イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密


(原題:The Imitation  Game)
2014年/アメリカ
上映時間:114分
監督:モルテン・ティルドゥム
キャスト:ベネディクト・カンバーバッチ/キーラ・ナイトレイ/マシュー・グッド/ロリー・キニア/アレン・リーチ/マーク・ストロング/他

 




 

実在したイギリスの天才数学者アラン・チューリングを描いた歴史ドラマ。

第二次世界大戦を背景に、ドイツ軍の暗号解読を通じてコンピューターの基礎を作った偉人の一生が描かれます。

 

極めて繊細で重厚な物語は世界中で圧倒的な支持を受け、数々の映画賞のノミネートに伴う圧倒的な高評価は近年では目覚ましいレベル。

歴史ドラマとしてもヒューマンドラマとしても、非常に感動的で素晴らしく、最高峰の映画のひとつと言って良いでしょう。

 

 

 

 

さっくりあらすじ

1951年、数学教授のアラン・チューリング宅に空き巣が入り、捜査に当たった刑事の取り調べを受けることになったアランは過去を語りだす。

1939年、イギリスがドイツに宣戦布告をした時、アランは海軍中佐デニストンの下でナチスが誇る暗号機”エニグマ”の解読チームに入る。

天才を自覚するアランは協調性に欠け、同僚を無視し1人で暗号解読装置の設計に没頭していた。

やがてチームの責任者となったアランは人員を確保するため、難解なクロスワードパズルを解読できた一般人を雇用し、エニグマに挑むのだが、、、

 

 

 

 

 

数学の天才を自称するアラン
天才故に、人の気持ちは鑑みない

 

暗号解読チームに配属されるも
仲間からは浮いた存在に

 

ようやく完成した暗号解読機
しかしナチスの暗号は解読できず、、

 

 

 

 

 

多くの感動

久しぶりに文句無し、もう手放しで称賛する以外に言葉が見当たりません。

第二次世界大戦をモチーフに描いた映画は数多くあるもので、その全ての作品に通ずるというのもポイントで、戦争の背景を知れば知るほどに魅力が増していくものでもあります。

戦争を背景に1人の天才を掘り起こす脚本と、それに相応しいベネディクト・カンバーバッヂの圧倒的な演技力も相まって、物凄く高いレベルで完成された傑作と言って良いでしょう。

 

戦争を知らない世代なので複雑な気持ちにはなりますが、前線でバチバチ殺し合う中で、勝利に導くために陰ながら苦悩を抱える人達がいるというのも新鮮でした。

暗号解読に挑戦するまでにも、いざ暗号を解読するに至る過程にも、暗号を解読した代償や葛藤にも、全てにおいてドラマがあるんですな。

実際に理論的なことは半分も理解できてないですし、そもそも15×10の18乗とか意味不明だし、それでも十分に楽しめるような丁寧な演出も実に素晴らしいものです。

 

一枚岩とは言えない軍部のサスペンス性といい、男女の友愛を描くロマンスいい、孤高の天才の悲哀を描くドラマといい、どこから見ても隙は無し。

強いて言えば、実在した人物に倣って同性愛が1つのテーマとして掲げられるため、同性愛に対する理解の及ばない人には魅力は伝わらないかもしれません。

 

 

特筆すべきは、アラン・チューイングという希代の天才の存在と、それを見事に演じ切ったベネディクト・カンバーバッヂの卓越した演技力。

世界に安定をもたらした数学者であり、当時の社会の常識に殺された悲しき男でもあり、天才であるが故に天才以外の気持ちが理解できない難解な人物であります。

幼年期に思い煩わった深い愛情が枷となり、狂気的に解読機(人工知能)の開発に没頭する姿は静かなる狂気そのもの。

少数派(同性愛者)に対する世の圧迫も然り、天才児ではなく1人の人間として”普通”の人生や幸福を求めていた姿には切なさが溢れてきます。

 

そんな彼と働くチームの仲間や、彼の短い生涯を支えた女性の親友などの関係性がまた美しく、とても素敵。

とっつきづらく面倒な性格のチューリングを理解し、時には反発しあい、それでも彼が天才であることを認める態度は本当に賢い人柄が表れています。

天才ではなくとも天才よりも優れている部分があるのは当然ですし、優秀な凡才が天才を活かすという献身こそが最も有効な天才の使い方なのかもしれません。

 

物語の冒頭、刑事に尋問されるチューリングの独白がそのままエンディングに伝わるわけですが、本当の意味で孤高の存在になってしまった姿は本当に印象的。

(当時は違法だった)同性愛が暴露され、自分が手掛けた機械”クリストファー”と離れたくないがためにつらい投薬治療の道を選び、独りで苦しむ姿は号泣もの。

自分が理解できない法律のために自分を否定する薬を服用し、クリストファーと別れたくないと泣く姿に胸を締め付ける思いが伝わります。

 

 




 

 

まとめ

後世に大きな影響を残しながらも、時代に恵まれなかった1人の天才。

戦争と迫害という重苦しい内容ではありますが、悲しくも美しい映画として、名作として記憶に深く残るものだと断言して良いでしょう。

 

「誰も想像しない人物が、想像しない偉業を成し遂げる」

「ドイツは愛で戦争に負けた」

「普通じゃないから、世界はこんなに素晴らしい」と。

劇中で語られる台詞はもとより、映画が終わる最後のテロップまでが実に真摯で胸に響きます。

 

これは観なきゃダメだよ。

オススメです。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 

おまけ

2013年にエリザベス女王により恩赦が発行され、ようやく遺した偉業が讃えられることとなったアラン・チューリング。

2021年の終わり頃には紙幣に印刷されることになったんだそうな。

 

 



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