(原題:Hardball)
2001年/アメリカ
上映時間:106分
監督:ブライアン・ロビンス
キャスト:キアヌ・リーブス/ダイアン・レイン/ジョン・ホークス/D・B・スウィーニー/マイケル・B・ジョーダン/他
借金まみれの負け組男性が、少年野球に励む子供たちを通じて人生をやり直すヒューマン・ドラマ。
作品としてはキアヌ・リーブス演じるクズ男にスポットが当たっているものの、彼の周りで躍動する野球少年たちこそが主人公と言っても良いかもしれません。
そういった意味では群像劇にも近いかな。
笑いあり、涙ありの予定調和な作品ではあるものの、それを踏まえた上でも感動できる良作です。
さっくりあらすじ
スポーツ賭博で莫大な借金を作ってしまったオニールは、証券会社に勤める友人にお金を無心した。
そこで友人は借金と引き換えに少年野球チームのコーチをするよう要求し、治安の悪いエリアで黒人野球チームの面倒を見ることになる。
他に選択肢の無いオニールは渋々ながらも引き受けるが、子供が苦手な彼はコーチもそっちのけに賭博を繰り返していた。
しかし銃声が日常茶飯事のグラウンドで、無邪気に野球を楽しむ少年たちの姿を見て、オニールは徐々に考えを変えていくのだが、、、
借金を抱え
荒れた生活を送るオニール
友人の提案で
野球チームのコーチをすることに
チームの一人・ジャマル
後に王国を乗っ取ろうとする
粗い感動物語
もうベタです、本当にベッタベタだと思います。
しょーもない兄ちゃんが無邪気な子供たちと心を通わせ、最終的には大団円へと繋がるわけで、まさに映画的な物語と言えるでしょう。
良くも悪くも想像通りの作品です。
ただし、よくあるドラマ作品の域は出ていないものの、現実的に荒廃した社会を描いた作品ともいえます。
一応は原作者の経験を通した上での物語なんだそうで、黒人少年たちが住むスラム街の描写はそこまで当時の情勢とは剥離していないものと思われます。
明らかにヤバそうなギャング集団が街を闊歩し、油断すれば強盗に遭い、銃声が当たり前のように鳴り響く危険地帯と。
これが本当に怖い街並みなんですよね。
白人がいれば否が応でも目立ちますし、少年たちも明るい未来を夢見つつも、ギャングになる現実があるわけで。
貧困による治安の悪化、それに伴う日常的な悲劇、そして大人たちのエゴ。
そういった、長い時間をかけて出来上がった粗悪な社会の描写こそが一番印象に残ります。
純粋無垢な子供たちが、暴力と距離を置き野球に興じる子供たちが何ゆえにギャングを目指すのか?
いつまでも子供のままでいられない人生と、大人になるにつれ理解していく己の運命と。
感動系の映画としては微妙なところだと思いますが、ある種のドキュメンタリー風な映像だと思えば、それなりに響くものもあるでしょう。
とはいえ、再生を描くヒューマンドラマ映画として大団円に終わろうが、何故か心にしこりが残る仕上がりには賛否別れそうな気がします。
主演のキアヌ・リーブスは安定の存在感。
近年はアクション俳優的なエッセンスが強めですが、本来はこういった役柄の方が合いますよね。
無鉄砲で無計画、人に迷惑をかけることも厭わないクズっぷりがなかなかに見事ですな。
そんな彼が借金を完済し、子供たちに別れを告げようと意気揚々とするも、懐いた彼らを見捨てられずにメジャーリーグのスタジアムに連れていくのが本作で一番の見どころ。
かのスーパースター選手であるサミー・ソーサのカメオ出演もあり、非常に印象深く感動できるシーンだと思います。
あどけなさの残るマイケル・B・ジョーダンにも注目。
「クリード」や「ブラックパンサー」など、今ではすっかりイケメン俳優として確立しましたが、この当時は本当に可愛いっす。
しかも光と闇を体現する重要な役ですし、将来に華開く片鱗が見えなくもないですな。
ついでに爽やかな美貌を誇るダイアン・レインがまぁ素敵。
強く、優しく、そして美人な教師として、誰もが憧れるであろう魅力を振りまいています。
まとめ
冒頭で述べたように、極めて先の読みやすい単純なドラマです。
ベタな感動で満足できる方には非常に良作だと思いますが、悪く言えば捻りが無く単調で、薄味な仕上がりだとも思います。
とはいえ個人的にはとても満足。
心に響き、胸に残る台詞の数々は本当に素晴らしいもので、できれば字幕でご覧になっていただきたいですな。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。