僕の名前はズッキーニ


(原題:Ma vie de courgette)
2016年/スイス・フランス
上映時間:65分
監督:クロード・バラス
キャスト:ガスパール・シュラター/シクスティーヌ・ミュラ/ポーラン・ジャクー/ミシェル・ビュイエルモーズ/ラウル・リベラ/他

 




アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされたストップモーション・アニメ。

ジャンルとしては恐らくコメディ・ドラマに該当するのかな。

 

上から目線で厳しめな批評で有名な「ロッテントマト」で、(一時的に)満足度100%というミラクルを叩き出したことでも有名な本作。

ちなみに参加した製作陣は50人以上!!

かかった期間は2年以上!!

 

ただでさえ製作に時間がかかるストップモーションを選び、65分という長丁場を支えた緻密で忍耐強いクリエイター達の情熱には感嘆の一言。

監督・脚本を務めたクロード・バラス氏は本作が長編デビューとなるようで、今後の活躍に期待が持てる秀作だと思います。

 

 

 

 

さっくりあらすじ

屋根裏部屋で一人、絵を描いて過ごす9歳の少年・ズッキーニ。

パパは若い女性の元へと行ってしまい、それからというものママは毎日のように酒を飲んではズッキーニに厳しく当たるようになっていた。

そんなある日、ママに怒られそうになったズッキーニが事故を起こし、ママはそのまま帰らぬ人になってしまう。

事故を担当した警察官・レイモンはズッキーニを孤児院「フォンテーヌ園」へと連れていくのだが、、、

 

 

 

 

孤独な少年・ズッキーニ

 

孤児院で仲間と出会い

 

”家族”として友情を育む

 

 

 

 

山と谷

65分という短い時間の中で、辛いことや楽しいことを詰め込んだ内容の濃い作品です。

現実に世の中にある虐待やネグレクト、それに伴う子供の痛み、そしてそんな彼らの境遇が真っ直ぐに描かれているんですな。

 

可愛らしい粘土細工の子供達と、独特の雰囲気を醸し出すストップモーションとが噛み合い、実に良い味を出しています。

その割にはそこそこに残酷な演出や表現がキッチリと演出され、ほんわかした映像に反した冷たい現実のギャップにより、児童虐待の問題がより鮮明に、また浮き彫りになります。

 

例えば孤児院で出会う子供たちは、誰もが傷つき心に闇を抱えているわけで。

親が自殺したり逮捕されていたり、薬物中毒者であったり、また子供に対して虐待をしていたり。

年相応に幼稚で明るく振る舞う子供たちの陰にある現実は本当に冷たく、また彼らの傷や痛みが消えるまでには相当の時間がかかるであろうことが容易に想像できます。

この温度差を表現するバランス感覚がすこぶる素晴らしく、誰もが向き合わざるを得ないような、人の心に対する”訴え”を感じますね。

 

 

登場人物(というか人形)はどれも非常に個性的で、極めて表情が豊かです。

嬉しい時や悲しい時、そして思い悩む時など、ちょっとした心の機微まで繊細に表現されているのが印象的。

実写ではなく、アニメだからこそ感じ取れるエモーショナルな感情は本当に胸を打ちますね。

 

物語としては、孤児となった少年が孤児院で仲間と出会い、恋心や絆を育んでいくという流れ。

群像劇のような側面もあり、それぞれの考えや願いも詳細に描かれています。

後が無いというか、行く場所が見当たらない子供たちの考え方や目線は、結構考えさせられるものがありますよ。

 

それらに加え、保護する立場の人間の苦悩や、法的な杓子定規でしか解決を見出せない司法の問題に対しての皮肉もなかなかのもの。

子供だけでは解決できない問題は、大人だけでも解決できない難しさがあります。

大人は決して万能ではないですし、子供も決して無垢なだけでもありません。

過酷な環境にいる子供たちの心の強さ、それを認めてあげる大人の優しさ、そういったものが難解な物事を解決するのだという可能性を感じますね。

 

 




 

 

まとめ

総じて大人も子供も楽しめる、尚且つ世の中で困っている人達の存在も認知できる、極めて意義のある作品です。

 

最近は虐待や児童養護のニュースなども多く見かけるようになりましたが、対岸の火事ではなく現実に存在する物語なわけで。

親は子を選べず、子は親を選べなくとも、誰もが幸せになる権利を持っています。

そんな当たり前が、決して当たり前でない境遇になった子供たちの存在や、彼らの気持ちを知るきっかけになれば良いかなと思います。

 

これは観ておくべき映画として、オススメします。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 

 

おまけ

ちょっと前にね、南青山の児童相談所建設を巡り揉めてた人達がいましたよね。

恵まれない子達による教育水準の低下だとか、治安の悪化だとか、およそ品性を疑いたくなるような発言の数々に開いた口が塞がらなかったものです。

まぁセレブ気取りな連中の中身に常識を期待する方が間違っているのかもしれませんが。

 

児童相談所にいる子供達全員が良い子ばかりとは言いませんが、そういった偏見や差別を減らすためにも見て欲しい作品と言えます。

つーかセレブ気取りな連中はマジで観ろ。

そして悔い改めろ。

 

 

 



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