(原題:Patriots Day)
2016年/アメリカ
上映時間:133分
監督:ピーター・バーグ
キャスト:マーク・ウォールバーグ/ケヴィン・ベーコン/ジョン・グッドマン/J・K・シモンズ/ミシェル・モナハン/アレックス・ウルフ/他
2013年に起きたボストン・マラソン爆破テロ事件と、解決に向け奔走した警官たちの姿を描いたサスペンス・ドラマ。
正確には2013年4月15日、マサチューセッツ州ボストンで開催されたマラソン大会のゴール付近で2度の爆発が発生。
アメリカ3大マラソンにも数えられる規模の大会でもあり、国内外から多数のランナーが集まる中で起きた事件により3名が死亡、282人が負傷したと公式発表されております。
爆破により即マラソン大会は中止され、一般人の避難後に公共の交通手段の停止と大規模な区画の封鎖、さらにはボストン上空の飛行禁止の措置まで取られます。
その後FBIがテロ事件として捜査を始め、地元警察の協力もありわずか102時間での犯人逮捕に至ると。
その一連の流れを、事件に関わった数々の人物の視点を通した群像劇とも言えます。
さっくりあらすじ
膝の痛みに悩まされているボストン警察のトミーはボストンマラソンの交通誘導係として、ゴール付近の場所に配属される。
午前10時を迎えマラソン大会がスタート、優勝候補のランナーに続き続々と先頭集団がゴールし、大会に参加していた警察署長も無事ゴールした。
そんな最中にトミーのいた場所の近くで大爆発が起き、続いて離れた場所でも爆発音が轟いた。
トミーはすぐに無線で爆発の旨を伝え、医療班の手配をした上で自身も負傷者の捜索に乗り出した。
2度の爆発に続き、まだ爆発があるのかどうかも判断できない中で、FBIが到着し事件の分析を始めるのだが、、、
ボストンマラソン準備中
毎年4月の第3月曜日
「愛国者の日」に開催される
ゴール寸前
2度の爆発により多数の死傷者が出てしまう
事件解決の鍵となった中国人男性
マジ漢
迅速
「バーニング・オーシャン」でもタッグを組んだピーター・バーグ×マーク・ウォールバーグのコンビですが、いつもと違ってエンタメ性を重視せずにドキュメンタリータッチな内容となっております。
良く言えば事実に基づいた丁寧な作りだと言えますし、悪く言えば地味な内容に終始するとも言えるでしょう。
ただし、記憶に新しい凄惨なテロ事件を扱っているだけに、ここにエンタメ性を求める人の気が知れないとは思いますが。
事件に関係した様々な人物を通した群像劇であり、主役がボヤけて分かりづらい作品だとの指摘がありますが、どこを観てるんだと。
本作における主役とは、テロの被害に遭った方々、捜査に加わった方々、事件に憤った方々、すなわち「アメリカ人」に他なりません。
テロという脅威や恐怖をイメージできない人ほど、嫌味な言い方をすれば平和な日和見主義者になるほど響きづらい映画なのかなと思いますね。
実際に世界中でテロが起きてる現実があるにも関わらず、映像を見て「うわー、こわーい」で終わっちゃうような人の心に響くわけがないでしょ。
9.11のテロ事件現場(グラウンド・ゼロ)を間近で見た筆者ですが、あの恐怖と悲しみは恐らく一生忘れません。
話しが逸れたので戻します。
本作の特徴として、ニュースでは語られない事件解決への道のりが描かれているのが最も注目すべきところ。
群像劇と言いましたが、これは被害者や警察関係の人だけではなく、実際にテロを起こした犯人サイドの状況も詳しく描かれます。
実際にテロに臨む兄弟がどういった思想で、どういったテンションで、どう事件を引き起こし、そしてどう逃げようとしたのか。
過激派の思想はいざ映画を観ても知る由もないですが、テロリストという存在の異常さや狂気が垣間見えますね。
また容疑者を絞るための努力も見逃せません。
ウンザリするほどの情報を細かに分析する警察やFBI、互いに協力し合いテロリストに対し怒りと焦燥を募らせていく姿はなかなかに感動もの。
一応の主演であるマーク・ウォールバーグを特別目立たせるでもなく、あくまでいち警官の枠に抑え、組織として一丸となる姿勢に力強さを感じますね。
そして特筆すべきは、キーパーソンとなる中国人男性。
最初こそ何の脈絡もなく「誰やコレ?」状態でしたが、後々に犯人逮捕に繋がる重要な人物と言うことが判明していきます。
その際の姿が非常に勇敢で素晴らしく、見た目こそ冴えないもやしっ子という感じですが、その内に秘めた咄嗟の勇気は称賛ものではないでしょうか。
同じシチュエーションになったと仮定して、あそこまで強い決意を持って行動を起こせる気が全くしないですもんね。
マイナスな点としてはちょっと「愛情」の押しが強かったことと、終盤に向けて足早になってしまったことでしょうか。
犯人の逃走は描かれてもその後の展開は微妙にボカしてある印象ですし、まぁ映画にできない部分も少なからずあるとは思うのですが、収束しきっていない感も否めません。
ボストン市民が一致団結し、テロには屈しないという姿勢は大いに感動を呼ぶものですが、その源が「愛」だと言われるのもちょっと違和感が拭えません。
こういった節々にちょっとした「やっつけ感」が感じられ、こういった面が「アメリカ万歳」なテイストに感じちゃうんですよね。
ちょいともったいない。
まとめ
テロに遭った方々、並びにテロに遭った国が作った映画なので、視点が偏っていることはあると思います。
しかし実際に人が亡くなり、手足を失った犠牲者が多数出てしまった悲しい事件として、観るべき映画のひとつじゃないかと。
事件解決までの迅速さ、また事件を映画化する迅速さは「テロには負けないぞ!」という鼓舞のようにも感じます。
失った悲しさを忘れない強さ、失う怖さに負けない強さ、大切な考え方の一つだと思いませんか?
面白いかどうかで判断するような作品ではないですが、一度は観て欲しい作品ですな。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。