
(原題:S.W.A.T)
2003年/アメリカ
上映時間:117分
監督:クラーク・ジョンソン
キャスト:コリン・ファレル/サミュエル・L・ジャクソン/ジェレミー・レナー/ミシェル・ロドリゲス/LL・クール・J/ジョシュ・チャールズ/他
1970年代にアメリカで放映されたTVシリーズのリメイク作品。
見たまんまSWATで訓練や任務に励む警察官と、彼らの手から逃れようとする麻薬王との戦いを描いたアクション映画です。
ご存知の方も多いでしょうが、SWATはSpecial Weapons and Tacticsの略称であり、一般的には特殊な武装を用いて凶悪犯罪に対処するエキスパートのことを指します。
映画でよく見かける突入班、それを援護・監視する狙撃犯、そして交渉人からなる部隊であり、20名弱で編成されることが多いんだとか。
通常の捜査にも投入されることが多く”警察組織の軍隊化”と揶揄されることもあるみたいですが、実際に銃撃戦になるのは年間の任務数の1~2%に留まるそうで、当たり前ですがしょっちゅうドンパチやってるわけではないんですな。
さっくりあらすじ
ロサンゼルスで武装グループによる強盗事件が発生し、交渉人による解決を狙う警察は出動したSWAT隊員を要所に配置し、電話での交渉を始める。
しかしSWAT隊員のギャンブルは同僚・ストリートの制止も聞かずに独断で現場へと侵入、射撃許可が出ていないにも関わらず発砲した。
仕方なしに続いたストリートが犯人を制圧するも、結果的に人質となっていた女性も負傷してしまい、2人は命令無視と怪我人を出してしまった責任を問い詰められることになる。
上司の嘆願もありSWATからは外されず武器庫の管理課への異動で済んだものの、ギャンブルはこれを不服として自ら辞めることになった。
ストリートが管理課へ異動し半年が経過した頃、かつてSWAT隊員だったホンドが非難が相次ぐSWATを立て直すために呼び戻され、ホンドを指揮官とする新たな突入班を編成しようとするのだが、、、
ストリート巡査とギャンブル巡査
突入失敗の責任を取ることに
半年後、新たに編成された突入班
”麻薬王の息子”の護送に挑む
荒唐無稽なリアリティ
物語として前半は責任を取らされ、干された巡査を中心に新生SWAT隊員をスカウトし、クセのあるメンバーが厳しい訓練の末に新たな突入班として認められる展開。
対して後半は麻薬王の息子(組織の幹部)を連邦刑務所へと護送する任務をスリリングに描いた展開となっております。
この「凶悪犯罪者を護衛する警察と、彼らを狙い襲ってくる一般市民」というプロットが2013年公開の「藁の楯」に酷似しておりますが、どう見ても本作がオリジナルでしょう。
さすがにパクリとまでは言いませんが、当時あまりの類似っぷりに予告を観たときは目が点になりましたよね、、、(・д・)
満を持してカンヌに出展したまでは良かったものの、残念ながら海外メディアに酷評された「藁の楯」とは異なり、こっちはそれなりの見応えがありますよ。
豪華な俳優陣に加え、二転三転する斬新な脚本、熱いライバル対決など、多少の粗さはあるものの良くまとまっていると思います。
粗いというよりは、突入&狙撃の訓練(演出)を経てSWATに選抜されたのに、目玉となる任務(演出)がまさかの護送という時点で、脚本的に特殊部隊の特性が活かせていないようにも思いますが、そこはご愛敬。
その中で特筆すべきはやはり主人公・ストリートを演じるコリン・ファレルとライバル・ギャンブルを演じるジェレミー・レナーの両名。
個性的なイケメンを誇るコリン・ファレルはとにかくカッコよく、色々とあった割には誠実そうなキャラクター性は演技力だけのものではないでしょう。
タフでセクシーで男臭く、でも爽やかで茶目っ気のある雰囲気は本当に素敵で、普通に羨ましくなってきますね。
対してジェレミー・レナーもコリン・ファレルやサミュエル・L・ジャクソンという大物に負けない強い存在感を誇ります。
最近では「ボーン・レガシー」や「アベンジャーズ」シリーズのホークアイなど、アクション俳優としての活躍が多めですが、本来は善人でも悪人でも、イケメンポジションからお笑い担当まで、違和感無く演じられる器用さが持ち味です。
本作での出演の後、「ハートロッカー」や「ザ・タウン」などで卓越した演技力が認められ、受賞こそなりませんがアカデミー賞やゴールデングローブ賞へのノミネートなど、確実にステップアップを重ねており、これからもまだまだ楽しみな俳優と言えるでしょう。
あとは毎度同じような姉御な強い女性として、ミシェル・ロドリゲスが素敵です、超可愛い。
逆に残念なところは先述したように脚本の粗さ、ひいては全体的に「浅い」ところ。
そもそも事件の過激さから言ってどう見てもSWATの手に負えるレベルではなさそうな気もしますが、その辺りにツッコむか無視できるかで作品の面白さは大きく左右されます。
ついでに言えば悪役側のキャラの掘り下げ方も物足りないし、事件を通した背景の描き方にもちょいと難があります。
非常に個性的なキャスティングと、それを彩るユニークな演出ではありますが、悪役の存在感が薄めなために観終わったあとの爽快感も薄めな印象になってしまうんですね。
面白そうな盛り上がりに対して拍子抜けする結果と言えば分かりやすいでしょうか、この手の映画に必要不可欠なカタルシスに少々欠けてしまうのが何とも悔やまれるところです。
まとめ
現実に存在する有名な警察特殊部隊をテーマにしてはいますが、そこまでリアリティに拘っているわけでもなく、どちらかと言えばエンタメ性の強い作品です。
極端に言えば現実的ではないけれどハリウッドらしくて面白いよ、ということ。
期待し過ぎると微妙だけれども、何気なく観てたら面白かった、そんな映画です。
言うても「最強の正義の味方」的なヒロイズムは十分に魅力的なものですし、個性の強めな俳優陣の演技は一見の価値ありだと思います。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。