ニューヨーク 最高の訳あり物件


(原題:Forget About Nick)
2017年/ドイツ
上映時間:110分
監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ
キャスト:イングリッド・ボルゾ・ベルダル/カーチャ・リーマン/ハルク・ビルギナー/ティンカ・ヒュルスト/フレドリック・ワーグナー/他

 




 

ワケあって同居することになった2人の女性を描くコメディ・ドラマ。

舞台はニューヨークですが、作品はドイツ産でございます。

 

中年に差し掛かる女性の人生観や、それに伴うキャリアの築き方、そして恋路や男性との距離感などなど。

オシャレな街並みと並行して描かれるドラマ性とユーモアはなかなか面白い出来ではありますが、残念な部分も数多く見受けられる惜しい作品です。

 

 

 

さっくりあらすじ

ニューヨーク・マンハッタンのデザイナーズマンションに住む元モデルのジェイドは、デザイナーとして初めてのコレクションの準備に励んでいた。

しかし突然に夫でありスポンサーでもあるニックから離婚を告げられ、それ以来ニックが家に戻って来ることは無くなった。

傷心の日々を送るジェイドだったがある日、突然ニックの前妻であるマリアがマンションに引っ越してくる。

「ニックとの契約で家の権利の半分は自分のもの」だと主張するマリアを共に、ジェイドは不安と苛立ちを抱えながら過ごすことになるのだが、、、

 

 

 

 

人生の転機を迎え
イライラが募るジェイド

 

突然やって来たマリアと反りが合わず
衝突を繰り返す

 

2人の元夫にして富豪のニック
大体コイツのせい

 

 

 

 

 

薄味

良い出汁がきいてるんだけど、味が薄い。

塩が足りんのよ、塩が。

 

要は同じ男性に捨てられた女性が、何の因果か同じ部屋で暮らすことになるというドタバタ劇なんですが、アレコレと詰め込んだせいか焦点がボヤけています。

コメディ・ドラマにはよくある話なんですけどね、フォーカスする物語を絞らないと、2時間の枠に収めるには話が大きすぎるんですな。

せっかく味のある女優を起用し、それに応える良い演技だけに、演出・構成面での粗が見え隠れするのが残念なところ。

もっと面白く出来たであろう伸びしろに勿体なさが拭えません。

 

コメディ・ドラマとは言うものの、実際の割合は7:3でドラマの方が強めな印象。

元モデルで現デザイナー、ハイソな世界でキャリアを築こうと奮闘するバツイチ女性・ジェイド。

文学を好み、牧歌的な生活感で哲学を語るインテリバツイチ女性・マリア。

全く以て価値観の異なる2人の掛け合いは笑えるところもあるにはあるんですが、どちらかと言えば彼女らの背景に自分のキャリアを重ねてしまうような社会の在り方の方が印象的です。

 

というかね、大富豪ニックと元妻2人の物語なんですけどね、その辺りはオマケみたいなものなんですわ。

どちらかと言えば2人の視点を通しての人生観が中心に描かれますし、独身女性が生計を立てるための苦労や苦悩が描きたかったのかと思えるくらい。

その割にはニックのおかげで超高級アパート(推定家賃100万以上)に住んでるし、日々の過ごし方や食事風景を見るに悲壮感はないし。

で、結局何が言いたいのか、映画を通した主張が見えてこないわけで。

 

監督を務めたマルガレーテ氏は「男女同権主義」の映画製作人として有名だそうですが、その主張と作品に通ずるものが理解できません。

結局はドラマとしてもコメディとしても不完全燃焼という感じで、映画としての完成度に結びついていないのが残念なところです。

 

 

コメディとして唯一面白かったのが、コレクションに向けて喜怒哀楽がバグっていくジェイドの姿。

広告会社の人間には年齢を示唆する失礼なことを言われ、パタンナーにも年齢的なものを示唆され、スポンサー(元夫)に会えないだけに資金が調達できず。

ストレスから夜な夜なパイを頬張る姿は微笑ましく、またコミカルで面白いものです。

演じるイングリッド・ベルダルのビジュアルがモデル系なのも相まって、年齢を重ね努力と裏腹にムチムチしていく様も個人的にはツボでした。

よく描かれる描写ではありますが、ファッション業界あるあるで無理難題を押し付けられる、そしてその度に世渡りを覚えていくアシスタントも面白かったです。

 

対して、マリアを演じるカーチャ・リーマンも負けじと素晴らしい演技。

なんですが、どうもキャラクターに魅力が無く、家の管理費も払わないニートの分際でやたら図太いのがムカつくんですよ。

えらそうに文学に講釈たれて、広いキッチンで好きな料理に腕を振るい、ただのセレブじゃねーかよと。

そのくせお金や家の権利の話を持ち出すとキレ始めるわで手に負えず、真っ当に働いている人なら9割はジェイドの方に理解を示すでしょう。

 

ついでに言えばマリアの娘と孫もしっかりと血を引くモンスター・チルドレンで、目に余る暴挙に胸が痛くなります。

そりゃ同居人なら喧嘩になるわと。

この辺の描写はコミカルに描いたつもりなんでしょうが、ただただ不愉快。

金に困ったことの無い人間の笑いの質というか、端的に言えば趣味の悪いユーモアだなぁと。

 

 




 

まとめ

面白いか退屈かはハッキリとは言えませんが、個人的には「合わなかった」映画だなと。

それなりに魅力もあり、興味を引くような作品だったとは思うものの、エンディングを含めそれらを補って余りあるマイナス面が目につきます。

まぁサクッと観れるオシャレ系ミニシネマだと思えば悪くはないんですけどね。

観る人によっては十分に面白いかな。

 

比べるものではないですが、同じファッションの世界を描いた作品であれば「プラダを着た悪魔」の方が圧倒的に面白いと思います。

良ければ一度ご鑑賞くださいませ。

 



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