(原題:Dawn of the Planet of the Apes)
2014年/アメリカ
上映時間:130分
監督:マット・リーヴス
キャスト:アンディ・サーキス/ジェイソン・クラーク/ゲイリー・オールドマン/トビー・ケベル/ケリー・ラッセル/カーク・アセヴェド/他
前作はコチラ。
新たに描かれる「猿の惑星」シリーズ第2弾。
高い知能とアイデンティティを得て、森に住処を見出した猿たちのその後が描かれます。
ウィルスにより滅びかけている人間たちと、人間を尻目に独自の生態系を作り出した猿たちと、交わるべきじゃなかった2つの種族の物語ですな。
色々とツッコミどころはあるものの、それを補って余りあるドラマ性に注目です。
さっくりあらすじ
人間の支配に反旗を翻し、シーザーが猿の群れをミュアウッヅの森へと導いてから10年。
ALZ113による感染症”猿インフルエンザ”は地球上に拡散し、多数の死者を出すパンデミックを引き起こし、互いに殺し合う内に人類の文明は崩壊した。
一方でシーザー達は森の奥深くに集落を築き、互いに協力し合い平和な社会を築いている。
そんなある日、集落の近くに武装した人間が現れ、1匹の猿が撃たれてしまうのだが、、、
群れを導くシーザー
強く、賢く、猿のカリスマとなる
そんな猿の集落に迷い込んだ人間
群れに不穏な空気が立ち込める
人から憎しみだけを受け継いだコバ
人間を排除すべきと掲げるが、、
微妙な猿ドラマ
前作もチラホラとツッコミどころはあったんですけどね、本作も同じく小さなツッコミどころの宝庫となっております。
トータルで観れば作品が破綻するほでではないにしろ、少しずつ積み重なっていく違和感により素直に楽しめないのもまた事実。
深いドラマ性が背景にあるだけに、何とも勿体ない感じが否めません。
まず人間がアホ過ぎるんですよね。
恐怖に駆られてかもしれませんが、先に危害を加えるのは人間サイドなのもお約束でしょうか。
そのくせダムを直したいから手を貸してくれとか、どのツラ下げて言ってんだと。
先に攻撃しといて「丸腰で行けば話を聞いてくれる」ってのも何だかズルい理論だしね、殺されかけたサイドからすればそんな都合の良い話は無いでしょうに。
少なくとも、猿を撃った張本人(反省の色無し)は差し出すくらいの筋を通さないと、交渉も何も無いだろうと違和感が拭えません。
その上で「武器は禁止」と約束したにも関わらず、銃器を持ち込んだのがバレたからさぁ大変。
1から10まで人間側に非があるだけに観ていて空しくなりますし、互いに脅威になるという思い込みから争いに発展するにしても、ちょっと短絡的かなぁと。
ただし、人に愛された経験のあるシーザーと、人を憎むことしか知らないコバとの軋轢は中々に深いドラマ性がありますが。
結局は人間も猿も、意見の対立から内部分裂に発展し、不可避の争いを招く種となってしまいます。
お互いに見下しているというか、人は猿を、猿は人を下に見ているフシがあるのがポイントですな。
それ故に生まれるエゴや不毛な戦いは、そのまま現実に起きている人類間の戦いに当てはまりますし、結局は人を殺す道具である”銃”の存在こそが争いを生むのだと暗に語られているようにも思います。
唯一本当に納得いかなかったのが、シーザーを裏切り人類に牙を剥いたコバの主張。
繰り返し実験台にされ、積もりに積もった恨みを晴らしたい気持ちは十分に理解できますし、個人的には肯定してあげたい気持ちで一杯ですが、その方法がね。
個人の強さこそを糧に、要は腕力で仲間をねじ伏せる選択をするんですが、そのルールだと最強はゴリラじゃないんかと。
憎しみに捉われたコバが主張する「強き者がリーダーとなる」のであれば、彼では役不足なんですよね。
ついでに言えば、賢くなるにつれ生物には様々な感情が芽生えますし、それは”恐怖”もまた然り。
ノリと勢いだけで人間の基地に特攻をかけるとか狂気の沙汰ですし、色々な面で猿サイドに補正がかかっているのもすんなりとは受け入れられません。
後はね、そもそも戦争の切っ掛けとなるのはいつだって「資源」と「人員」と「土地」ですからね。
人類サイドからすれば電気さえ通えば良いわけで、決して好戦的ではない猿を相手に武装するのは愚策と言うより他ありません。
まして猿からすれば、ある程度の距離がある人間たちの動向を見極めようとせず「銃を持っているから先制攻撃」では実るものもないでしょう。
つまりは戦争をする意味が無いんですよ、誰も得をせず、ただ血が流れるばかり。
強く言っておきたいのは、戦争は経済的側面を持ち、いついかなる環境でも絶対に誰かが得をします。
というか、得をしなかったら戦争をしないと言った方が正しいかもしれません。
その大前提が欠けているだけに、どうも深い魅力を感じ得ることができなかったのが残念でなりません。
最後の最後、シーザーと絆を育めた人間がいたことだけが唯一の救いと言っても良いでしょう。
不満点を全て帳消しとは言いませんが、グッと感動する良いシーンだったと思います。
まとめ
色々と消化し難い不満点はあれど、トータルで観ればやはり面白い作品だとは思います。
相変わらず猿を演じる俳優の努力には頭が下がりますし、主人公・シーザーの思想や苦悩は良く描けていますし、人と猿の悲哀に満ちたドラマ性は素晴らしいものです。
多くのツッコミどころを見過ごすことはできませんが、観て損は無い作品だと言って良いでしょう。
シリーズの橋渡しとしては及第点です。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。