2007年/日本
上映時間:115分
監督:堤幸彦
キャスト:中谷美紀/阿部寛/西田敏行/遠藤憲一/アジャコング/ダンテ・カーヴァー/加藤瑠美/名取裕子/佐田真由美/竜雷太/カルーセル麻紀/Mr.オクレ/蛭子能収/松尾スズキ/他
業田良家氏による、”日本一泣ける4コマ”とも言われる漫画を原作にしたドラマ映画。
舞台は大阪の下町、元ヤクザで気難しいヒモ男と、そんな彼を献身的に支える女性が織りなす物語です。
現代の価値観には到底合わない内容ではあります。
しかし社会の底辺で健気に逞しく生きる人々の姿、そんな生き様をコミカルに、シュールに描く秀作だとも思います。
美人だけれども幸薄そうな中谷美紀(失礼か?)、強面でパンチが似合う阿部寛、共にものすごいハマり役。
個性豊かな登場人物は皆キャラクターに合っていて、哀愁漂う世界観に自然に馴染んでいます。
筆者は原作は読んだことないですが、どうやら結構パンチのある作品のようです。
その世界観をそのままに、映画として昇華させる堤監督の手腕は素晴らしいの一言です。
さっくりあらすじ
子供の頃から貧乏で父親は銀行強盗で逮捕されてしまった、そんな不運と共に生きる女、幸江。
そんな彼女は乱暴で酒飲み、働かずギャンブルに明け暮れるヒモ男・イサオに健気に尽くす毎日を送っていた。
そんな幸江を見かねた隣人に離縁を勧められても、パート先の店主にしつこく言い寄られても、幸江はイサオと過ごす毎日に幸せを感じている。
そんなある日、刑務所から出所した幸江の父親が現れるのだが、、、
シュールな笑い、小さな幸せ
個性的な登場人物たち
アジャコングとか、白戸家の次男とか
酒と涙と男と女
昭和の香りがプンプン漂うレトロな世界。
古臭い、狭く汚いアパートでの日常で、ハイスピードカメラを用いて撮影されるちゃぶ台返しをはじめ、全体的に遊び心が詰まった作品です。
原作はより人間臭く、生臭い描写が多いそうなので、映画化にあたりマイルドに仕上げたのは良い選択だったかなと。
ベタなコメディ要素を中心に、安っぽい下町情緒を見せられているようなオープニングですが、実際はかなり練り込まれた構成になっており、非常に上手い演出だなと感じます。
作品のハードルをあらかじめ下げておくというか、「良い映画、感動する映画」として構えさせないところに演出の妙がありますね。
キャスティングはまさに適材適所、この俳優はこーゆー役が似合うなぁと素直に感心してしまいました。
皆個性的でキャラが立ってます。
社会的に貧しい地域で肩を寄せ合い、ひたむきに生活する面々ですが、どの人物も相応に泥臭く、決して善人というわけでもありません。
一応の主人公となるイサオは言わずもがな、ろくに働かずギャンブルと酒で日々を浪費するしょうもない奴です。
そんな彼を健気に支える幸江もパート先の店主の気持ちを知りながらも、華麗にスルーし続け何事も無いように過ごす残酷な一面も見え隠れします。
個人的にはラーメン屋のマスター、遠藤憲一氏がすごく好きでした。
めっちゃ面白い。
全体を通して「良いやつ」とか「嫌なやつ」なんて薄っぺらい価値観でモノを見ていないわけですね。
そんな人々が内々に抱える打算と腹黒さがなんとも生々しく、現実にその辺にありそうな臨場感を生み出します。
最後に流れる「幸福も不幸も関係ない、人生には意味がある」という言葉、名言ですな。
お金持ち、出世頭、美人orイケメンな伴侶などなど、、、そういった”客観的”で”相対的”な幸せを描いているわけではないのでしょう。
もっと”主観的”で”絶対的”な、本人にしか分からない幸せの形、ハッキリしているけどあやふやな、そんな感情を描いているのだと思います。
なので、ぶっちゃけ感動するかどうかは、観る人次第でかなり分かれるところでしょう。
実際そんなに「良い話」なわけではないしね。
まとめ
多角的な価値観や、人が背負う”業”のようなものを描いた映画なので、フォーカスすべき部分が若干ボヤけている感はあります。
注目して観るポイントが人によってバラバラになりそうな作品ですが、純粋にちゃぶ台返しで笑ってもいいし、幸江とイサオの愛に触れて感動するのも良いでしょう。
オススメです。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。