陰陽師


2001年/日本
上映時間:116分
監督:滝田洋二郎
キャスト:野村萬斎/伊藤英明/真田広之/小泉今日子/今井絵理子/夏川結衣/宝生舞/萩原聖人/他

 




 

夢枕獏の小説を映画化した和製ファンタジー・サスペンス。

野村萬斎が演じる稀代の陰陽師・安倍晴明と、真田広之が演じる謎の呪術師・芦屋道満との戦いを描いたミステリアスなロマンのある物語ですな。

 

分かりやすい善と悪の対比。

陰陽術という知っているようで知らない世界観。

野村萬斎のハマり役過ぎる安倍晴明のキャラクター性と。

これがなかなかどうして、ショボい演出ながら面白いんですよね。

 

 

 

 

さっくりあらすじ

平安時代、宮廷の陰陽師の頭である道尊は観測した星を占い「都の守り人が現れる」と帝に告げる。

左大臣はそれを聞いて帝と自身の娘の間に生まれる子であろうと喜ぶが、自身の子が帝になる可能性が薄れた右大臣は憤っていた。

近衛兵の源博雅は優れた力を持ちながらも怠惰に過ごす陰陽師・安倍晴明に出会い、交流を重ね無二の友情を育んでいく。

そんな折、ようやく生まれた左大臣の息子に異変が発生。

博雅に要請を受けた晴明は赤子に呪いがかけられていることを見抜くのだが、、、

 

 

 

 

源博雅と安倍晴明の邂逅
後に無二の親友となる

 

 

 

 

素材はよろしい

元ネタが夢枕獏の小説だけに、脚本的には可もなく不可も無く、それなりの魅力があります。

何せ陰陽師ですからね、陰陽道ですからね、知っているようでよく知らない不可思議な魔法使いとしての魅力は否定できるものではないでしょう。

ましてや陰陽師・安倍晴明vs謎の呪術師・芦屋道満(道摩法師)というロマン溢れる題材だけに、にわかに胸が躍るテーマなのは間違いありません。

 

そして安倍晴明を演じる野村萬斎と、芦屋道満を演じる真田広之と、どちらも譲らぬ素晴らしい演技を見せてくれます。

名声を欲しいままにする傲慢な天才陰陽師・安倍晴明はイメージ的にそのままという感じで、能楽師としての所作が身についている萬斎氏だけに、これは他の追随を許さない堂々たる存在感ですよ。

カメラを通した演技としてはやや微妙な雰囲気も見受けられますが、どう見ても彼以上の適任はいないでしょう。

 

対して呪術師・芦屋道満を演じる真田広之も流石の安定感。

嫉妬深く執念深い法師として、思慮深いながらも狂気が漂う演技力は実に素晴らしいですね。

物語のラスボスとしての存在感は文句無しですよ。

 

 

で、マイナス面としては、野村萬斎と真田広之の2人が飛び抜けすぎて悪目立ちしているところ。

そもそも映画の演出の時点で色々と引っ掛かりますが、2人以外のキャスティングが明らかに実力不足であり、本当に演技指導をしたのかと疑いたくなるくらい。

役になりきれる2人と違い、どうも説得力を生み出せない他の演者のせいで全体が安っぽくなっているんですな。

映像表現やCGが劣るのは仕方がないとしても、他の部分で挽回しようとする気概が見えてきません。

 

ついでに言えば都に混沌を持ち込もうとする道満も、興味が無いのに都を守る晴明も、弱っちいのに都の守護者となった博雅も、どれも説明が足りず空っぽな印象。

物語の描き方に中身が無く、怒りや悲しみといった感情が響いてこず、どうにも夢中になるだけの魅力が足りていません。

悪く言えば野村萬斎と真田広之におんぶに抱っこという感じで、映画に対する丁寧さに大きく欠け、面白い映画を作ろうとする情熱が見えてこないわけで。

素材が興味深いだけに、コレは本当に残念。

 

とはいえ、それでもそこそこなエンターテイメント性はありますし、退屈な作品とは言いきれない魅力があるのもまた事実。

陰陽師というコンテンツによるものか、はたまた原作小説の面白さか、もしくは2人の俳優の頑張りによるものか。

いずれにせよ、古代の日本の様式美をモチーフに描かれる日本式ファンタジーな展開にはロマンを感じるのであります。

 

 




 

 

まとめ

続編も出てますしね、実際にそこそこのヒットはしたのでしょうし、映像的なレベルの低さにさえ目を瞑ればそれなりに観れる映画だと思います。

ちょっと厳しめな判定になりましたが、数少ない和風ファンタジー・アクションだと思えば及第点でしょう。

というか、できることならリメイクして欲しいくらいですし、何だったら野村萬斎の息子さんとか良いんじゃないすかね。

 

言ってみれば未完の大器、まだまだ伸びしろを感じるだけに勿体ないコンテンツではありますが、まぁ観て損は無いでしょう。

良ければ一度ご鑑賞くださいませ。



ブログランキング参加してみました。
良ければポチっと押しちゃってください。