(原題:Blow Dry)
2001年:アメリカ/イギリス/ドイツ
上映時間:91分
監督:パディ・ブレスナック
キャスト:アラン・リックマン/ナターシャ・リチャードソン/ジョシュ・ハートネット/レイチェル・グリフィス/レイチェル・リー・クック/ビル・ナイ/ヒュー・ボネヴィル/ウォーレン・クラーク/他
また1人、稀有な才能の持ち主が亡くなってしまいましたので、追悼の意をこめて。
2016年1月14日、イギリス人俳優のアラン・リックマンさんがお亡くなりになりました。
享年69歳、癌だったそうです。
「ダイ・ハード」をはじめ「ロビン・フッド」「ラブ・アクチュアリー」「スウィーニー・トッド」「モネ・ゲーム」、そして「ハリー・ポッター」シリーズのセブルス・スネイプ先生などなど。
数々の作品で独特の個性と存在感を発揮していた本物の名俳優です。
「男の渋み」の見本のようなナイスミドルで演技の幅も広く、独特の声が「ベルベット・ボイス」とも評される魅力的な方でした。
そんな彼が出演している映画の中で、個人的に気に入っている映画のご紹介です。
全英ヘアドレッサー選手権を通し、バラバラになった家族が絆を取り戻していく物語。
コメディドラマという割とありきたりな内容でありながら、母親の駆け落ち相手が女性という同性愛を含むプロットや、単純なお涙頂戴では終わらない深みを持たせた作品ですな。
人の情や家族愛にスポットを当てながらも、段階的に盛り上がっていくヘアドレッサー選手権もなかなか見ごたえがあります。
さっくりあらすじ
イングランド北部ヨークシャー、田舎町のキースリーにて理髪店を営むフィルと息子のブライアン。
そんな田舎町で4部門に渡る全英ヘアドレッサー選手権が開催されることになり、出場を熱望するブライアンに対し、フィルは全く興味を示さない。
10年前のヘアドレッサー選手権、かつてフィルは”伝説の美容師”と呼ばれ名を馳せていた。
しかしフィルの妻であり、腕利きの美容師でもあったシェリーは大会前日にモデルを務めていたサンドラと駆け落ちしてしまった。
そして妻と名誉を同時に失ったフィルとは、その後も絶縁状態が続いていた。
大会予定日が迫り大会出場のためにやきもきしながらも、かつてフィルのライバルであったレイの娘・クリスティーナと知り合い惹かれあうブライアン。
そんな折、フィルのもとへ絶縁状態だったシェリーが現れ家族で選手権に出場しないかと持ちかけてくるのだが、、、
名俳優アラン・リックマン
死体で練習する息子ブライアン
演じるはジョシュ・ハートネット
シュールながらも社会派ドラマ
米・英・独の合作ではありますが、舞台はイギリス、というかイングランド。
ハリウッド式の爆笑or号泣系のコメディドラマとは一味違い、難しく複雑なテーマを面白おかしく描く脚本や演出は実に素晴らしく、シュールでウィットに富んだ英国風の味付けが存分に味わえます。
家族の絆が復活してみんなで大会優勝するぜ!というスポコン系なノリの作品でありながら、扱うテーマが同性愛という斬新な設定。
嫁さんが女と家出して、息子がライバルの娘と恋仲になるというドロドロで複雑な人間関係を、ヘアドレッサー選手権というフィルターを通すことで透き通っていく流れ。
具体的にはズルい手で主人公チームの足を引っ張るライバルチームとか、やたらテンションの高い大会主催者(市長)とか、そのライバルチームの抱える頭の弱いモデルさんとか。
キャラが濃いめな登場人物の個性を丁寧に描くことで、メインテーマの重たい部分をぼかしてあるんです。
深いテーマ性を掲げながらも、くどくない仕上がりにできるバランス感覚は非常に素晴らしいものですな。
まとめ
重たいテーマを、骨組みはしっかりと残しながらも軽ーく仕上げたメッセージ性は本当に秀逸です。
そしてアラン・リックマンが渋くてねぇー。。マジシブ。
見た目も十分かっこいいんですけど、外見的なものや衣装に全く依存せず、まさに純粋な「演技」のかっこよさ。
基本しかめっ面ですが、うんざりしてたり、ムッとしてたり、薄ら笑いをしてたり、、、でもにじみ出る優しい雰囲気。
表情と仕草、空気感で完全に映像を支配する圧倒的な演技力に筆者はマジで腰砕けです。。
あ、あと副次的なものではありますが、ヘアドレッサー選手権も普通に観てて面白いですよ。
奇抜な髪型から本当に素敵な髪型まで。。ややコメディ調に描いてありますが、これだけでも見応えは十分だと思います。
お気楽ではないけど暖かい、ほんわかした優しさに溢れる作品です。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。
お別れ
名優アラン・リックマン。
類稀なる存在感を存分に発揮できた数少ない名俳優でした。
早すぎる死に悲しい気持ちでいっぱいですが、ご冥福をお祈りします。