(原題:The Fault in Our Stars)
2014年/アメリカ
上映時間:126分
監督:ジョシュ・ブーン
キャスト:シャイリーン・ウッドリー/アンセル・エルゴート/ナット・ウルフ/ローラ・ダーン/サム・トラメル/他
癌を患った若者達の青春と恋愛を描いたロマンス・ドラマ。
1200万ドルの製作費で最終興行成績3億ドル越えを記録したミラクルな作品でもあります。
原作は2012年に出版されたベストセラー小説だそうで、世界各国の言語に翻訳され読まれているそうです。
運命に翻弄される純粋さを残す若者達。
そんな中で芽生えた恋心と、冷たい現実。
数々の悲しみを乗り越え、前を向く心の成長。
そういったベタな内容ではあるものの、練りこまれた脚本と俳優陣の熱演は一見の価値ありです。
さっくりあらすじ
甲状腺がんを患い、それが肺にも転移してしまった少女・ヘイゼルは癌患者の会合に行き、骨肉腫で足を失った少年・オーガスタスと出会う。
本を読むことが好きで、あまり他人と関わらなかったヘイゼルはオーガスタスと意気投合し、互いにオススメの本を紹介することに。
ヘイゼルが薦めた本の唐突な結末が気に入らないオーガスタスは、著者のピーター・ヴァン・ホーテンのアシスタントにEメールを通して直接質問をぶつける。
するとヴァン・ホーテンは自分から説明したいと、現在住むオランダ・アムステルダムへと招待するのだった。
体調に危惧を覚えながらも、オーガスタスは支援団体の助力を得て、ヘイゼルを連れてオランダへと向かうのだが、、、
甲状腺がんのヘイゼル
肺にも転移し呼吸が苦しい
そんなヘイゼルに声をかけたオーガスタス
骨肉腫で足が無い
互いに惹かれ合い
徐々に距離を縮めるが、、
0と1
余命が見えている少女と、迫りくる余命を伸ばした少年とが出会い、距離を縮めていく前半。
対して”死”という概念がより現実味を帯び、どう向き合い、どう受け入れていくのかを描いた後半。
どちらも非常にスムーズで内容深く、総じて完成度の高い作品です。
死に至る病を抱え、不幸中の幸いを見つけ前向きに生き抜くような物語は数あれど、その中でも脚本力が頭一つ抜けている印象。
当事者たちの喜怒哀楽もさることながら、その周りにいる人間達が何を想い、どう考えるかにもフォーカスされているあたりにアイデアを感じます。
とある作家が書いた本が唐突に終わることも人の命になぞらえ、その後の物語は誰にも見出せないというメタファーが個人的に響きました。
ただし、若干の哲学性すら思わせるような領域の話ですし、一回の鑑賞でそこまで感じ取れるかどうかは微妙なところですが。
そんな優秀な脚本を彩るキャスティングがまた素敵。
主人公・ヘイゼルを演じるシャイリーン・ウッドリーの好演は本当に素晴らしく、彼女一人だけでも映画が成立していると言っても過言ではありません。
クセのある生意気そうな顔立ちに加え、劇中では不治の病を背負った疎外感を背負った少女として、印象深いキャラクターを極めて自然に演じております。
余命幾ばくもない少女が、嬉しい時は弾けるように喜び、悲しい時は溢れるように泣き、ムカつく時は噴き出るように怒る。
この先長い時間を生きれないからこそ正直に、素直に飛び出る喜怒哀楽の数々は本当に素晴らしい。
苦しい人生の中で出会った幸せを、全てキッチリと噛みしめる姿には思わず口元が緩んでしまうほどです。
対してベイビーことオーガスタスを演じるアンセル・エルゴートですが、こちらはまだ未熟さが残るかな。
足の切断を経て延命に成功した少年ですが、そのせいか物事を斜に構える生意気な小僧にも見えます。
最初から最後まで、ヘイゼルに対する愛情の深さは本物で素晴らしいんですが、ちょっと身振り手振りが過ぎるのかな。
終始自然な演技で魅せるシャイリーン・ウッドリーが秀逸なだけに、それに対を成すレベルに到達していないのが浮き彫りになるんすよね。
全体的に少しわざとらいしいというか、妙に鼻につく印象が拭えませんでした。
そして、物語のキーパーソンとも言える作家ヴァン・ホーテンを演じるウィレム・デフォーはさすがの存在感。
偏屈なクソ野郎ではありますが、極めて倫理的に”死”を語ろうとする姿勢は難解ながらも評価に値するもの。
意味不明なようで筋の通っている彼の考え方は鋭く、ムカつくんだけど微妙に納得させられる深みがあります。
若者のラブストーリーに対する強烈なスパイスとして、素晴らしい演技でした。
まとめ
結構笑えるところも多く、刹那的で爽やかで、悲しくも暖かいラブストーリーです。
彼らの恋路や生きざまに、生きる意味や短い人生の価値を見出せる人もいるでしょう。
大袈裟でなく、それくらい胸を打つ作品だと思いますよ。
涙腺弱い人は要注意、まぁまぁオススメできる良作です。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。
おまけ
原題は「The Fault in Our Stars」で直訳すれば「我々の星の欠陥」、意味としては「この世の欠陥品」となるのでしょう。
健常者として生まれることができず、文字通り体の欠陥を抱えて生きる主人公たちの姿を描いた物語なので、そのまんまな題名ですな。
対して、邦題は正反対とも言える「きっと、星のせいじゃない。」と、原題に対するアンチテーゼのようなものすら感じます。
本作を観れば一目瞭然ですが、久しぶりに素晴らしい邦題だなと思いました。
考えた人の優しい人となりが出てますよ、グッジョブ。