私は貝になりたい


2008年/日本
上映時間:139分
監督:福澤克雄
キャスト:中居正広/仲間由紀恵/加藤翼/柴本幸/西村雅彦/平田満/マギー/武田鉄矢/他

 




 

 

元陸軍中尉・加藤哲太郎さんの遺言を元に作られた、でもフィクションな戦時ドラマ映画。

1958年にTVドラマとして放映され、翌1959年に劇場版が公開、1994年には再びドラマ化し、2008年に映画化と、何気に4作目となる作品です。

第二次世界大戦を背景に、戦争に参加し、戦犯として死刑を宣告された男性、つまり”戦争”に人生を引き裂かれた一般庶民の悲しい物語ですな。

個人的な印象ですが、戦争が起きる「理由」はあるとして、戦争を起こす「意味」は無いことを知らしめるための映画だと解釈しております。

 

 

 

さっくりあらすじ

昭和19年、妻と子供に恵まれ、土佐の海沿いの町で理髪店を営む清水豊松の元へ赤紙が届いた。

少し脚が不自由な豊松だったが、近所の人々の「おめでとう!」の祝福を受け召集され、二等兵として本土防衛の舞台に配属される。

ある日、撃墜されたB29戦闘機のパイロットを捕縛し、上官である矢野中将の「しかるべき処置」との命を受け、豊松と同僚の滝田が米兵の処刑を執行することになる。

気弱な豊松は人を殺す恐怖に駆られ、銃剣を突き立てるも腕をかすっただけで終わり、磔にされた米兵は既に息を引き取っていた。

そして終戦後、豊松は土佐へ戻り店を再開し、二人目の子宝にも恵まれる。

しかし突如として特殊警察が現れ、戦時中に捕虜を殺害した容疑を宣告し逮捕されてしまうのだが、、、

 

 

 

 

理髪店を営む清水豊松
妻と子供に恵まれ幸せな日々を送る

 

しかし戦後
一転して戦犯として逮捕されることに

 

途方に暮れる妻・房江
しかし夫を救うために動き出す

 

 

 

 

知るべきこと

18歳~19歳を対象にした調査でおよそ14%が終戦記念日を知らないと答えたとニュースで話題になったのを目にしまして、アナウンサーや「有識者」とかいう人たちが一様に渋い顔をしていたのが印象的でした。

戦争のことを知らない世代が増えていくのは自然な流れですし、個人的には知らないことが悪いことだとは思わないスタンスですが、一通り小中高までを卒業した上で身についていないのはチョイと問題ありな気がしますね。

過去の凄惨な出来事を言い伝えるのも大事ですが、歴史や日本史として、ひとつの学問として覚えられないのは単純な学力低下とも取れる気がしますしね。

 

話が逸れましたが、物語としては足に障害を抱え、駆け落ちした挙句にやっと床屋を開業したら徴兵され、戦後やっと家に帰ったら逮捕され刑務所に送られ、、という戦争に人生を狂わされた男の可哀そうなお話。

戦争というカオスな非日常を背景に、絶対的な権限を持つ上官の命令、捕虜に対する待遇や処置、軍国主義から民主主義への移り変わりや戦争裁判など、非常に複雑で重たいテーマがあります。

 

 

しかし、そんな深く重たいテーマとは対照的に「汚れ」を全く感じさせないような、むしろ清潔感すら感じてしまうような演出の方には大いに疑問が残ります。

画面に映し出されるのは今どきの俳優・女優であり、戦時の苦労や疲労感など、終わりの見えない庶民への負担や戦争がもたらす弊害などが伝わってこないのが作品として最も残念なところ。

 

小汚く泥臭い演出ができないのであれば、あまり有名でない俳優を起用すべきですし、国民的アイドルや女優をキャスティングするのであれば、ドン引きするくらいのリアルな演出が欲しかったかなと。

総じて「戦争を知らない世代が作った戦争の話」といった感じで、過去に作られた戦争をテーマにした作品を上回ることはないでしょう。

 

 

とはいえ、脚本的には十分に観れる内容であり、終戦記念日を知らない世代に対し、戦争が日本に何をもたらしたのかを知るには良い映画と言えるでしょう。

映画的にいらないシーンや演出が散見しますが、それも含めて今風なアレンジなのかもしれません。

いち作品として、このようなテーマを扱うには製作陣の力量不足が否めませんが、演じる俳優陣は決して悪くないと思います。

それだけに、そういった俳優陣を活かせるほどの演出に恵まれなかったのが残念ですな。

 

 




 

 

まとめ

非常に重く、鬱っぽく、全くもって楽しい映画ではないので個人的なオススメはないです。

戦争が引き起こした理不尽さに振り回される一般庶民の姿がもたらす心の重し、孤独な貝になってしまいたいほどの苦しみ、そういった戦後の悲しさをダイレクトに描いたのは印象的でした。

2度と戦争を起こしてはならないのは当たり前ですが、”何故”起こしてはならないのか?

そういった問いかけに対する、れっきとした一つの答えだと思います。

 

特に若い世代に観て欲しいですね。

ぜひ一度ご感触くださいませ。



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