(She’s Funny That Way)
2014年/アメリカ
上映時間:93分
監督/脚本:ピーター・ボグダノヴィッチ
キャスト:オーウェン・ウィルソン/イモージェン・プーツ/キャスリン・ハーン/ウィル・フォーテ/リス・エヴァンス/ジェニファー・アニストン/他
どこか懐かしさを感じさせるような、レトロな雰囲気を醸し出すロマンス・コメディ映画。
このような群像劇は30年代~40年代に流行したスクリューボール・コメディと呼ばれるジャンルで、派手さは無くともウィットに富んだユーモアを持ち味とします。
ザ・3枚目俳優オーウェン・ウィルソンと、新鋭女優・イモージェン・プーツが主演を務め、脇を固める役者も実力派が集い独特の味わいがあります。
監督/脚本を務めたのはピーター・ボグダノヴィッチ氏、往年の名監督でいわゆる巨匠だそうです。
世代が違い過ぎて正直あまり知らない監督さんですが、オフ・ブロードウェイの脚本を中心に活躍しているそうで、本作でも舞台を背景にした物語が描かれます。
舞台監督や脚本家、そして俳優の思考回路にどこか生々しさを感じるのはそのためでしょうか?
さっくりあらすじ
かつてのコールガール、現ハリウッド女優のイザベラ・”イジー”・パターソンはインタビューにて、自身の過去を語り始める。。
仕事でニューヨークへとやって来た演出家のアーノルドは宿泊するホテルにコールガールのイザベラを呼び、共に過ごした後、とある提案をする。
「コールガールの仕事を辞め、自分の夢を追うのであれば3万ドル支払う」とし、イザベラにお金を支払い二人は別れた。
約束通りイザベラはコールガールを辞め、自身の夢であった舞台女優を目指すためにオーディションを受けることを決意する。
自身が手掛けるミュージカルのリハーサル兼オーディションのため、妻であり女優であるデルタ、俳優のセス、脚本家のジョシュアと合流し、アーノルドは劇場へと足を運ぶ。
そして配役のオーディションを始めると、イザベラが現れるのだが、、、
偽善的に3万ドルを支援するアーノルド
一晩だけの関係のはずが、、
アーノルドの妻であり、女優のデルタ
精神科医で情緒不安定のジェーン
ジェニファー・アニストンはやはり素敵
古典的な喜劇
老監督が古臭い映画を撮ってみたというか、ハリウッド黄金期に根差すような、良い意味で懐古的な作品です。
ゆるーく流れる作風、古典的なユーモア、お約束風なコミカルさと、どれを取っても現代風なコメディとは異なるものです。
全体的にやや大袈裟な演技と展開の読める脚本は賛否分かれるところですが、この古臭い演出はなんとも心地良く、今では逆に価値ある作品のようにも思います。
ざっくり言ってしまえば年季の入った職人映画と言ったところか。
俳優陣はどの役者も素晴らしい演技でした。
どの俳優もそつなく存在感を発揮しており、バランス良く物語に華を添えています。
特にオーウェン・ウィルソン演じるしょーもないプレイボーイ気取りなおじさんと、ジェニファー・アニストン演じるヒステリックな女医さんはクスリと笑わせてくれます。
この実力派俳優が揃ったことが本作が魅力的になった最大の要因なのは間違いないでしょう。
とはいえ90分ちょいという短い時間で、さらに群像劇という複雑なジャンルで、しっかりと笑わせて、尚且つ深いストーリー性を感じさせる演出は非常に感銘を受けます。
そんなに大した話をテーマにしてる作品ではないんですよね、下半身にだらしない演出家と、それを取り巻く関係者のお話ですもん。
深いメッセージ性も無く、考えさせられるような背景も無い、ただただ苦笑いするだけの映画です。
しかし、要所要所で飛び出すセリフに光るものがあり、非常に印象深く胸に残ります。
「胡桃とリス」の話とか、「自分の夢と居場所」の話とか、誰か疲れていたり困っていたりする人がいたら聞かせてあげたいくらい。
ただそんな良い話も、劇中では女性の口説き文句に使われている始末なので、中身は空っぽなんですがね。。
まとめ
「面白いですか?」と聞かれると答えづらい判定の作品です。
30代の人から見た「ごっつえぇ感じ」みたいな印象で、古き良き面白さがあるんだけれども、現代の若者にはどうかなぁ、、という感じ。
玄人向きというか、上級者向けというか、、個人的な見解ですがウェス・アンダーソン監督作品とかが面白ければ多分大丈夫、ハズレはないでしょう。
繰り返しになりますが、あくまで古典的な演出の映画なので、それを踏まえた上で観るには楽しめると思います。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。