フォーン・ブース

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(原題:Phone Booth)
2003年/アメリカ
上映時間:81分
監督:ジョエル・シュマッカー
キャスト:コリン・ファレル/フォレスト・ウィテカー/ラダ・ミッチェル/ケイティ・ホームズ/キーファ・サザーランド/他

 




 

 

81分の上映時間の内、9割は電話ボックスだけでお話が進みます。

主人公が理由も分からず、理不尽な要求や暴力に耐えていく”巻き込まれ型パニックホラー”な展開を描きます。

ちなみに、このような展開を「ソリッドシチュエーション・スリラー」と言います。

 

この手の作品の特徴として、とにかく低予算で作られます。

ほとんどの場合は一ヶ所のロケ地でこと足りるので、映像面での工夫があまり無い(できない)という点で、良くも悪くも脚本に依存する作風になるわけですね。

 

唐突に物語が始まっても全く違和感を感じさせず、観ている側からすれば、

画が変わらないので飽きやすい

飽きさせないためにどんどん物語に変化をつける

テンポ良く話が進む

という感じ。

また役者の演技力も相当に問われるジャンルだとも思います。

 

本作では劇中での時間が現実時間で作られていて、さながら事件の中継を観ているかのような演出が特徴です。

 

 

 

さっくりあらすじ

スチューは敏腕メディア・コンサルタントであり、いかなる困難も口先だけで渡ってきた。

ニューヨークの電話ボックスにて、下心から女優志望のパムにサポートの約束をして、電話を切るとすぐさま電話が鳴る。

咄嗟に電話を取ったスチューに対し、電話の主は電話ボックスから出るなと忠告し、さらにスチューの個人情報を事細かに上げていった。

スチューと過去にいざこざがあった「売れない役者」と名乗る電話の主は、パムやスチューの妻に電話をするよう要求し始める。

一方で、電話を使わせろと娼婦がまくし立ててくる。

最初はあしらっていたが、仲間を連れて来た娼婦の罵声にうんざりし「電話を切る」と伝えるスチュー。

しかし電話主は逆に「電話を切れば、お前を殺す」と告げる。

聞こえてくる弾丸を装填する音、実際に吹き飛ばされるロボットのおもちゃ。

そしてスチューの胸に当てられるレーザーサイト、電話ボックスから出られなくなったスチューだが、、、

 

 

 

 

デキるチャラ男のスチュー
でもコリン・ファレルカッコいいよね。

 

しかし電話ボックス内で誰かに狙われ、、

 

身も心もへし折られる

 

 

 

 

 

先の先を読む心理

話は非常に単純で「電話を切ったら殺す」という要求、それだけ。

電話主の正体も分からないし、そもそも何を言っているのか分からない。

でも本当に殺されそうな雰囲気が伝わってくる緊張感が、映画の空気を引き締めます。

 

大体ね、この手の映画は「こいつバカだねぇー、こーすりゃいいのに」という”アラ”がつきものですが、本作の素晴らしいところは、そういった心理を先読みするところにあります。

可能性という僅かな救いの芽をことごとく潰され、主人公はもちろん、観ている僕らまで絶望感を感じるんです。(でも全くアラが無いわけじゃないよ)

 

 

主人公・スチューを演じるのは演技派であり、アイルランド系イケメンスケベ俳優でもあるコリン・ファレル。

2004年くらいから薬物と下世話なスキャンダルで何かと騒動を起こしていましたが、最近は大人しくしている様子。

 

口八丁で仕事をこなすスチュは結構イヤな奴で、他人の心理操作に長け、鋭い駆け引きでバンバン仕事を取っていきます。

自分に利益をもたらさない人間は無下に扱い、女優志望の女を上手いこと扱って浮気を企み、トラブルは金で解決するという、ステレオタイプの最低な男です。

その最低な男がシャレにならないトラブルに巻き込まれるのが主軸なわけですが、呑気に人のトラブルを眺めている僕らにも、緩んだ気分からだんだんと緊迫していく心理が迫ります。

 

電話ボックスに入ってからは、周りにいる様々な人間がちょっかいを出してきます。

それも全員ウザイんですね。

当然「こっちはそれどころじゃねーんだよ!あっち行けバーロー!!」となるわけですが、そのウザさ加減がいい具合に視聴者の神経を逆撫でしてくるわけです。

で、逆撫でされてイライラしたらもう大丈夫。

この映画の術中にどっぷりハマってます(笑)

 




 

 

まとめ

赤の他人が困った話から、気がつけば自分目線での憤りや恐怖を感じさせられる演出は本当にすごいです。

 

途切れない緊迫した映像を作ったジョエル・シュマッカー監督も、このような秀逸な脚本を書いたラリー・コーエンも本当に良い仕事をしてますね。
(噂によると脚本は一週間でできたとか、、)

劇中最後の展開は賛否両論あるようですし、筆者も「???」となりましたが、「それでも面白かったからまぁいいや」と終われる不思議な感想になりました。

 

同じシチュエーションスリラーでも「SAW」や「CUBE」とは、また異なるベクトルで作られた映画です。

息もつかせぬ80分。

 

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 

おまけ

刑事役を演じたフォレスト・ウィテカーですが、カンヌ国際映画祭男優賞をはじめ、アカデミー賞やゴールデングローブ賞で主演男優賞も獲得している実力派俳優です。

アフリカン・アメリカン俳優として、最も成功している俳優の一人と言っても良いでしょう。

あっ、あと最後の最後に一瞬ジャック・バウアーが出てきます。

 

 

 



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