フューリアス 双剣の戦士


(原題:Furious)
2017年/ロシア
上映時間:118分
監督:イバン・シャーコベツキー
キャスト:イリャ・マラコフ/アレクセイ・セレブリャコフ/他

 




 

ロシア史に残る伝説の戦い「バトゥのリャザン襲撃物語」をモチーフに、モンゴル帝国に立ち向かう戦士の姿を描いた伝記的アクション。

具体的には13世紀半ばに起きた、モンゴル帝国のキエフ・ルーシ公国への侵攻を描いた物語です。

ちなみにキエフ・ルーシとは9世紀末に誕生した統一国家なんだそうで、現在のロシア・ウクライナ・ベラルーシ周辺になるんだそうな。

 

何せロシアの歴史など微塵も知らず、舞台背景を理解するのに一苦労する作品ではあります。

しかし弱者が強者に立ち向かうという世界共通で熱い展開と、ロシア映画独特の味付けにより印象深い作品にもなっております。

 

 

 

 

さっくりあらすじ

リャザン公国の衛兵長・コロヴラートはかつてモンゴル軍に襲われたトラウマに悩まされながらも、妻子を持ち幸せに暮らしていた。

しかし総司令官・バトゥが指揮する屈強なモンゴル帝国軍はヨーロッパへと侵攻し、リャザン公国もモンゴル軍に包囲されてしまう。

援軍を要請する時間も無く、リャザン大公は時間を稼ぐためにコロヴラートらに供物を持たせ、バトゥの陣営へと向かわせた。

必死の説得もバトゥは聞く耳を持たず交渉は決裂、追手たちの追撃を振り切り、コロヴラート一行はリャザンへ帰ろうとするのだが、、、

 

 

 

 

リャザン公国の衛兵長・コロヴラート

 

モンゴル帝国指揮官・バトゥ

 

24人が15万を相手に戦う

 

 

 

 

雪原を溶かす熱い魂

色々と粗さは否めませんが、それを補って余りある、なかなかに熱い傑作ですな。

最初こそ映像の色相がファンタジック過ぎて嫌な雰囲気でしたが、序盤を除けばブリーチ・バイパスを多用した味のある演出が印象的です。

冒頭で述べたように、とにかくモンゴル帝国のルーシ侵攻という歴史が全く分からないので、脚本的な理解は及んでおりません。

 

しかし、生き残った人間達が一矢報いるために、また数少ない生き残りを逃がすために大軍に立ち向かう姿は文句無しにカッコいいもので。

300」が好きな人は絶対にハマる内容だと思います。

 

 

物語としてはモンゴル軍に国を滅ぼされた衛兵長が、少数の仲間と共に帝国に立ち向かうという流れ。

迫力のあるアクションと、それを彩る映像美はかなりの見応えがありますが、アクションの目玉となる乱戦はちょいと少なめかも。

しかし少なめなアクションながらもスタントの内容は実に濃く、重さと速さを兼ね添えた、スタイリッシュな演出は一見の価値ありですよ。

 

副題が「双剣の戦士」だけに、二刀流でバッサバッサと爽快な殺陣が披露されそうですが、それはオマケみたいなもんですな。

余計な邦題が蛇足です。

むしろ個人的には故郷を滅ぼされた人々の憤怒や、妻子を失くした悲哀、残った命を救おうとする献身など、戦争が生む悲しいドラマ性の方が印象的。

そういう意味では大味なアクション映画ではなく、理不尽な運命を全うした人々のドラマだとも言えるかもしれません。

 

 

で、何故にアクション・スタントが控えめなのかと言うと、24人が大軍と戦う物語なのでゲリラ戦が中心なんですな。

実際に残る伝説を元にしているわけですし、現実的に考えて大軍と戦うわけなんで当然と言えば当然か。

押し寄せる大軍を相手に地の利を活かして闘う映画は数あれど、自ら敵陣営に乗り込んで破壊工作をする映画は珍しいと思います。

 

その地味な作業を淡々とこなし、いざ追い詰められれば牙を剥いて戦うと。

ありきたりな流れにせず、このメリハリを選んだ製作は正解じゃないですかね。

 

 

あとは主人公・コロヴラートが悲哀を背負うイケメンとして非常に印象的。

とある理由から短期記憶障害を患い、色々と覚えているんだか忘れているんだか怪しいという複雑な人物です。

国が滅んでも務めて冷静に生存者を探し、また彼らを逃がすことを真っ先に考える姿はまさに漢ですよ。

ただし、記憶障害の設定が活きていないのはご愛敬。

 

その上で、戦闘から逃げられないと判断した際の、爆発したような怒りの攻撃は本当に爽快でカッコ良く、極めて印象的なシーンの数々です。

優男な風貌からワイルドな雰囲気まで、怒りと悲しさを混在させたキャラを演じたイリャ・マラコフ氏は今後も要チェックですな。

 

ついでにモンゴル帝国司令官・バトゥも的ながら天晴れ。

どことなくオネェ風な言動が多めで、微妙にキャラが掴みづらい人ではありますが、認めた敵を手厚く扱う彼もまた漢。

ちなみに、かのチンギス・ハンの孫に当たる人物だそうです。

歴史学的にはあらゆるものを壊し、あらゆる人々を虐殺した暴君という評価になっているそうですが、軍事に対しては天才的な能力を発揮していたんだとか。

 




 

まとめ

普段あまり見ないであろうロシアの映画。

細かいツッコミどころはあるにしても、それを感じさせないようなノリと雰囲気は良く出来ているのかなと。

つまり、予想より遥かに面白いエンターテイメントとして完成しており、これは観ても損の無い作品だと断言できます。

 

雪原をも溶かす熱い咆哮をご堪能あれ。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。


 



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