(原題:Misery)
1990年/アメリカ
上映時間:108分
監督:ロブ・ライナー
キャスト:ジェームズ・カーン/キャシー・ベイツ/リチャード・ファーンズワース/フランシス・スタンハーゲン/ローレン・バコール/他
ホラー作家スティーヴン・キングの同名小説の映画化作品。
言わずと知れた古典的ホラーの傑作ですが、先日20代の若者に話をしたところ普通に「知らないっす」と言われ、焦りと憤りを感じた次第でございます。
有名どころだと「タイタニック」や「ミッドナイト・イン・パリ」など、ちょこちょこと脇役で存在感を放つ女優キャシー・ベイツは本作でアカデミー主演女優賞とゴールデングローブ主演女優賞を獲得。
気品と知性が溢れる素晴らしい女優ですが、そんな彼女が本気でキ〇ガイを演じた迫力は今でもなお語り継がれるほどのインパクトを誇ります。
さっくりあらすじ
ロマンス小説「ミザリー・シリーズ」で知られる作家ポール・シェルダンはシリーズ最終作へと向けた新作を書き上げたものの、直後に自動車事故で重傷を負ってしまう。
ポールの1番のファンを自称する女性アニー・ウィルクスに助けられたポールだったが、看病を理由にポールを拘束し、監禁状態になってしまった。
そんな中でシリーズの最終作が発表されるも、イメージした理想の内容と異なるとアニーが騒ぎ始め、徐々に狂気を増す彼女を見てポールは逃げ出そうとするのだが、、、
徐々に
狂気を
増していく
マジ超怖いから
ゾンビも、エイリアンも、悪霊も、猟奇殺人鬼も出てきません、出てくるのはちょびっとワガママな中年女性だけです。
しかし数あるホラー映画のクリーチャー達に負けずとも劣らない、常識が通じない人間ならではの強烈な恐怖を届けてくれます。
原作者スティーヴン・キングがレストランで出会った熱狂的なファンとの会話を元に思いついた物語だそうですが、どのジャンルにも言える話ですが、度を越えたファンというのは実に恐ろしいものです。
ジョン・レノンを射殺したマーク・チャップマン然り、日本でも48人くらいいるアイドルグループの刃傷沙汰なんてのも何度かありましたよね?
「相手の気持ちを考えないのはファンに非ず!」なんてのは常識人の間での話であって、非常識な人間の耳には届かないのが現実というものでしょう。
簡潔に述べれば重症で動けない男性が女性ストーカーに監禁されるお話ですが、言葉の端々に見え隠れするストーカーならではの不気味さや、いつ何をされるか分からない未曽有の恐怖というのが本作の特徴です。
登場人物が少ないだけに、作家のポールとストーカーのアニーを中心に展開されていくわけですが、両者共に表情の作り方が本当に素晴らしい。
親切心の下にある狂気、笑顔の下にある嘘など、映像を通してピンと張り詰める空気感が次々と表現されていきます。
特にアニーを演じるキャシー・ベイツの演技は映画史に残るレベルで素晴らしく、ヒステリックで暴力的な女性が静かになった時の恐怖と言ったらもう、、怒りのスイッチが入った時の恐ろしさはもう言葉になりません。
その上で何事も無かったかのような満面の笑みを浮かべる喜怒哀楽の変化は常人ではついていけず、完全なるサイコパスと向き合わざるを得ない閉塞感が満載です。
本作が出世作となったキャシー・ベイツですが、彼女が握るハンマーの怖さはいつまでも色褪せることなく受け継がれていくことでしょう。
そんなアニーを出し抜こうと、逃げ出すために平静を装って嘘をつくポールを演じるジェームズ・カーンの表情にも注目です。
痛みに耐え、脅迫や拷問に耐え、必死にアニーの気の緩みを待つ緊張感や緊迫感は非常に見応えがありますが、同時にひどく神経を消耗しますよ(汗)
まとめ
非常に闇が深く、単純ながらも興味深いプロット。
それを極めて魅力的に印象付けるキャシー・ベイツの好演。
大きな物語の背景や派手な演出は皆無ですが、まさに名作と呼ぶに相応しい傑作です。
「可愛さ余って憎さ100倍」を地で行く、究極の恐怖をご堪能あれ。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。