ペントハウス


(原題:Tower Heist)
2011年/アメリカ
上映時間:104分
監督:ブレット・ラトナー
キャスト:ベン・スティラー/エディ・マーフィ/ケイシー・アフレック/アラン・アルダ/マシュー・プロデリック/ティア・レオーニ/他

 




 

 

ニューヨーク・マンハッタンの高級マンションに泥棒に入ろうとする素人集団を描いたクライム・コメディ。

企画の発案者はエディ・マーフィと監督を務めたブレット・ラトナーで、原案としては黒人たちがトランプ・タワーに強盗をするという過激な内容だったそうです。

脚本を書き上げるのに5年の月日を要し、さらに中心だったエディ・マーフィーの降板、脚本の書き直し、キャスティングの決定に伴うエディ・マーフィーの復帰など、完成までに紆余曲折があった模様。

 

主演は「メリーに首ったけ」や「ナイト・ミュージアム」シリーズでお馴染みのベン・スティラー。

ずる賢く財産と権力を得る巨悪を相手に、何の変哲もない一般市民が富豪相手に一発お見舞いする義賊的な作品であり、思いのほか楽しめた秀作です。

 

 

 

 

さっくりあらすじ

マンハッタンにそびえる最高級マンション「ザ・タワー」で支配人を務めるジョシュは住人の信頼も厚く、極めて優秀な男。

最上階のペントハウスに住む投資家・ショーはジョシュを気に入り、また富豪として名を轟かせるショーに対してジョシュも憧れを抱き、従業員の年金の運用を委託していた。

ところがある日、ショーが詐欺容疑で逮捕されたことで、状況は一変する。

従業員であり、友人でもある面々の老後の貯えが紛失したことが明らかになり、怒りに駆られたジョシュはショーに詰め寄る。

しかしショーは投資には失敗もあると全く悪びれる素振りを見せず、怒ったジョシュはペントハウスに飾られたショーの大事な車を壊し、支配人を解雇されてしまうのだが、、、

 

 

 

 

 

ペントハウスに住む億万長者・ショー
そのマンションの支配人・ジョシュ

 

しかし年金を奪われ
幼馴染のチンピラを頼る

 

そして完成した即席泥棒チーム

 

 

 

 

 

”自分の正義”に従う勇気

いわゆる泥棒集団のクライム・コメディ作品に当たりますが、本作を秀作たらしめているものは「巨悪を倒す正義感」に他なりません。

 

いきなり余談で恐縮ですが、格差が広がる今日この頃、貧乏人はより貧乏に、金持ちはより金持ちに。

社会的弱者は夢すら持てずに日々を労働に費やすのが現実というものです。

金融業界が揺らごうが、税金が上がろうが、不祥事を起こそうが、道義的な責任を取らされようが、雇用が増えようが減ろうが、景気の波に揉まれようが。

決して揺らがない「お金持ち」という存在。

 

そんなお金持ちの下でコツコツとおこぼれを頂く仕事をしている筆者は「とりあえず家賃と生活費は払えてるし、、」なんてしょぼい考え方しかできない小心者です。

しかし、本作における映画のキモはまさにそこになるわけです。

 

 

演出としては、素人に毛が生えた程度の強盗集団が無理な計画に挑むだけあって、色々と無茶が出てきます。

本人たちは真面目にやっているだけに笑えるわけですが、お粗末な強盗計画に生まれるシュールな笑いと、それを彩るキャスティングは非常に素晴らしい。

 

絵に描いたような金持ちに騙され、自分だけでなく大事な友人の生活まで脅かす事態を招いた上、仕事もクビになってしまったジョシュ。

お先真っ暗で自殺未遂まで起こした友人の姿を見て一念発起し、ガチで”金持ちの財産を奪う”という計画を思いつきます。

 

これがもうね、本当にグッとくるポイントでして、自分の過失で友のピンチを招き、それを覆すためにとんでもない計画を実行するというプロセスが非常に魅力的です。

さらに言えばジョシュの行動原理は自分のためではなく、あくまで傷つけてしまった友人のためであり、覚悟を決めた彼の顔は完全なる「漢」そのものであります。

 

 

演じるベン・スティラーは本作に限ってはコミカルな演技を封印し、全体的にシリアス寄りな演技。

結果的にシュールな笑いが起きることはあっても狙ったギャグは存在せず、映画を引き締める中心人物として素晴らしい存在感を発揮します。

先述したようにジョシュという男は極めて真面目で優秀であり、そんな彼が覚悟を決めた際の頼もしさは超絶カッコいいっす。

普段とは違う演技に臨んだベン・スティラーの新たな魅力を発見した気分ですな。

 

同様に久しぶりに見たエディ・マーフィーも”小悪党”といった感じで良い味出してます。

2大コメディ俳優が並ぶだけあって、真面目に演技をしていても醸し出される笑いの数々が素晴らしいんですが、あくまで脇役として一歩引いた位置にいるあたりに演技の妙を覚えます。

なにせエディ・マーフィーですからね、若干の物足りなさも感じなくもないですが、コメディに寄せない作りなのでコレはコレでありかと思いますね。

全体を通じて主人公が堅物で真面目なほどに周りのアホっぷりが際立つもので、その温度差に笑いが生まれることをブレット・ラトナー監督は知っているのでしょう。

 

 

作品としては粗くもありますし、ツッコミどころも少なくないでしょう。

ついでに言えば資産運用は完全なる自己責任の世界ですし、信用していた相手が詐欺まがいことをしていたとしても、強盗に入って良い理由にはなりません。

んなこた知ってる、でも人を踏み台にして儲けた人間に一矢報いるのって素敵よねー♪

僕が性格悪いだけかもしれませんが。。

 

 




 

 

 

まとめ

観終わった感想としては「お前すげーよ!グッジョブ!」とサムズアップしたい衝動に駆られます。

公開当時はいまいちヒットした感じはしませんでしたが、やはりベン・スティラー出演作品に駄作無し。

脇を固めるキャスティングにも隙がなく面白いっすよ。

 

地べたを這いつくばって擦り傷だらけの一般人と、傷ひとつ負わず勝ち組人生を謳歌するお金持ち。

それはまるでチェスの如し、キングを取られる覚悟でクイーンを取りに行く様は本当に”男らしい”ものであり、”肉を切らせて骨を断つ”戦い方は人を引き付ける魅力に溢れています。

 

結果的に勝利をもぎ取ったとまでは言えずカタルシスには欠けますが、逆に言えば弱者が強者を打ち倒す社会など存在しないんでしょうね。

それでも致命的な傷を負わせた気合と執念と賢さは見習うものがあります、まぁ犯罪だけどね

 

やって良いか悪いかは別にして、これほどの漢気を持って生きていきたいものですなぁ。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



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