(原題:1001grams)
2014年/ノルウェー/ドイツ/フランス
上映時間:91分
監督/脚本:ベント・ハーメル
キャスト:アーネ・ダール・トルプ/ロラン・ストッケル/スタイン・ヴィンゲ/他
早いもので、もう2年になりますか。
2014年に東京国際映画祭に招いてもらえる機会がありまして、普段は動かざること山の如き筆者ですが、せっかくだからと初めて六本木ヒルズへと出かけた際に鑑賞した映画です。
日本での知名度は決して高いとは言えませんが、ベント・ハーメル監督はノルウェーを代表する映画監督であり、2015年の東京国際映画祭ではコンペティション部門の審査員を務めていたりもします。
いわゆるミニシネマ系の作品であり、派手さは皆無で玄人向けな映画ですが、ジワジワとやってくる作品の”良さ”は一度観てみて欲しいなぁと思います。
さっくりあらすじ
ノルウェーの国立計量研究所に勤めるマリエは計測、計量の専門家。
あらゆるものを”測る”ことに長けているものの、結婚生活は上手くいかずに離婚の手続きの最中だった。
そんなある日、”重さ”の基準となる「1キログラム原器」を運び、1キログラムを定義するための国際セミナーに出席することになるのだが、、、
科学者のマリエ
笑顔の無い灰色の生活を送る
マリエの愛車
Buddy Electricというメーカーらしい
”キログラム原器”
こんなもんあるんだね
アンニュイな眠気
北欧映画ならではの静かな、ゆったりとした作風は派手さやメリハリに欠け、人によってはとても眠くなるテンポになります。
「深夜TVをつけてたら面白かった」ような作品であり、薄味な内容は人を選ぶ作品ではあるでしょう。
主人公の女性・マリエは長さや重さを測る科学者として働いていますが、離婚調停中でもあり、彼女の生活には”笑顔”がありません。
全体的に青みがかった映像で構成されたノルウェーの風景は彼女の心そのものであり、無表情な彼女の顔は冷たい風のようにも見えます。
日を追う毎に(元亭主が持っていくので)減っていく家具の数々や、病気で余命が見えてきた父親の姿。
自分は仕事にのめり込んでいるだけのつもりでも、大事な心の欠片は時間と共に無くなっていくわけですな。
モノを測るエキスパートではあれ、人生や幸せの測り方は分からないというところが物語の軸になります。
しかし代理としてパリへと向かうと映像は一変、色彩鮮やかな、なんとも暖かそうな風景が広がります。
ストーリー自体は特別変わったものではなく、結局は男女の話になるわけですが、少しずつほころんでいくマリエの表情がとても印象的でした。
この独自の世界観と心の描写は美しく、新鮮です。
最後の最後で生々しい下ネタが入るのは賛否分かれそうですがね。
ここは軽く笑っておきましょう。
まとめ
杓子定規な生き方しかできない人と、常に形を変え続ける幸せの価値。
深層心理を表しているかのような映像表現と、北欧特有のまったりした表現が合わさった作品です。
近年のハリウッド映画とは対照的な作品であり、特に前半は眠くなること請け合いですが、この独特の風味を味わってみるのも良いでしょう。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。