2010年/日本
上映時間:100分
監督:吉田大八
キャスト:菅野美穂/池脇千鶴/小池栄子/江口洋介/畠山紬/加藤虎之助/山本浩司/夏木マリ/宇崎竜童/他
数々のコミック、エッセイ、対談集などでヒットを飛ばす漫画家・西原理恵子の同名漫画を映画化したヒューマン・ドラマ。
最近だと最終回を迎えた「毎日かあさん」などで有名な西原氏ですが、税務署を相手にしたお金の戦いや、理不尽にも感じる冷たい現実を描きながらも、ちょっとした笑いや温かさを届けてくれる稀有な作家だと思います。
社交場と化した田舎の美容院を舞台に、女性ならではの仕事・家庭・男の苦労を描き、生きることに疲れながらも身を寄せ合い、逞しく生きていく物語。
ぶっちゃけコミックの方が面白いですけど、映画の方もコレはコレで良い出来になっております
。
さっくりあらすじ
なおこは離婚し、娘のももと実家の美容院「パーマネント野ばら」へと帰ってきた。
近所のおばちゃんの溜まり場となっている美容院を手伝うなおこ、この町に住む女性たちは自分の苦労や愚痴をこぼし合い、またそれを笑いあっている。
なおこの幼馴染のみっちゃんはフィリピンパブを経営しながらも、浮気性の旦那に金をせびられ続け、もう一人の幼馴染のともちゃんは暴力男のDVを受け続け、その上で捨てられている。
なおこもまた教師のカシマと秘密裏に交際を続けているものの、どこかそっけないカシマの態度に不安を隠せずにいるのだが、、、
なおことカシマ
互いに想いつつも、つかず離れずの2人
親友のみっちゃん
フィリピンパブのオーナー
「パーマネント野ばら」
みんなの憩いの場所
明るく、暖かく、悲しいお話
西原理恵子の作品らしい優しさ、暖かさ、時折見せる鋭い棘など、原作に漂う雰囲気や世界観は良く再現されております。
夏木マリや宇崎竜童など、アクが強い個性を上手いことはめ込んでおり、菅野美穂や小池栄子や江口洋介たちの脇で輝く存在感は素晴らしいの一言に尽きます。
現実的に考えれば登場人物はいずれも異常なキャラの濃さですが、どれもこれも笑えてしまうのはこのほのぼのとした世界観あってのものでしょう。
運や男に恵まれず、苦労を背負い傷だらけの女性たちが笑って過ごす毎日には哀愁と心地よさが同居している不思議な印象を抱きますね。
物語としてはバツイチ出戻り女性と愉快な仲間たちの人生や過去を描いた作品ですが、邦画ならではの間延びは少なめであり、各人物のエピソードもあり起伏に富んだ内容となっております。
この手の映画は無駄に尺が長かったり、抑揚が無かったりで欠伸が出るような作品が多いものでして、そういう意味でも貴重な作品かもしれません。
また主演の菅野美穂をはじめ各俳優たちの演技もまた素晴らしく、地味な地方の物語に華を添えております。
明るく能天気、しかしどこかに影を感じさせるような主人公・なおこ。
苦労と悲しさ、傷だらけの心を抱えながらも人を気遣う優しさを見せる親友・みっちゃん。
なおこを幸せに導くべく厳しさと優しさを持ち合わせ、なおかつ自身の人生も謳歌する母・まさ子。
独自の人生観を持ち、人に迷惑をかけながらも大らかな人柄で憎めないニューお父さん・カズオ。
そして不思議な雰囲気を持ち、言葉少なく微笑むなおこの好きな人・カシマ。
それぞれが個性的で印象深いキャラを持ち、なおかつそれを活かすキャスティングは本当に素晴らしく、本作が持つ魅力はこの俳優陣によるものだと言っても過言ではないでしょう。
最終的には深い悲しみを描いて終わる映画ですが、それを全く感じさせない明るさは非常に感慨深く、小さなコミュニティで生きる人たちの繋がりや心の強さ、止まった時間の中でも前向きに生きようとする人の姿があります。
おおむね原作に近い仕上がりですが、この悲壮感の無い、優しくも悲しい物語は不思議な余韻を残します。
まとめ
原作ファンなので少々甘めな判定になっていますが、味わい深く良い作品だと思います。
売れっ子作家の西原理恵子が原作、先述したように個性溢れる演技派俳優が揃えばそりゃ良作にもなるってもので。
キレイに整った伏線、数々の面白いエピソード、最初から最後まで飽きずに観れる貴重な邦画です。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。