(英題:SUMMER WARS)
2009年/日本
上映時間:115分
監督:細田守
キャスト:神木隆之介/桜庭ななみ/横川貴大/谷村美月/富田純子/斉藤歩/他
「バケモノの子」や「おおかみこどもの雨と雪」で有名なアニメーター・細田守監督の初となる長編アニメ作品。
SNS・アバター・仮想空間など、高度に発達したインターネット技術を背景にしながらも舞台は田舎というユニークな発想が印象的。
そして、大家族のしきたりや愛情を描いた面白い作品です。
広大に広がるネットワークという世界を丁寧に分かりやすく表現してあり、筆者みたいなPC音痴でも頭を悩ますことなく観れる親切な作品でもあります。
何とも平和で日和見な田舎の日常と、複雑な計算が入り乱れる虚構空間の対比。
人と人が直接触れ合うアナログな絆と、虚構を通して触れ合うデジタルな絆の関係性は何か考えさせられるものがある気がします。
さっくりあらすじ
ショッピングやゲーム、果ては納税や行政手続きまでインターネットを通じて利用できる仮想空間・OZ。
パソコン、携帯電話などから自身のアバターを使い利用できるその世界を管理する権限や個人情報などは、セキュリティによって日々守られ、世界一安全と謳われていた。
OZのセキュリティ点検のバイトをしていた健二は、憧れの憧れの先輩である夏希から「一緒に夏希の実家に帰る」というバイトに誘われる。
夏希の曾祖母である栄おばあちゃんの90歳の誕生日を祝うため大勢の親族が実家へと集まり、親族の手前、健二は夏希の婚約者のフリをすることに。
そして深夜、健二の携帯電話に謎の数字の羅列が送られ、数学が得意な健二は何かの問題だと判断し回答を送信してしまうのだが、、、
健二くん、高校2年生
こんなんでも数学の天才
健二の憧れの先輩・夏希
罪な可愛さ
仮想現実空間・OZの世界
”バーチャル”な現実味
色々とツッコミどころが無いわけではないですが、ある程度はノリとテンポで魅せる作品です。
夏希の曾祖母・栄ばあちゃんがそもそも権力持ち過ぎだし、終盤に差し掛かるとこの親族の大半が非常識だし、、個人的にはこの時点で苦笑いでした。。
片田舎のとある行動が発端で、世界の危機に陥るというお話はやや無理がありますし、アカウントを奪った者が仮想世界を牛耳る程度のセキュリティにもやや無理があります。
ついでに”数学に強ければ暗号に強い”ってのも個人的には否定的になってしまいましたが、「ネットを通じた現実世界のリスク」を非常に分かりやすく描いたところは好感が持てます。
つまり細かいことを気にしなければ魅力溢れる良い作品だと思います。
細田守監督の作品では本作しか観ていない筆者ですが、「おおかみこどもの雨と雪」とか「バケモノの子」などを見るに「親子愛、家族愛」を描くのが好きなんすかね?
どれも”家族の愛情やしがらみを通して主人公が成長していく”物語に見えるのですが、良く言えば一貫していると言えるし、悪く言えばシチュエーション以外の代わり映えが無い、とも言えます。
作品としてのテンポが良すぎるが故に、誰が、何を以って、何のために行動を起こすのか?がボケてしまっているようにも感じました。
健二の憧れの先輩・夏希の実家は信州の名家であり、集まる親族もまぁたくさん。
普通に観ているだけだと誰が何だかと困惑してしまいますが、むしろ筆者もこいつ誰よ?みたいな親戚がたくさんいるもので、変なところで共感を持ちました。
こういうさりげない現実味を描くのが上手ですね、よく分からないけどしっくりくる表現を作るのは難しいものです。
終盤の格闘シーンは子供向けなオマケかな、花札のシーンはなかなかシビれますが、世界中の人間がアカウントを預けるのはベタベタな展開ながら感動します。
健二くんの鼻血ブー!な演出も古くさくて好きですね。
まとめ
2回観た方が良い作品かもしれません。
映像の美しさはもとより、登場人物のさりげない仕草や表情など作者のこだわりが垣間見え、観るほどに味の出るスルメ映画かなと感じます。
ネットに詳しくなくても十分楽しめます、PC音痴な筆者でも楽しめたから間違いありません。
青春と家族愛、そして天才が守るもののために粉骨砕身する面白いアニメ作品です。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。