
(原題:Butch Cassidy and the Sundance Kid)
1969年/アメリカ
上映時間:110分
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
キャスト:ポール・ニューマン/ロバート・レッドフォード/キャサリン・ロス/ストローザー・マーティン/ジェフ・コーリー/他
実在した銀行強盗犯である、ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドを描いた西部劇。
アメリカン・ニューシネマ(1960~70年代の反体制的作品)の傑作と評され、映画史に残るとまで言われるラストシーンも有名です。
ちなみに(筆者的に)数少ない信用できるサンダンス映画祭は、主催者のロバート・レッドフォードが本作で演じたサンダンス・キッドに由来しているそうな。
半世紀も前の映画とは思えないほどに感じる熱量と、当時の政治的背景や世相を上手く取り込んだ脚本と、これぞまさに映画史に残る傑作です。
さっくりあらすじ
西部開拓も節目を迎え、新時代の到来を予感させる1890年代のアメリカ。
頭が良く機転の利くブッチ・キャシディと、早打ちを得意とするサンダンス・キッドは銀行強盗を繰り返す無法者として名を馳せていた。
アウトロー仲間の誘いで列車強盗を成功させ、大金を手に2人は教職に就くサンダンスの恋人・エッタの元へと向かい、束の間の平穏な日々を過ごす。
しかし被害を被った鉄道会社はピンカートン探偵社の刺客を雇い、彼らの後を追い始めた。
刺客の追撃から何とか逃げ延びた2人は、エッタを連れ南米・ボリビアを目指すのだが、、、
サンダンス・キッドとブッチ・キャシディ
名の売れたアウトロー
サンダンス・キッドの恋人・エッタ
彼女もなかなかのアウトロー
ストップ・モーションのラストシーン
余韻が素晴らしい
これが、映画
現在のエンタメ性溢れる作品は大好物ですし、また昨今で公開される映画はどれもそれなりに面白いものばかりだと思います。
しかし、かつての名作の数々である映画たちを”シネマ”と呼ぶのであれば、現代の名作たちは”ムービー”なんですよね。
(ちなみにCINEMAはフランス語、Movieは英語、意味はどちらも同じですので感覚的なお話ね)
刹那的で非生産的、時として牧歌的な無法者の生き方を描いた本作ですが、これがもう予想以上に心に響きます。
現在のエンタメ作品が溢れかえる世の中で、映像的に極めて素晴らしい映画が次々と公開される世の中で、それでも普遍的な価値を感じさせる圧倒的な力がありますね。
すでに過去のものとなっている西部劇でも、セピアな色彩が懐かしい懐古的な作品でも、その訴えかけてくる存在感には一転の曇りもありません。
物語としては、かつてはブイブイ言わせていたギャング団が、変わりつつある時代の波に飲まれていく姿が描かれます。
時代の変化に先の見えない不安を抱え、明らかに”古く”なった自分達の生き方に寂しさを覚え、新しい人生の転機を目指して旅を続ける。
かつては活き活きと誇らしく生きていたギャングが、無法者として追われる立場となり、追手にビクつきながら逃避行をする姿は実に刹那的で、空しいものです。
やって来る未来の象徴として、馬に取って代わる”自転車”の演出も興味深く、それを受け入れないブッチの姿も非常に印象的。
そして逃げることに疲れながらも、新しい世の中にも馴染めない彼らの背中に時代の節目を痛感し、去っていく恋人の姿も強く記憶に残ります。
そして、そこまで積み重ねてきた悲哀の溢れる物語が、終盤のシーンへと繋がるわけですが、これが本当に素晴らしい。
ブッチとサンダンスという2人のギャングが、互いの心情を理解し、心の葛藤を乗り越え、新たな夢を追いかけようとした瞬間に切り取られたエンディングは素直に感動します。
映像だけ見れば至って単純な演出ではありますが、やはりこの静止画像に至るまでの過程を考えれば、やはり映画史に残る名シーンと評されるのも納得です。
あとは単純にね、ブッチを演じるポール・ニューマンと、サンダンスを演じるロバート・レッドフォードが超絶カッコいいんですよね。
洒落た出で立ちにウィットに富んだ会話の数々、そして互いに伏せていた意外性と、どこか可愛らしくも惚れ惚れするカッコよさがあるんですよね。
まぁ歴史に残る名俳優なので当たり前ではありますが、現代でも通用しそうなビジュアルも含め、観る人を引き付ける魅力はなかなかお目にかかれないものだと思います。
まとめ
有名な映画なので、今さら紹介するまでもない作品ですが、若い世代には知らない人も多いでしょう。
古いとか新しいとか、そういった価値観を超越する存在感がありますし、興味があるのであれば一度は観て欲しい作品として伝えておきたい。
エンタメ作品ではないので、端的に言えば楽しい映画ではありません。
それでも絶対に観て損の無い映画ですし、歴史に残る映画の価値に触れる良い機会だとも思います。
往年の名作として、これはオススメせざるを得ないでしょう。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。