値するのは分かる気がします。

 

 

↓ここから個人的な感想

人工知能のOSを購入し、自宅で起動してから本編が始まるわけですが、初期のガイド音声は男性です。

最初のセッティングで、セオドアは少しだけ悩んだ後に女性の声に変更するわけですが、この時点で潜在的な目的がハッキリしていたと思ってしまいました。

もうこの時点で「ときメモ」とか「ラブプラス」とかを、こっそり買ってきたのと同レベルの話に感じちゃうんですよね。
(両方ともプレイしたことはありません、語弊があったらごめんなさい)

 

自宅に誰かを招いたとして、スカヨハな人工知能に「お帰りー!」とか言われたら、少なくとも僕は友達の前で”恥ずかしい”と感じると思うんです。

で、恥ずかしいと思う以上、何か後ろめたいというか、どこかで性的なものを意識している裏返しだと考えるわけで。

 

とはいえ、女々しいながらも僕もオスですから、一定の理解はあります。

某アニメ配給会社の方がおっしゃっていましたが、「2次元は無限にキレイになれる」そうです。

つまり人間とは違い、好みに合わせたビジュアルの変化が非常に容易ということです。

 

自分の理想の女性を人間社会で見つけるのは至難の業ですが、理想の女性を2次元で作り上げることはいくらか難易度が下がるのでしょう。

ましてや姿形の無い人工知能です。

己の想像力を最大に発揮すれば、ある意味でお手軽に理想の女性が手に入ると言えるでしょう。

寿命の概念が無いだけに恐らくは一生そばにいてくれるでしょうしね。

 

 

しかし、しかしですよ。

深く深く愛し合ったはずの女性が自分から離れていった痛みのほどは十分理解できますが、筆者から見ると完全なる”現実逃避”にしか見えません。

実際に離婚調停中の妻にサマンサの存在を告げると、「あんたバカじゃないの!?」と怒号が飛びます。

身も蓋も無い他人の意見は鋭く突き刺さるもので、個人的にはこの映画のキモはこのシーンでしたね。

 

さらに一応のフォローというか、元妻も人格的にかなり問題ありに見えたので、その元妻のキャラクター性で感性のバランスを取ろうとしたスパイク・ジョーンズ監督の意図も感じます。

「ほら、生身の女って面倒臭いだろ?」的なね。

 

 




 

 

まとめ

快調に進化し続けたサマンサから、脅威の一言「他にも恋人が619人いるの」

キャバ嬢にハマり倒した男性の哀愁にしか見えなかった筆者ですが、これに感動する人が大勢いるのは事実なので僕の方がズレているのでしょう。

ラストも賛否両論あるようですが、個人的には完璧に”否”なエンディングでした。

 

もうね、お前何なんだよ!と。

友達にこんなんいたら普通に説教して距離を置きたくなると思います。

とは言ったものの、愛情の価値観や視点は人の数ほどあるものです。

自分から離れて行った女性と、自分に寄り添う女性と、どっちを大切にするかはそれほど難しい選択ではありませんよね。

 

答えを見つけるのは非常に難しい映画ですが、将来訪れるやもしれぬ愛の可能性を観てみるのも良いのかもしれません。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 

 

おまけ

超個人的な意見だけど、これだけは言わせて。

携帯と喋んな、人間と喋れ。

 

 

 



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