(原題:Taxi Driver)
1976年/アメリカ
上映時間:114分
監督:マーティン・スコセッシ
キャスト:ロバート・デ・ニーロ/シビル・シェパード/ジョディ・フォスター/ハーヴェイ・カルテル/ピーター・ボイル/他
退廃していく街の嫌悪感により、徐々に孤独感や虚無感に苛まれていく様を描くサスペンス・ドラマ。
映画好きを自称する人なら誰でも観たであろう、往年の名作と言われております。
1981年に、本作を観た男性が大統領暗殺事件未遂を起こしたことでも有名でしょうか。
ついでに2007年にも32人もの命を奪った銃乱射事件の犯人が、本作から影響を受けたとも言われています。
正直、本作を観ても犯罪に走ろうとは微塵も思いませんが、何とも悲しい逸話を持つ映画です。
さっくりあらすじ
アメリカ・ニューヨークのタクシー会社に、トラヴィスと名乗る青年が面接にやって来た。
不眠症を患っているトラヴィスは昼夜問わずに働ける運転手を希望しており、早速採用されるも、社交性に欠ける彼に同僚は”守銭奴”と陰口を叩く。
退廃したマンハッタンを運転し、余暇はポルノ映画館に通うトラヴィスは次第に嫌悪感と孤独感に捉われていくが、ある日に政治家の事務所で働くベッツィーと出会う。
彼女に魅かれたトラヴィスはデートに誘い、徐々に2人は懇意になっていくのだが、、、
タクシーの運転手・トラヴィス
ベトナム帰りの元海兵隊員
選挙事務所で働くベッツィーと出会い
彼女をデートに誘う
体を売り生計を立てる少女・アイリス
彼女を見てトラヴィスはある決断をする
かつてのニューヨーク
何と言えば良いんですかね、先日観た「ジョーカー」と同じで、極めて好き嫌いの分かれる作品であろうとは思います。
退廃した世界で狂人と化していく男性の姿に何かを感じ取る人もいれば、支離滅裂で意味不明に感じる人もいるでしょう。
ちなみに筆者はちょうど真ん中くらいの感想で、面白いという人の言い分も分かりますし、つまらないと言う人の気持ちも理解できますが。
後悔されたのが1976年ということで、70年代半ばのニューヨークという舞台は、それだけで絵になります。
無秩序で退廃的で、刹那的な欲望が渦を巻き、それらの抜け殻が掃きだめのように溜まる場所ですな。
物語自体が脚本を担当したポール・シュレイダーの体験に基づいたものだそうで、汚れた街に溶け込むことを拒むような演出には説得力を感じます。
さらに言えば女性に縁が無く、友達もできず、孤独にポルノを鑑賞する”苦しさ”のような概念は生々しく伝わってきますね。
しかし、特筆すべきは当時12歳で売春婦を演じたジョディ・フォスターに他なりません。
まぁ可愛い、超可愛い、マジで可愛い(病気)
幼女趣味野郎には罵詈雑言を並べる筆者でも、ちょっとだけ理解できてしまうくらいの美貌と妖艶さは凄いの一言。
ロバート・デ・ニーロの繊細な演技も印象深いものではありますが、彼女の存在感が全てをかき消してますね。
この堂々たる演技力は流石の一言ですし、後の活躍にも頷けるってもんですよ。
作品の大まかな流れとしては、空虚な日々に光を見出せない男が、狂気的に自己アピールの方法を探し思い悩むような内容。
とはいえ、本作の特徴とも言えますが、彼自身のストレスや不眠症などの原因はハッキリとは描かれません。
戦争帰りのPTSDなのか、世の中に対する不満や虚無感なのか、はたまた意中の女性にフラれたショックなのか。。
恐らくは戦争がもたらした心的外傷後ストレス障害で正解なのだと思われますが、この点においてはやはり社会背景が分からないと理解し難いところなんですな。
人の心に刻まれた消えない傷があり、どうしようもない痛みに耐え続けるという日々は平和な環境で育った僕らに届くものなのかと。
戦争が悪いとか平和が良いとか以前の問題で、そもそもそこにリアリティを感じる土台が無いのですよ。
こればかりは仕方ないことではあるのですが、そこを理解しきらないと、本当の意味で本作を噛みしめたことにはならないんじゃないかなぁ。
ので、筆者的にはいまいちピンとは来なかったのが正直なところです。
華奢な男が体を鍛えなおし、屈強なモヒカン男へと変貌を遂げていく過程の心理が分かるようで分からない、その微妙な匙加減に味わい深さがあるのでしょう。
まとめ
有象無象が立ち並ぶ汚れた街並みの中で、自分自身の存在意義を見失った男の物語です。
面白いかと言われると返事に困る作品ではありますが、内容が濃く雰囲気のある映画だとは言っておきましょう。
いずれにせよ、理由は分かりませんが映画好きなら避けては通れない作品ではありますので、一度は観てみると良いのではないでしょうか。
良ければ一度ご鑑賞くださいませ。