5パーセントの奇跡~嘘から始まる素敵な人生~


(原題:Mein Blind Date mit dem Leben)
2017年/ドイツ
上映時間:111分
監督:マルク・ローテムント
キャスト:コスティア・ウルマン/ヤコブ・マッチェンツ/アンナ・マリア・ミューエ/ヨハン・フォン・ビューロー/アレクサンダー・ヘルト/他

 




 

視力のほとんどを失った青年が、一流のホテルマンを目指し奮闘する伝記的ドラマ。

ドイツで大ヒットを記録した本作は夢、情熱、努力、友情、愛情などなど、奇跡を巻き起こすために必要不可欠なものが詰め込まれた実話でございます。

 

スリランカ系ドイツ人のサリヤ・カハヴァッテ氏の半生を描いた作品ですが、実に15年もの間、視覚障害があることを隠し、接客業としてのキャリアを積んだそうな。

現在ではヨーロッパ各地で講演会を開催し、仏教徒としての修行を積みながら生活をしているようです。

およそ信じられない気合と努力の物語、こりゃ傑作ですわ。

 

 

 

さっくりあらすじ

レストランで研修を重ねつつ、学校にも通うサリヤは一流のホテルマンになる夢を持っているが、ある日突然に黒板に書かれた文字がボヤけるようになった。

次第に自分が書いた文字すら読めなくなってしまった彼は先天性の網膜剥離と診断され、手術は成功するものの本来の視力の95%を失ってしまう。

盲学校へ行けと主張する父に対し、普通の学校を出て一流のホテルへ努める夢を諦められず、努力を重ね好成績で卒業を迎えた。

しかし視覚障害を理由に願書はことごとく断られ、サリヤは障害の事実を伏せて五つ星ホテルの面接に向かうのだが、、、

 

 

 

 

母と姉のサポートを受け
一流ホテルの面接へと向かう

 

仲間の支えもあり
何とか仕事をこなす日々

 

視覚障害のハンデを隠すため
厳しい訓練にも食らいつく

 

 

 

 

 

負けない心

視力のほとんどを失った主人公・サリーの視点が映画の随所に盛り込まれる演出があります。

これがほとんど何も見えないんですな、せいぜい物の輪郭を捉えられるくらい。

思わず観ているこっち側も目を細めてしまうような、視覚障害の方のつらさが端的に良く分かります。

 

「諦めなければ、夢は実現できる」なんてチープな言葉はどこの世の中にもあるものですが、演出された彼の視点を一目でも見れば、容易に諦めがつくものです。

これはね、本当にどう考えても無理、だって見えないんだもの。

仕事どころか道や階段を歩くのも一苦労ですし、ホテルマンとして働く上での繊細な仕事なんかどう考えたって無理ですよ。

実際に映画を観た上でも未だに信じられないくらい。

 

モデルとなったサリヤ・カハヴァッテ氏の、異常な執念と努力と根性と気合は本当に人間離れしているのでしょう。

何事にもめげず、苦しくても我慢に我慢を重ね、光明を見出していく姿には感嘆とするばかりでございます。

 

 

物語としては視覚障害の主人公を中心に、彼を支える仲間の存在や、恋人とのやり取りが描かれます。

一流ホテルの研修生として働くサリヤですが、一人では仕事がおぼつきません。

おぼつかないどころか、体をアチコチにぶつけては痣だらけになり、鏡の汚れにすら気が付けないほどに困難です。

 

いつか大失敗をやらかすんじゃないか。

いつか上司にバレてクビになるんじゃないか。

妙な緊張感がついてまわり、もう見ているこっちも思わず緊張してしまい、下手なホラーよりもよっぽどハラハラドキドキしますよね(笑)

 

 

そんな彼の秘密に気づいた同僚や上司たちがまた親切でして、障害者でも仕事ができるようにとノウハウを考える姿はなかなかに感動もの。

彼を支える周りの人間たちも主人公と言って良いくらいです。

 

いまいちやる気が無く、でも要領が良く女にだらしない同僚のマックスがとにかく超いいヤツ。

ちょっとした縁から仲良くなった2人ですが、視覚障害の挑戦に呆れつつも甲斐甲斐しく面倒を見て、最終的には「俺がいなきゃダメ」とまで言われるほどの仲に。

時には暖かく励まし、時には冷静に諭し、何一つ惜しむことなく協力する姿勢は本当に素晴らしいもの。

彼のサポート無しにはどう見ても無理な挑戦だっただけに、彼の存在には感動の一言です。

 

それに加え、救急隊を目指しながら働くアフガニスタン難民や、厨房を仕切るシェフや、パワハラ上等のレストランの鬼教官もまた素敵。

一流ホテルであるだけに基本的には厳しく研修は行われますが、(目が見えず)仕事が遅いサリヤを手伝ってあげたり、事情を知ってケガをしないように指導したり。

とことん厳しく追い詰めつつも、いざ試験が始まれば勤勉なサリヤを応援し、最終的には才能があると認めたり。

もうサリヤに関わる誰もが非常に良い人ばかりでして、この類稀なる運があってこその奇跡だとも思います。

 

 

総じて事実に基づいた話とはいえ、やや物語が綺麗過ぎるような気がしないでもないですが、そこを気にするのは野暮というものでしょう。

障害に負けず、障害者に優しくない現実に負けず、自分の夢や希望を貫き通したサリヤ氏の姿勢には学ぶことも多いと思います。

 

あとは劇中で演出されるホテルやレストランなどなど、どこも非常にセンス良く洒落ているお店ばかり。

一度は訪れてみたいような、素晴らしいお店の数々が印象的でした。

 

 




 

まとめ

映画の構成としてはスタンダードなもので、挑戦に始まり、挫折に続き、ハッピーエンドに終わるものです。

それでも魅力的に思うのは、現実に極めて難しい夢に挑戦した人の存在と、彼を支えた素晴らしい人々のおかげでしょう。

 

夢を諦めない心を持つことの大切さ。

そんなとうの昔に置いて来た、青臭い気持ちを思い出させる良作ですな。

オススメです。

 

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



ブログランキング参加してみました。
良ければポチっと押しちゃってください。