(原題:Rules of Engagement)
2000年/アメリカ
上映時間:128分
監督:ウィリアム・フリードキン
キャスト:サミュエル・L・ジャクソン/トミー・リー・ジョーンズ/ガイ・ピアース/ベン・キングズレー/ブルース・グリーンウッド/他
「史上最悪の人種差別映画」と評されたサスペンス映画。
非常に繊細なテーマや背景を扱っているにも関わらず、アメリカの正義を押し通すような内容であり、いかにアメリカという大国が自分本位であるかの一面を曝け出した問題作でもあります。
戦争映画なのか、はたまた法廷映画なのか微妙にハッキリしない内容ですが、サミュエル・L・ジャクソンとトミー・リー・ジョーンズという稀有な2人の俳優のおかげで、それなりに観れる作品にはなっております。
また”戦争”という極限状態で、司法というものの意味が問われる点は考えさせられるものがあるのかな。
ただ原題である「Rules of Engagement」とは軍隊に於ける「交戦規定」を意味しており、「英雄の意味を定義する」ような視点とはかけ離れていることだけは指摘しておきます。
さっくりあらすじ
イエメンでアメリカ大使館包囲デモが発生し、アメリカ政府の要請で海兵隊が救出作戦に向かうことになった。
海兵隊が到着する頃には一触即発の事態となっており、海兵隊大佐・チルダースは職員の救出後、大使館広場が見渡せる場所へと移動する。
しかし傍にいた海兵隊が射殺され、広場の状況を確認したチルダースはやむなく攻撃命令を下し、一般市民を含む83名の死傷者を出す大惨事となってしまった。
発砲を命令したチルダースは軍法会議にかけられ、惨劇が起きた広場の状況を知る海兵隊は死亡してしまい、証拠となるであろうセキュリティーカメラの映像は何故か”紛失”してしまう。
ベトナム戦争時の戦友であり、チルダースに命を救われた同僚のホッジスが弁護を引き受けることになるのだが、、、
かつてベトナム戦争で戦ったチルダース
裁判となり、戦友・ホッジスの弁護を受ける
アメリカ的勧善懲悪
一応の戦争映画ではあるものの、グロテスクな描写こそあれエンタメ的アクションは皆無であり、いわゆる軍法会議が中心となります。
しかしベトナムにしろイエメンにしろ、敵には敵なりの大義や正義があるような描写は乏しく、戦争における善悪を語る以前にフェアじゃないような印象。
そもそも何でアメリカ大使館が狙われたのかもイマイチよく分かんないし、必要な情報が描かれておらず不信感が募るばかりです。
主人公(アメリカ)サイドが正しいと言わんばかりの偏向的な演出も多く、公平さに欠ける視点は確かに否定的に取られて然るべきものかなと思います。
このモヤモヤする感じ、最後まで観てもあまり心が晴れないのはコレが実話だからですかね。
良くも悪くも紛争地帯から届くニュースを観ているような、「勝てば官軍」ではないけれど、勝者の言い分を聞いていると鵜呑みにはできない違和感があるんですよね。
筆者は親米ではありますが、少数のアメリカ人(厳密に言えば白人)のためにガチで殴り込みに行く姿勢は理解しているつもりです。
特にトランプ政権となった現在ではより顕著かもしれませんし、アメリカの不利益に繋がることであれば全力で殺しに行くのがアメリカの本質でしょう。
それが良いか悪いかは判断できませんが、そのために証拠の”紛失”や”捏造”くらいはやるんだろうなぁと思うと、生々し過ぎて、どうしても映画としての魅力を感じ取れませんでしたね。
圧倒的な武力を他国で行使した挙句、それについて延々と言い訳をする映画だとも言えますし、該当国が自分の国だとしたらどんなツラして観るんすかね?
とまぁ否定的な意見が先行してしまいましたが、いち法廷サスペンスだと思えば盛り上がりには欠けるものの、それなりの面白さはあると思います。
主演の二人はもちろんのこと、個人的にはガイ・ピアーズの演技も非常に印象的でした。
まとめ
かなり偏ってはいるものの、真摯に製作された戦争・裁判映画だということはよく分かります。
そもそも異常な環境である戦争で起きたことを、その後に正常な感覚で裁くことからして難しいのだと思いますが、戦犯というデリケートなテーマを謳うわりにはそれに相応しい脚本だったとは言えないのかな。
ほんの少しの匙加減だと思うんですけどね、一方的な”善”と”悪”に分けたのが良くなかったのでしょう。
あまり気分の良い作品ではないですが、「正当化」という言葉の重みを知るには良い映画と言えるのかもしれません。
オススメはしませんが、よければ一度ご鑑賞くださいませ。