(原題:The Nice Guys)
2016年/アメリカ
上映時間:116分
監督:シェーン・ブラック
キャスト:ラッセル・クロウ/ライアン・ゴズリング/アンガーリー・ライス/マット・ボマー/マーガレット・クアリー/他
ライアン・ゴズリング&ラッセル・クロウ主演、コメディ色が強めなクライム・サスペンス。
「リーサルウェポン」や「ラスト・ボーイスカウト」の脚本を手掛け、「アイアンマン3」や「ザ・プレデター」などの監督を務めたシェーン・ブラック作品です。
まぁ、よくある凸凹バディ・ムービーのひとつですが、きっちりと下積みを築き上げてきたブラック氏の丁寧な映画作りが良く分かる秀作です。
さっくりあらすじ
1977年、ロサンゼルス。
一人娘のホリーを育てるシングルファザーのマーチは、私立探偵として生計を立てているものの酒浸りな日々を送っていた。
ある仕事でアメリアという女性を探すことになるが、そのアメリア本人から依頼を受けた示談屋・ヒーリーに襲われ腕を折られてしまう。
しかしヒーリー自身も謎の2人組に襲われたことで身の危険を感じ、アメリアの捜索を決意する。
再びヒーリーはマーチの元を訪れ協力を要請し、最初は渋っていたマーチも報酬に釣られ、2人はアメリアの素性を調べるのだが、、、
探偵・マーチと示談屋・ヒーリー
もやしっ子と武闘派
マーチの娘・ホリー
根は純粋なしっかり者
全体的にユーモア満載
笑えるカットが多め
”3枚目”なゴズリング
舞台が70年代のロサンゼルスということで、どこか退廃的な風景とレトロでオシャレなファッションの数々を昇華させ、全体的にファッショナブルでスタイリッシュな印象です。
レトロな雰囲気を醸し出しつつも、現代風に彩られた美術センスは実に素晴らしいですな。
ともあれ、本作に於いて秀逸なのはとにもかくにも、キャスティング。
酒浸りな私立探偵・マーチを演じるライアン・ゴズリングが、予想の斜め上を行く素晴らしい演技を発揮します。
「ラ・ラ・ランド」や「ブレードランナー2049」など、近年は大作への出演で大きくキャリアを伸ばしているライアン氏ですが、個人的にはこの3枚目っぷりが最高にハマり役。
今までのキャラ的には考えられないようなコミカルな演技を連発し、見事に新境地を開拓しましたね。
弱腰で情けない人物にも関わらず、何故か魅力的で愛らしいキャラクターとして、これはもう素晴らしい出来ですよ。
そんなマーチのバディ役を務めるラッセル・クロウもまた素敵、というか素晴らしい安定感。
どっぷりと重量のある肉体を駆使し、もう壊すわ殴るわで大暴れ、腕力で示談を成立させるアウトロー風なキャラクターですな。
威厳があるというか、ちょい怖めな風貌の奥に隠れる優しそうな瞳と、度胸があり、どこか漂う切れ者っぽい雰囲気が良く合っていますね。
この2人が織りなす凸凹っぷりは、歴代のバディ・ムービーに勝るとも劣らない素晴らしい輝きを放っています。
そして2人に加わるマーチの娘・ホリーを演じたアンガーリー・ライスも印象的。
生意気なお年頃の少女ですが根は優しくしっかり者、父に対する健気な愛情もまた素敵です。
総じて本編とはあまり関係無いようなギャグが多めな作品ですが、この狙った笑いがことごとく面白い稀有な作品でもあります。
説明しづらい笑いの質なので省きますが、シェーン・ブラック監督特有の濃いめなユーモアが好きな人は超ハマると思います。
やや毒のある笑いなので、多少人は選びそうな気もしますがね。
ただし、むしろ本編の方に魅力が欠けると言いますか、コミカルな演出に対して脚本の深みに大いに欠けるのが残念なところか。
コメディ的には及第点ではあるものの、サスペンスとしてはあまり良い出来とは言えず、全体的に見るとややチグハグ感が否めません。
終盤にかけての目に見える盛り下がりを考えれば、構成的にひと捻りたりなかったのかな、と。
まとめ
ブラック寄りなユーモアを前面に押し出したノワール作品として、それなりに完成度の高い映画だと思います。
ライアン・ゴズリングもラッセル・クロウも、本作を通じて初めて見せるような演技の数々は十分に観るに値するものです。
とはいえ、やはり脚本的な構成・展開に違和感がありますし、結末に向けてのプロセスもお世辞にも上手いつくりとは言えません。
ので、その辺に目を瞑れるかどうかでかなり評価も変わってしまうことでしょう。
個人的には結構面白かったけどね。
良ければ一度ご鑑賞くださいませ。