JUNO/ジュノ

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(原題:JUNO)
2007年/アメリカ・カナダ
上映時間:96分
監督:ジェイソン・ライトマン
キャスト:エレン・ペイジ/マイケル・セラ/ジェニファー・ガーナー/ジェイソン・ベイトマン/オリヴィア・サールビー/J・K・シモンズ/アリソン・ジャネイ

 




 

 

映画史に残るといっても過言ではない名作のご紹介。

数々の逸話を持つ本作ですが一番有名な例として、たったの10億円(スターウォーズ/フォースの覚醒は230~240億円くらい)で製作され、2007年にたったの7館だけでの公開でスタートした映画でした。

翌2008年、2400館を超える映画館で上映され、最終的な興行成績は2億ドル以上。

アカデミー脚本賞をはじめ数多くの賞を受賞

さらにサントラもビルボードで1位を獲得

などなど、あらゆる面で認められた数少ない奇跡の作品となりました。

 

脚本を書いたディアブロ・コーディは当時28歳。

元ストリッパーながらジャーナリズムに目覚めて執筆活動を開始した、変わり種です。

自身のブログがプロデューサーの目に留まり抜擢され、本作の脚本が始めての仕事ながらアカデミー脚本賞を獲得。

間違いなく天才ですな。

ついでに超美人です。

 

監督を務めたジェイソン・ライトマンは、ホンダや任天堂のCMを手がけたこともある映像作家さん。

今のところ本作がキャリア最高の評価を受けていますが、後に「マイレージ、マイライフ」で再び注目を集めました。

ちなみに「ゴーストバスターズ」の監督を務めたアイヴァン・ライトマンの息子さんです。

 

映画の骨組みを作る脚本家と、それを映像にする監督。

この二人が織り成す台詞回しが非常に素晴らしく、個性豊かな登場人物たちによる、皮肉と悪態の間に会話が挟まるような独特の感性がとにかく面白い。

人物設計の奥深さ、キャラクターのカッコ良さと可愛らしさは他に類を見ないセンスを感じます。

 

 

さっくりあらすじ

3回の妊娠検査薬は全て陽性。

ジュノは好奇心から同級生であり親友でもあるポーリーと関係を持つが、たった1回のセックスで妊娠してしまう。

大事になる前に中絶するつもりで病院に駆け込むも、中絶反対運動をしている同級生の説得により考え直し、一転して生むことを決意する。

とはいえジュノは16歳。

子育ての能力は無いため里親を探すことになり、父親と義理の母に妊娠を告白することに。

驚きを隠せなかった両親だったが出産を決意したジュノの意思を尊重し、一緒に里親を探すことになる。

 

ミネソタの高級住宅街に住みながらも子宝に恵まれず、里親を希望していたマークとヴァネッサ夫妻。

彼らと無事に契約を結んだジュノだが、次第にお腹が目立ち始め、周囲からは好奇の目で見られることになる。

徐々に苛立ちを募らせ、ポーリーの気遣いも無下にあしらってしまうジュノは、マークとヴァネッサに平穏を求める。

しかし理想の夫婦と思えた二人もまた問題を抱えていて、大人の複雑さと自分の未熟さに傷ついてしまう。

深く考えなかった自分の気持ちと、生まれてくる赤ちゃんのために何が最善なのか、選択を迫られるジュノだが、、、

 

 

 

 

juno_jk_convert_20160112104923微妙にズレてるジュノの両親

 

30juno_convert_20160112104842気持ちがすれ違う
マークとヴァネッサ夫妻

 

Juno-screencap-michael-cera-1692929-1200-692_convert_20160112104900遠回りして掴んだ本当の気持ち
青春ですな。

 

 

 

 

名作をつくる要素

エレン・ペイジ演じるジュノがとにかくユーモラス、魅力的で素敵な女の子です。

世のトレンドに踊らされず、軽くイカれた思考がすごい個性を放っていますね。

妙に大人びていて皮肉屋ではあるものの、内面は年相応の女の子です。

若さゆえの、刹那的なほころびを感じる生き方は独特な魅力に溢れています。

 

彼女の家は決して裕福ではないし、どこの家にもあるであろう些細なケンカは日常茶飯事です。

懐が深く、冷静だけども少しズレてる父親。

折り合いが悪く、口うるさい義母。

この2人との掛け合いはどこかコミカルで、その裏には深い愛情が見え隠れしています。

というか娘は個性的で変わっていますが、親は親でかなりの変人だと思います(笑)

 

 

とはいえ、本作で描かれる両親の姿は愛情溢れる、本当に良い親御さんだと思います。

16歳で子供を産む娘を怒るでもなく、お前の味方だと面と向かって言える親はどれだけいるでしょうか?

まぁ、映画だしと言ってしまえばそれまでですが。

 

対照的に、マークとヴァネッサの家は羨ましくなるような裕福な暮らしをしています。

ジュノが初めて訪れた際は、彼女の車が異物に感じるほどの閑静な住宅街に住む2人。

念願の赤ちゃんを迎え入れる準備を進めますが、どこか漂う影があり、決して順調な幸せを歩んでいるわけではありません。

 

社会的な価値観や幸せの重さなど、ライトマン監督が描く世界は公平というか平等というか。

あらゆる視点でモノを捉えようとする特徴があります。

子供の妊娠、中絶、出産、新生児を迎える前の離婚など、誰もが心当たりがあるであろうヘビーな問題の数々。

それらに対し、肯定も否定もせずに中立な立場での演出を貫く姿勢には好感が持てますね。

 

頭ごなしに否定するわけじゃなく、かといって偽善的に肯定するわけでもなく。

ジュノという年相応に未熟な女の子の等身大を、そのまま描く手腕には誠実ささえ感じます。

 




 

 

まとめ

現実の社会で、16歳の娘が妊娠したらモメにモメて悲観的になりそうなものですよね。

ジュノとその家族のように前向きに個人の意見を尊重し、明るく捉えてあげるのも大事な考え方なのかもしれません。

 

コメディータッチでありながらも、人生に関わる大きな問題を直線的にきっちりと描く。

現実味を感じさせながらも、決して暗い内容にならない脚本の完成度は本当に素晴らしい。

エレン・ペイジやJ・K・シモンズら、演技派俳優の素晴らしい表現をわずか96分で無理なくフィルムに収めた演出が心地良い傑作だと思います。

 

オススメです。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 

おまけ

主演のエレン・ペイジは現在28歳、なにげに「X-men」とかにも出演しててびっくりしましたが美人さんになりました。

2014年に同性愛者であることを告白し、プロチョイス・フェミニスト(女性主導で妊娠中絶する意思や権利を守る運動、複雑なのでググってください)であると語っています。

 

 

 



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