(原題:Alian:Covenant)
2017年/アメリカ・イギリス
上映時間:122分
監督:リドリー・スコット
キャスト:マイケル・ファスベンダー/キャサリン・ウォーターストン/ビリー・クラダップ/ダニー・マクブライド/デミアン・ビチル/他
前作はコチラ。
前作に引き続き「エイリアン」の前日譚を描いた作品であり、前作から15年後の物語となるSFパニック・スリラー。
(エイリアンはさらに18年後)
キャッチコピー「絶望の産声」と称する通り、長きに渡ったエイリアンという存在の誕生秘話がとうとう解き明かされます。
続編やエピソード・ゼロなど、最近は作品の起源を紐解いていく作品が多い気がしますね。
あまりにも有名になり過ぎたコンテンツは、先を描くよりも過去を描く方が面白いと判断してのことでしょうか?
個人的にはどんな有名な作品でも「1回コケたら殆ど終わり」だと思っていますので、無理にコンテンツを掘り返すよりも新たなキャラクターを描いて欲しいものですが。
さっくりあらすじ
2000人の人員と1000人の胎児を乗せ、新天地に向け宇宙空間を進むコヴェナント号はトラブルに見舞われ、乗組員は冷凍睡眠から覚めてしまう。
数名の死亡者が出てしまうが、何とか落ち着きを取り戻すと船は近くの惑星からの信号をキャッチし、そこは人が住める環境だということが判明する。
亡くなった船長の代わりに乗組員を率いるクリスとアンドロイドのウォルターたちは、地球と似た環境を持つ謎の惑星の調査を始めるのだが、、、
人類移住計画の責任者・ジャネット
おそらく主人公
新型アンドロイド・ウォルター
コヴェナント号をサポートする
そしていよいよご対面
エイリアンの起源に迫る
作り手の勘違い
「面白い映画」を作る監督。
「自分が面白いと思う映画」を作る監督。
似て非なる監督の存在意義であり、理想は「自分が面白いと思う作品で観客の支持を得る」なのは言うまでもないでしょう。
こういった歴史の長いシリーズには古参ファンが付き物で、彼らの納得を得ながらも新たなファンの獲得というのは現実には難しいのは理解できます。
とはいえ、新旧ファンが熱中するほどに完成度が高いのかと問われれば、本作は全く及第点には届いていないと言わざるを得ません。
まずリプリーを意識したであろう主人公のチョイスからしてズレてますが、その他のツッコミどころも到底見逃せません。
映像技術が進化したにも関わらず、未知の惑星でマスクもせずに歩き回るクルー達。
↓
その結果、未知の胞子を吸い込み体調悪化。
何かに感染したクルーから未知の生物が生まれパニック。
↓
錯乱して銃を乱射し、可燃物に引火して爆発。
エイリアンの卵を覗き込む。
↓
フェイスハガーがコンニチワ。
などなど、何て言うかね、典型的でありきたりな演出の数々に苦笑いしかできないんですよね。
あまりにも鈍感でおバカなクルー達の行動を見ていると、ドキドキハラハラより先にくだらなく見えてくるんですよね。
もう本当にナチュラルにバカ、シンプルにバカ。
作品の軸がズレているにも関わらず、原点回帰と言わんばかりに取ってつけたかのような演出は白けるばかりなんですな。
未知の驚異から逃げまどい、知恵と勇気を振り絞り撃退していった1作目。
その1作目を遥かに凌駕する脅威に見舞われながらも、派手なガンアクションと演出で撃退した2作目。
極めて評価の高い2つの映画を超える気概が全く感じられないわけで、何よりも物語の中心を「人間」から「アンドロイド」に変えてしまったのが最も残念なところ。
サバイバル・スリラーとしても、アクション・スリラーとしても成功を収めたエイリアンですが、その根源となるのは”人間の粘り強さ”に他ならないでしょう。
どこか不気味なアンドロイドという存在をシリーズの大事な要素として使うことに異論は無いですが、中心にしちゃダメでしょ。
ましてアンドロイドがエイリアンを量産して人類絶滅を考えるとか、アンドロイドを作った会社は訴訟どころの騒ぎじゃないですよね。
「自我に目覚めたアンドロイドに手のひらで踊らされるアホな人間たち」という構図も、ここまで露骨だと少々不快です。
唯一良かったのは2人のアンドロイドを演じ分けるマイケル・ファスベンダーの演技力くらいかな。
ただでさえ感情の機微に乏しいアンドロイドですが、1人は創造主を目指す野心に溢れ、もう1人は保守的でクルーの安全を守り、この演じ分けはかなり難しかったであろうと思います。
ちょっとした所作や表情の機微など、実に繊細な演技が堪能できます。
本当に良かったのはこれくらい。
まとめ
「もうエイリアンはいいかな」と思わせてしまうほどに残念な仕上がりです。
もちろん映像表現は素晴らしいものですし、退屈な作品だとまでは言いませんが、これだったら本気でB級映画を狙った方が面白いんじゃないかな。
そもそもシリーズの前日単を3部作で作る意味があったのかさえ疑問ではありますが、作品はあくまで監督のものであり、気のすむまで好きにやったらいいんじゃないかと。
このノリで続くようであれば、今度こそ起源ではなく終焉に近づくものだとは思いますが。
到底オススメできる映画ではありませんが、シリーズを観た人であればせっかくだから観ても損は無いでしょう。
良ければ一度ご鑑賞くださいませ。