ライフ(2017)


(原題:Life)
2017年/アメリカ
上映時間:104分
監督:ダニエル・エスピノーサ
キャスト:ジェイク・ギレンホール/レベッカ・ファーガソン/ライアン・レイノルズ/真田広之/アリヨン・バカレ/オルガ・ディホヴィチナヤ/他

 




 

妄想おじさんの冒険じゃないよ。

国際宇宙ステーションを舞台に、火星から発見した地球外生命体との闘いを描いたSFスリラー。

いわゆるソリッド・シチュエーション・スリラーであり、こう言うと「エイリアン」的なイメージが頭に浮かびますが、実際にはかなり毛色の違う作品です。

特別な目新しい要素があるとは思いませんが、そうそうたるキャスティングが作品に厚みをもたらしています。

 

 

 

さっくりあらすじ

火星に派遣した無人探査機”ピルグリム”を回収し、ISS(国際宇宙ステーション)のクルーは採取した土壌の解析を始める。

その結果、細胞核がある単細胞生物=生命体の存在を確認し、史上初の発見に一同は歓喜の声を挙げた。

活動を見せない生物に対し、温度を上げブドウ糖を与えると、生命体は徐々に活発になり始める。

地球の全国民からの公募により「カルビン」と名付けられた生命体は、成長と共に単細胞生物が群体として集まり、各々が脳や筋肉として発達していく。

徐々に大きさも増していくカルビンと共に、一行は地球への帰還を目指すのだが、、、

 

 

 

 

こんな小さな生命体が

 

すくすく成長し

 

こんなに立派になりました♪

 

 

 

 

 

大発見に隠れる倫理

ソリッド・スリラーとしての構成は実に基本に忠実で、宇宙と言う危険な環境と危険な生物に板挟みされた閉塞感はよく表現されています。

冒頭に描かれる探査機”ピルグリム”の回収シーンからして緊張感に溢れ、失敗すればISSが危険に晒されるという極限状態が強い没入感を生みます。

結果的に生命体も発見し、クルー全員の立ち位置を紹介しつつも意気揚々とした雰囲気を作り、そこから怒涛のパニックに落とし込むわけですな。

弛緩と緊張、この温度差こそがスリラーの基本にして王道なわけですが、総じて丁寧な作りが良く分かります。

 

さらにそんな演出を彩る俳優陣が皆素晴らしい役者ばかりで、全く隙の無いキャスティングにも注目。

「ナイトクローラー」や「ゾディアック」や「ドニー・ダーコ」などなど、あらゆるキャラクターを演じ分ける実力派のジェイク・ギレンホール。

グレイテスト・ショーマン」や「ミッション・インポッシブル」で一躍脚光を浴びたレベッカ・ファーガソン。

ご存知デップー、肉体派な演技から繊細な演技まで、ライアン・レイノルズ。

そして日本が誇る実力派俳優、真田広之と。

密室系の弱点となる代り映えしない景色も、各々の俳優が醸し出す素晴らしい演技の数々で全くと言って良いほど気になりません。

これだけ肉厚に揃えられたキャスティングは本当に見事の一言です。

 

 

で、ここからはマイナス面と倫理のお話。

まぁスリラーなんでね、結局は宇宙生命体・カルビンがどんどんと成長して手に負えなくなって、あらヤバイというお約束な展開です。

そのきっかけとなる生物学者・ヒューが何でか異常なまでのカルビン愛がさすがに不自然でして。

 

甲斐甲斐しくヒューが世話を焼き、またそれに応えるかのように成長の兆しを見せるカルビンですが、ペットじゃないんだからさ。

どんな病気や細菌を持ってるかも分からんような生物に触れるという愚行は、危機管理に欠け過ぎてて、さすがに看過できません。

まして地球に持って帰るつもりなんだしね、国際宇宙ステーションという規律を求められる場で、あそこまでアホな振る舞いができるものかと。

そこだけは強烈な違和感を覚えます。

 

 

逆に未知の生物に拉致され、エネルギーを求めて人間を襲うカルビンの方がまともに見えるくらい。

どんな生物でも自身の生命に危機が訪れれば、確実に同じ行動を取るでしょうし、むしろ人間サイドの明らかなミスで”敵”と認識されたでしょうし。

ある意味で傲慢な人間が生んだモンスターなわけで、次々と殺されていくクルー達が不憫ではあるけれども、あまり憐れみは感じない不思議な印象ですな。

 

そして薄々予想ができてしまうエンディングもまた然り。

スリラーの結末としては無難な気がしないでもないですが、いまいちパンチに欠けますね。

今後の地球の心配よりも、宇宙で孤独に投げ出されるほうが圧倒的にインパクトが強く、危険な宇宙生命体を中心にした物語なのに本末転倒なオチが少々残念です。

 




 

まとめ

スリラーの演出としては良く出来ていますし、各俳優の演技は当然文句無し、脚本だけに綻びが見える惜しい作品です。

全体的にバランス良く出来ているだけに、プロットの穴がより大きく見えてしまうもので、映画を作る匙加減の難しさを改めて確認した気がします。

 

とはいえ決して退屈な作品ではなく、それなりにスリリングな演出や視覚効果は見応えがありますし、十分に観るに値するものだとも思います。

最後のレベッカ・ファーガソンの絶叫は恐怖と悲しみと絶望感を同時に感じる名シーンですし、個人的にはこのワンシーンだけでも観て良かったなと。

それほどに鬼気迫る素晴らしい演技でした。

 

良ければ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



ブログランキング参加してみました。
良ければポチっと押しちゃってください。