
(原題:Rent)
2005年/アメリカ
上映時間:135分
監督:クリス・コロンバス
キャスト:アンソニー・ラップ/アダム・パスカル/ジェシー・L・マーティン/ウィルソン・J・ヘレディア/ロザリオ・ドーソン/テイ・ディグス/トレイシー・トムズ/イディナ・メンゼル
1996年に公開されたオフブロードウェイ(規模の小さい劇場で公演される劇のこと)のミュージカルを映画化した作品です。
爆発的な成功を収めた作品として、アメリカでは非常に愛されトニー賞やピューリッツァー賞の受賞など、輝かしい実績を誇ります。
また、レントヘッドと呼ばれる熱狂的なファンが生まれたことでも有名です。
作曲家であり、脚本も手がけた作品の生みの親ジョナサン・ラーソンはプレビュー公演(本番前のリハーサルね)初日に、循環器系の疾患で35歳の若さで亡くなってしまいました。
彼が生前に願った「お金に余裕のない学生、演劇に興味のない人たちが気軽に楽しんでほしい」という願いは受け継がれ、100ドル程度が相場の劇場最前列2列を20ドルに設定し、当日券として売り出すという販売システムを採用しました。
結果、当日券を目当てに徹夜組や宿泊組が現れ、一時期はテントが張ってあったりもしたそうな。
そうして生まれた観客同士の連帯感はインターネットの普及と共に爆発的に広がり、長きに渡り作品を支え続け12年以上ものロングラン公演になったと。
もう、この時点で美しすぎる話だよね(っω・`。)
さっくりあらすじ
1989年、ニューヨークのクリスマスイヴ。
元ロックミュージシャンのロジャーと自称映像作家のマークは二人で暮らす家の家賃を払えず電気を止められていた。
寒いボロビルでの生活を送っているが、2人の元ルームメイトだったベニーは資産家の娘と結婚し、現在はボロビルのオーナーとなり2人に家賃を請求している。
下の階に住んでいるセクシーダンサーのミミは麻薬中毒者。
前にロジャー達と一緒に住んでいた哲学教授の仕事をクビになるも、出会った少年エンジェルと互いにHIVキャリアの告白をして恋に落ちる。
仕事も金も無いロジャー達、マークはそんな自分や友人達をフィルムに収め映画を作ると言い始めるが、、、
歌って踊って、
つらい現実を吹き飛ばす
後世に残る名曲
冒頭、舞台に8人の役者が並び名曲「Seasons of Love」を歌うシーンから映画は始まり、これが最初にして最高のシーン。
こんなに良い詩があるものなのかと鳥肌がたちます。
メインキャストのほとんどがミュージカル初演のメンバーなので歌の上手さや演技力は折り紙つきで、映画というよりも映像でミュージカルを観てると思った方が良いと思います。
物語のテーマは夢・貧困・友情・愛情、そしてつらい現実、といったところでしょうか。
正直、ミュージカル調でありエンターテイメント性もあるのですが、今時の映画になれてる方にはあまり楽しめる作品だとは思いません。
貧富の差があると言われる現代の日本ですが、明日食べるものに困ることはそうそう無いですし、病院に行けなくて死んでしまうことも一部を除き、よくある話ではないでしょう。
土台からしてあまりしっくりこない社会背景があり、「働かざる者食うべからず」が浸透している日本人の感覚では疑問に思うような展開が続きます。
というか、25年以上前に作られたお話なので、あまり感情移入できない部分も多々あるわけで「家賃くらい払えや」と言ってしまえばそれまでのお話なんです。
もっと嫌な言い方をすれば、家賃すら払えない芸術家気取りの人たちがグダグダしているだけとも取れますしね。
なかなか難しいところですが、それを補って余りある感動を呼ぶのがミュージカルの醍醐味であり、映画では誤魔化せない本質なのかもしれません。
ですが、そういったマイナス面を含めて考えても、本物のミュージカルに劣っていたとしても、作られるべくして作られた価値のある映画であるのは間違いありません。
そもそも古典的なミュージカルというものは社会背景や通念が古臭いものであり、現代の価値観で考えると違和感が生まれるのは当たり前なんだけどね。
そういう意味では一般向けな映画とは言えず、芸術家志望とかの一部の人だけに響くニッチな作品とも言えます。
まとめ
色々なものを抱えて生きていく人間が、何を大事にし、何を失い、去って行く人たちに何をして、どうやって前を向いて生きるのか。
「歌うように生きて、踊るように人を愛す」
そんな風に生きようともがく人間の、切なく美しいお話です。
娯楽性の高い作品とは言いませんが、観て損はないと思います。
良ければ一度ご鑑賞くださいませ。