(原題:Up)
2009年/アメリカ
上映時間:96分
監督:ピート・ドクター/ボブ・ピーターソン
キャスト:エドワード・アズナー/クリストファー・プラマー/ジョーダン・ナガイ/ボブ・ピーターソン/デルロイ・リンドー/ジェローム・ランフト/他
皆さまご存じディズニー・ピクサー製作の長編アニメーション。
ゴールデン・グローブ賞を獲得しております。
3Dグラフィックによる美しい世界の造形、くくりつけた風船で家が空を舞う素敵な世界観、改めてピクサーの映像技術の高さを感じられる映画です。
実写のヒューマンドラマでは偏屈な老人に焦点を当てたドラマは少なくないですが、アニメ作品でじいちゃんを主役に据えるのは結構珍しいのではないでしょうか?
そんな秀逸な映像表現も見どころですが、本当に観て欲しいのは「愛情の価値」というところ。
特に序盤、少年少女が夫婦になり、妻が亡くなるまでの過程は号泣もの。
「セカンドパートナー」とかいう不倫が巷で流行ってきているそうですが、自分が好きになった人と添い遂げられる幸せ、というものを今一度確認する良い機会になるかもしれません。
子供も大人も、楽しく何かを得られる素敵な映画です。
さっくりあらすじ
冒険家チャールズ・マンツに憧れていた少年カールは同じく冒険好きのエリーと出会い、結婚し、二人が出会った空き家に住み始めた。
仲睦まじく幸せに過ごしていた二人は、いつかマンツが消息を絶ったとされる”パラダイス・フォール”に旅することを約束するも、妻エリーは病に倒れ、帰らぬ人となる。
街の開発計画が進み、近隣に高層ビルが立ち並ぶ中で独りぼっちになってしまったカールは、エリーと過ごした家を守るために頑なに立ち退きを拒否し続けていた。
しかしある日、立ち退きの交渉相手にケガをさせてしまい、いよいよ立ち退きせざるを得ない状況になってしまう。
そして立ち退きの前夜、エリーの残した冒険ブックを読み決心したカールは莫大な数の風船を家に括り付け、家と一緒にパラダイス・フォールへと向かうのだが、、、
冒険大好き
空き家で出会った二人
子宝には恵まれず
でも幸せな時間を過ごす
風船で家を浮かすカールじいさん
亡き妻の思い出と共に旅に出る
笑える×泣ける=感動
「まぁ、ディズニー映画だしなぁ、、」とか、いつもいつも思うのですが、予想通りの展開ながらも予想以上の感動を毎回感じるわけです。
分かっていても感銘を受ける作品と言うものはやはり希少なわけで、その都度ディズニー・ピクサーの素晴らしさにため息が漏れます。
物語としては、割と序盤で家は空を飛び、割とあっさりと目的地近辺に到着するという構成的に珍しいつくり。
簡単に言えば感動する場面は序盤である程度片づけて、そこからはじいさんのアドベンチャーが描かれます。
つまり試練的な冒険譚が中心となっているので、邦題は正直あまりしっくりきません。
鑑賞前の印象と鑑賞中の印象で違和感を感じたのはその辺が原因でしょうか。
ついでに言えば妻を亡くした老人が思い出を胸に挫折した夢を追いかける話だけに、カールじいさんとエリーとの思い出をもう少し掘り下げて欲しかったですね。
そういう意味では冒険譚としては良くできていても、ドラマ性はやや物足りなさを感じます。
あとカールじいさんの挙動も少し、、飛び立った家が色々と衝突したり、広大な大自然で粗大ごみをガンガン捨てるのもちょっとだけ気になります。
なまじ美しい映像だけに、残念なリアリティを感じさせますね。
特筆すべきはやはり映像の美しさでしょうか。
カールじいさんや妻のエリー、犬にアホウドリに少年など、どれもこれも個性的で味のある造形です。
家に風船を括り付け、空を飛んでいるシーンは圧巻の一言。
カラフルにつけられた無数の風船により、浮かび上がった家からの展望は本当に美しく、何とも幻想的で素晴らしい演出になっております。
現実的な社会背景からファンタジーの世界に旅立つように、物語はここから一気に羽ばたいていくわけです。
途中で出会う少年は賛否分かれるみたいですね。
確かにギャーギャーうるさいし、ウザいし、いなくても良かった気がしないでもないです。
でも子供ってうるさくてウザいもんだし、そこに可愛さを感じるくらいの心の広さはあっても良いかなとも感じます。
まとめ
基本的にはやはり子供向けな作品です。
序盤の奥さんとの思い出は悲しくも美しく、伴侶ある大人が感動するのは間違いないと思います。
が、そこから先は子供の胸をくすぐるファンタジー・アドベンチャーに様変わりするので、その温度差を容認できるかどうかで評価が変わりそうです。
カールじいさんが見た”夢”を皆で分かち合ってみましょう。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。