(原題:Interstellar)
2014年/アメリカ
上映時間:169分
監督/脚本:クリストファー・ノーラン
キャスト:マシュー・マコノヒー/アン・ハサウェイ/デヴィッド・ジャーシー/ウェス・ベントリー/マット・デイモン/ジェシカ・チャステイン/マイケル・ケイン/他
2016年時点で、恐らくは最も緻密に作られ、また最も凡人には理解することが困難であろう正統派なSF映画。
時間と重力の関係。
特殊相対性理論。
ニュートン力学などなど。
聞くだけで頭痛がしそうな科学考証を背景に、荒廃した地球に住む人類の存続を賭けたミッションと、家族間の愛情を描いた物語です。
監督、脚本を務めたのは「メメント」や「インセプション」「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」などで有名なクリストファー・ノーラン&ジョナサン・ノーラン兄弟。
そして練りに練った難解で陰鬱な作風は今回も健在。
というか歴代作品でもずば抜けて知識が必要になる映画で、製作総指揮に理論物理学者を招聘し、凡人には理解し難い量子論を軸に物語は描かれています。
科学雑誌「ニュートン」なんかを愛読する人ならば多少の免疫もあるでしょうが、お星さまが好きくらいのノリで観るとガチで混乱します、というより物語が意味不明で楽しめない恐れすらあります。
個人的にはかなりの傑作だと思っていますが、その魅力に辿り着く前に挫折するかもしれない難しい作品です。
さっくりあらすじ
近未来の地球は環境破壊により、人類が住むのに適さない惑星へと変わろうとしていた。
かつてNASAのテストパイロットだったクーパーは息子のトム・娘のマーフ・義父のドナルドと共に農業を営み、暮らしている。
ある日、巨大な砂嵐が発生し家の中に避難するクーパー達だったが、家中に降り積もった砂塵の中で、偶然にもある地点を指す座標を見つけた。
見つけた座標に向かうクーパーだったが、辿り着いた先はNASAの軍事施設で、そこでブラント教授に出会う。
教授は人類存続のため、居住可能な惑星を探し続け、その過程で土星より遠い太陽系でワームホールを見つけたと告げた。
そしてワームホールを利用し、その先にある別の銀河で居住可能な惑星を探すようクーパーに依頼する。
マーフの猛反対を押し切り、宇宙へと向かう決心をするクーパー。
ブラント教授の娘アメリア、物理学者のロミリー、地質学者のドイルらと共に宇宙船へと乗り込むのだが、、、
農夫・クーパーと愛娘・マーフ
ようやく見つけた水の惑星
”重力”と”時間”を勉強しましょう
大質量ブラックホール”ガルガンチュア”
その中は、、、
湧き出す「知的好奇心」
地球はそろそろヤバいから他所の惑星に引っ越そうかな、というありがちなテーマに専門的な学術を盛り込んだ結果、非常に硬派で骨太な映画となりました。
世界で6億ドルもの興行成績を叩きだした実績は伊達じゃなく、見応えは十分。
というか実際に上映時間が長く、なおかつ難しい話に終始するので、常人であれば最後の方はバテ気味になってしまうことでしょう。
宇宙の遥か彼方への旅で、物理的にも次元的にも離れてしまった家族の絆がテーマとなるわけですが、肝となったSF設定を科学的に正確(らしい)に描いたことが最大の特徴となります。
「相対性理論」や「ブラックホールの特異点」「時間と重力の関係性」などなど。
全くもって耳に入らない、頭に残らないようなお話ですが、一般人にも理解できるような努力や親切心をどことなく感じます。
従来の曖昧に濁すような表現は極力少なく、天才たちによる説明を理解できない視聴者側に非があるかのような作風は潔いもの。
その上で、映像を通してなんとなーく理解できるような演出のバランスも秀逸と言えるでしょう。
あれほど嫌いだった数学や科学というものを通して、これほどの知的興奮を覚える演出は初めてかもしれません。
SFに目が行きがちですが、ドラマとしても非常に感動的で良くできています。
娘が暮らす地球の未来と、娘と一緒にいてあげられる時間を秤にかける葛藤。
遠く離れた場所で、次元すら異なる場所で、娘を想う愛情とそれを信じる娘の絆。
終盤はもはや意味不明なレベルの難解さでしたが、これがなかなか感動的、やはり人類を救うのは「愛」のようです。
でもそこに行きつくまでの尺が長いし、省みればマット・デイモンの件は必要なかったかな、あのパートは蛇足でしたね。
まとめ
「宇宙」というものの不思議さ、理解することの困難さを含め、久しぶりに好奇心をくすぐられた作品です。
考察サイトや科学知識を分かりやすくしてくれたサイトなんかも多数あるので、照らし合わせながら観るのも良いかもしれません。
大袈裟でなく、それらの助けがないと理解し得るようなレベルの話ではありません。
基本は親子愛と絆のストーリーですが、多少なり科学やSF考証の知識が無いと半分しか楽しめない映画だと思います。
逆にある程度の理解ができるようであれば、豆知識レベルとはいえ、少し頭が良くなるありがたい映画とも言えます。
ひとつの映画作品として、理解の及ばない難解な理論と、理解できるけれども理論では表せない「愛情」の対比まで楽しめればあなたも上級者です。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。