(原題:Hector and the Search for Happiness)
2014年/イギリス
上映時間/119分
監督:ピーター・チェルソム
キャスト:サイモン・ペグ/ロザムンド・パイク/トニ・コレット/ステラン・ステルスガルド/ジャン・レノ/クリストファー・プラマー/他
「幸せとは何ぞや?」を追い求めたイギリスのコメディ。
フランスの精神科医が書いた小説が原作だとか。
イーサン・ハントを影で支えるエージェントの地位を不動のものにしたサイモン・ペグが主演を務めており、脇役が多くも息の長い経験値を存分に発揮しております。
そんなペグ氏を支えるのは「ゴーン・ガール」のロザムンド・パイクや「マイ・ベスト・フレンド」のトニ・コレット、更にいぶし銀俳優のステラン・ステルスガルドやジャン・レノなどなど。
いずれの俳優も申し分の無い実力・実績を誇り、小粒な作品ではありますが十二分に濃い内容で魅せてくれます。
さっくりあらすじ
精神科医のヘクターは恋人のクララの整然とした生活に満足し、快適な毎日を送っていた。
診療所を訪れる馴染みの患者達は、誰もが自分は不幸であると主張し、彼らの悩みに触れる内にヘクター自身も本当の幸せとは何かと疑問を持つようになる。
ある日、霊感を失くした霊能者の占いにより、ヘクターは旅に出るだろうとの予言を受け取る。
医者として、患者を幸せに導けていないヘクターは「幸せ」について調べるために、予言通りに旅に出ることを決意するのだが、、、
幸せとは何ぞや
思い悩む精神科医・ヘクター
不満を胸に隠しつつ
献身的に彼を支えるクララ
旅先にて、様々な価値観に触れ
幸せを定義していく
多彩な幸せ
患者の不幸体質に飽き飽きした精神科医が、幸せを求めて旅に出るという、言ってみれば中年男性のロードムービーです。
先述したように、登場人物の誰もが味のあるキャラクターとして描かれ、また度々描かれる道中のイラストなども含め、極めて上手に演出された作品だと思います。
各国を旅する内容だけに、それぞれのエピソードがブツ切りになりやすいものですが、たかだかペン1本でその課題をクリアした脚本はかなりのアイデア賞。
物語の繋がりが無理なくスムーズになり、非常にテンポ良く進んでいきますね。
精神科医・ヘクターを演じるサイモン・ペグも、その彼女・クララを演じるロザムンド・パイクも、共に持ち味を発揮した素晴らしい演技力。
充実していそうに見えるけれども、どこか空白を感じさせる2人の生活感。
意思疎通ができている様で、どこかズレが生じている2人の価値観。
非常に地味でネガティブな背景ながらも、それを面白おかしく演出できる製作陣の仕事ぶりに脱帽ですな。
また互いに想いながらもすれ違い、喧嘩を重ねながらも寄り添っていく2人の姿には、誰もがほっこりできるであろう魅力に溢れています。
この辺りは演者の技量が大きいのかな、この実力派俳優の演技の数々は必見ですよ。
さて、幸せとは何でしょうか?
映画のテーマとなっているだけあって、本作では様々なシチュエーションと、それに伴う幸福の形を端的に描いています。
本作を観て思うのは、結局は水の如く、幸せには決まった形は無いということ。
色々な場所を巡り、多種多様な人と出会い、自分の過去と向き合ったヘクターが見出した幸せは実にシンプルで、またありきたりなものです。
「幸せを探して、愛を探して、君に戻る旅」と、考えた人の正気を疑いたくなるほどにネタバレ全開なキャッチフレーズがついていましたが、皮肉にも幸せの形の一端を表しているようにも思います。
つまりは幸せとは探しに行くようなものではなく、目を凝らせば見えるものなのかもしれません。
ヘクターが各地を回り、メモに残した”幸せの条件”は笑える内容ではありますが、考えるまでも無い程度の内容が殆どです。
「そりゃそうでしょうよ」と言いたくなるほどに単純明快なものであり、もしその幸せが見えないのであれば、幸不幸の問題よりかは、目が曇っているストレス環境に問題があるということですな。
日々の仕事に、家事に、説明できない倦怠感に追われ、ストレスにまみれている日本の社会。
そんな現実に疲れた人こそ、観るべき映画だと思います。
まとめ
言うてもね、ちょっと海外を旅したくらいで前向きになれるなら、誰も苦労はしないよね。
非現実から戻り、現実で暮らし始めればまた似たようなことで思い悩むのが人生でしょう。
その度に、自分が培った人生の糧を思い出し、同じ高さの壁に負けないように過ごすことこそが、幸せな人生を歩む第一歩かなーと思っています。
大幅に脱線しましたが、結構良い作品だと思います。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。